第37話

翌朝、急いで王都へと戻ると王宮区域の城塞から声をかけられた。


「ブループラチナムのゼンか!?」


「はいっ、そうです。ダンジョンの調査から戻りました」


「総長がお待ちだ!騎士舎の執務室へ行ってくれっ」


「了解ですっ」


俺は城塞の上の歩哨に返事をして門を開けて貰い、騎士舎の執務室へと先を急ぐ。後ろから歩哨をしていたもう一人の兵士が追いかけて来た。


「すまない、これだけは伝えたくてっ」


「ん?」


「君達が助けてくれた冒険者だが、俺の弟もいたんだ。生き残る事は難しいと思っていたのに…無事に生きて帰って来てくれてどれだけ嬉しかった事か。本当にありがとう!この恩は絶対に忘れない」


爽やかイケメン兵士はそう言うとぺこりと頭を下げた。

…この人も貴族だよね?


〔平民に頭を下げられるのですから下級貴族では?本来貴族など傲慢で虚栄心の塊でろくなものではありませんが、下級貴族であれば上級貴族に頭を下げるのは慣れているでしょうから、平民であろうと恩人には頭を下げる事に抵抗がないのかもしれません〕


うん、言い方。

まあ、下級だろうがお貴族様が簡単に頭下げるってのは凄いよね。騎士団の人って割とちゃんとした人達なんじゃない?知らんけど。


「冒険者の中に弟さんがいらっしゃったのですね。ご無事で良かったです」


俺はイケメン兵士に頭を上げて貰い、にこりと微笑んだ。

顔を上げたイケメン兵士は食いしばっていた口から嗚咽を漏らしボロボロと涙を零しながら、俺の手を握ってかすれた声で「本当に…ありがとうござい…」と呟くと、ぐいっと腕で涙を拭い歩哨へと戻って行った。

最後まで聞き取れなかったけれど、敬語だったよね…


走り去って行ったイケメン兵士の後ろ姿を少し眺め、助けることが出来て良かったと改めて思う。

別に正義の味方とか興味無いし、強くなれたのは神様のクソ野郎のお陰ってのがちょっと腹立つけど、自分に出来る事をして人助けが出来たのなら、チートな人生も良いのかもしれない。


「ゼン様急ぎましょう」


あ、はい。

感慨に耽っている暇はないよね。

俺はオルトの言葉に踵を返し騎士団の執務室へと急いだ。


「おお、ゼン!戻ったか」


執務室の扉を開けると開口一番フェリックス総長さんが両手を広げて迎えてくれた。


「お待たせしてしまい申し訳ありません。フェリックス総長、騎士団の皆さん以外に冒険者ギルドの方はいらっしゃいますか?」


俺は執務室にフェリックス総長、ホールデン副総長、マーヴィン第一師団長、それと助けたSランクの冒険者以外に数人の男性が居ることを確認し、問いかけた。

満面の笑みだったフェリックス総長さん達が少し不安そうな表情になる。


「俺は王都の冒険者ギルドのギルドマスター、ベルトルドだ。こっちはサブマスターのミハエル、あっちは商業ギルドのギルドマスター、モーガンだ。そっちの3人はお前さんが助けた冒険者だから紹介しなくても知ってるだろ」


ガタイの良い熊のような大男、ベルトルドさんが俺の言葉に返事をくれた。

Sランク冒険者は3人、喋ったのは2人で残りの1人とはほとんど顔もあわせてないけど鑑定では確認済なので問題ない。


「はい、ではこれからの話し合いに必要な方達は全員揃っているので、ダンジョンの調査結果とこれからの調査方針についてご報告します」


俺は王都のダンジョンの調査報告と、そこで見つけた20数個の魔精錬石を見せ、スタンピードの原因とオークのダンジョンの調査結果によっては全てのダンジョンの調査が必要である事を述べた。


「……」


執務室は水を打ったように静まり返っていた。

見たことも無い魔精錬石。

魔精錬石に溜まる魔素の計測実験。

人為的に引き起こされた可能性のあるスタンピード。

どれも荒唐無稽な話で信じろというのも無理はある。

それでも、ダンジョンの調査は必須だと俺は言葉を重ねた。未来に起こるスタンピード連鎖。これは序章でしかないのだと、俺の全身が感じているのだ。


「ゼン…他でもない王都を救ってくれた君の話だ、信じたいとは思う。だが、正直今の話だけでは…」


フェリックス総長が訝し気な顔で俺を見た。


「私はダンジョンから戻ってきた冒険者達からスタンピードが収束したと聞いている。だから君からの報告も同じような内容だと思っていたのだが…」


ホールデン副総長もポリポリと頬を掻いてはマーヴィン第一師団長と顔を見合わせた。


「なんとかスタンピードが終わったようなので、君達には陛下と謁見して貰う予定でいたんだが・・」


フェリックス総長さんも困ったように俺を見た。


「どういう事でしょう」


「すでに陛下にスタンピードで発生した魔物の討伐は完了した、王都のダンジョンの調査は念のために行っているもので、事態はこれで収束している、と報告しているんだよ」


フェリックス総長は苦笑いをしながらそう俺に話した。

いや、軽率過ぎないか?


「それにリオンテールには13程のダンジョンがある。そのうちスタンピードを引き起こしたのがリンデンベルド領のオークのダンジョンと王都アデリオンのダンジョンの2つ。それらが魔精錬石を使った人為的なスタンピードだとして、誰がどのような目的で起こしたのか。一斉スタンピードを蜂起させる為の計測実験が行われた、いやまだ実施継続中かもしれず、今後その結果を元にリオンテールのダンジョン全てでスタンピードが発生するなど荒唐無稽な報告を信じる者は少ないだろう」


「それはそうでしょうね。俺だって自分で話しててどうかと思いますし」


俺は溜息とともにそう吐き出した。


「でもあまり時間はないと思いますよ。誰がどういう意図で、よりも、先ずはスタンピードが起きる可能性を潰すべきでしょう」


「だが、ダンジョンの数は多い。その上アイベルンやナントローモ、ノックスペインのダンジョンはここ王都程では無いにしろ、Bランクの冒険者パーティ以上でも調査となれば難易度は格段に上がってしまう」


「ダンジョンは広いし階層が深くなればその分危険も増すからね」


Sランク冒険者のアルクさんが残念そうな顔でフェリックス総長を後押しする。


「だいたい、調査中にスタンピードが起きたら対処のしようもない。ナントローモのダンジョンはとんでもなく広い上に、全部の階層まで到達出来た冒険者は居ないんだぞ。長期間の調査になる時点で無理だ」


もう一人のSランク冒険者フェイトさんは馬鹿にしたような顔で言葉を続けた。


「そもそもその魔精錬石ってのが本当に魔物を作り出す物かどうかだって怪しいじゃないか。誰もその石から魔物が出てくるとこなんて見てないんだろ、そんなんで誰が信じるってんだよ」


唾でも吐き出す勢いで「ハッ!バカバカしい」と最後まで悪態をつく。


確かに簡単には信じられないだろうけど、他のダンジョンでもスタンピードが起きる可能性は捨てきれないのに…


「では、オークのダンジョンの調査をして来ます。その間にこの魔精錬石を鑑定して貰ってください。その結果を見て対策を考えればいいでしょう。正直これ以上は俺達ブループラチナムの依頼範疇外ですしね」


「私としてはスタンピードが終わった報告とダンジョンに取り残されていた冒険者も無事に戻ってきたことを君の口から伝えてもらいたいだけなんだが…取り敢えず一度陛下に謁見して貰えないだろうか」


フェリックス総長が申し訳なさそうに顔色を伺ってきた。

王族どもに謁見させろとでも言われているんだろうか・・

面倒な。


「わかりました。では、俺は謁見させていただきます。ナジ、レビーとオークのダンジョンの調査をお願い。グレイとエンダンは魔精錬石の探索魔道具を錬成してくれ。錬成に必要な素材は・・わかる?」


「はい、多分大丈夫だと思います」


グレイとエイダンは顔を見合わせコクリと頷いた。


「ジガン達は魔精錬石の探査魔道具が出来たら、ナントローモのダンジョンの調査に向かってくれるか?あとは王都のダンジョンの時と同じように諜報君たちを使って内部の調査もしておいてくれ」


「うむ、承知したぞい」


「オルトはここでグレイ達の錬成を手伝ってくれ。あとギルドマスター達と情報共有をお願い」


「お任せを」


俺はふぅー‥と息を吐きだし、フェリックス総長さんに向き合う。


「オークのダンジョンの調査結果はすぐにわかることでしょう。ダンジョン内部が広すぎるナントローモは念のためこちらで確認しておきます。俺達なら最下層まで行けますしね」


チラッとフェイトさんを見やり、ちょっと嫌味だったかなと思いながらフェリックス総長さんに謁見の日時を確認した。

ギリッと歯ぎしりが聞こえた気がしたけれど、気のせいだろう。うむ。気のせいにしたい・・


「陛下は戻り次第いつでも良いと仰ってくれている。謁見の間にこの魔精錬石の鑑定をしておこう。間に合えば謁見中に結果を報告も出来るだろうしな」


そう言いながらフェリックス総長さんは魔精錬石をマーヴィン第一師団長に渡すと、マーヴィン第一師団長はすぐさま執務室を出て行った。


「では、ゼン、謁見室に向かおうか。皆は謁見が終わるまでここで待っていてくれ」


「はっ!承知いたしました」


ベルトルドさんが頭を下げて承諾した。


俺はフェリックス総長さんに連れられ執務室を後にした。

ナジ達も俺のお願い通りに動き出す。

オークのダンジョンまでなら転移ですぐだし、調査もあっという間に終わるだろう。


「ところでフェリックス総長さん、俺、王様とか偉い人に会うのって初めてなんですが、礼儀というか、マナーというか?何か気を付けることってありますか?粗相しそうでして…」


「ははっ、気にする必要はないよ。陛下は寛大なお方だし、ゼンが貴族ではないことも承知だ。私の後について謁見室に入り、私と同じように片膝ついて頭を下げていればいい。陛下から質問されたら顔を上げて話すだけだ。な?難しいことはないだろう」


そうは言うてもね?

階級社会に慣れてない一般人の俺としては、王様なんていう雲の上の人なんかとまともに話せる自信はないんですよ・・・

俺は、あはははは。と濁すことしか出来なかった。


王宮をしばらく歩くと、謁見室が見えてきた。

豪華な扉がデンッと鎮座している。

フェリックス総長さんは扉を守っている守衛に声をかけ、先触れを出していたお陰かすんなりと扉が開いた。

ギィーっと豪華な両開きの扉がゆっくりと開いていく。

開いた先は扉と同じ広さの絨毯が玉座まで敷かれた広いホールのような部屋だった。玉座は階段状の壇上、ホールより高い位置に置かれている。

これぞTHE玉座って感じだ。

絨毯を踏みしめ、フェリックス総長さんの後をドキドキしながら着いていく。

玉座には王様が座っており、横にお妃様と思われる女性も座っていた。

王様の後ろにはモノクルをかけた如何にも宰相って感じの男性が立っており、厳しい視線を向けていた。

絨毯を挟んで貴族らしい人たちも数名ずつ並んでおり、同じように厳しい視線を向けられる。スタンピードの結果を気にしているのか、平民がお気に召さないのか。どちらにしろあまりいい気はしないな…

フェリックス総長さんの歩みが止まる。

ゆっくりと片膝をついたので、俺も少し後ろで真似をして片膝をついて頭を下げた。


「王国騎士団総長フェリックス、王国の沈まぬ太陽ベルナルド2世陛下に拝謁いたします」


えっ、何その挨拶!

俺もやるの?!

俺はびっくりして思わずフェリックス総長さんを見ようとした。


〔貴族が王族にする挨拶ですのでマスターは大丈夫だと思います〕


そうなの?

焦ったー・・


「うむ、フェリックス総長よく来た。して、その後ろのものが此度の英雄か?」


は?英雄?


「はっ。王都の魔物を討伐し、その足でスタンピードを収束させた冒険者ゼンでございます」


「そうか。ゼンとやら面を上げよ」


「はっ」


俺は緊張しながらゆっくりと顔を上げた。

ベルナルド2世陛下はでっぷりと膨らんだ腹に二重顎、たっぷりと髭を蓄えた柔和なおっさんだった。

お妃様は釣り目ではあるが美魔女と言っていいきれいな女性だ。


「ゼンとやら、先ずは王都の危機を救ってくれたこと、礼を言う。此度のそちの働きは実に見事だったと聞いておる。王都内部に残っていた魔物の討伐、およびスタンピードで発生した魔物の討伐、ダンジョンの調査、Sランク冒険者でも出来なかったことをやってのけたそうだな。聞けば冒険者ランクはAランクだとか。いやはや、驚きの事実であるな」


ふぉっふぉっふぉとベルナルド2世陛下は声高らかに笑い立派な髭を撫でつけた。


「直答を許す。魔物はすべて討伐したそうだが、間違いないな?」


「はい、間違いございません」


「そうかそうか。ではこれでスタンピードは終わり、事態は収束したのであるな」


満足そうに頷く陛下。


「いいえ、まだ完全に終わったとは言えません」


ザワッっと周りにいた貴族がどよめいた。


「なんだと?まだ収束しておらんと申すか」


「はい。王都のダンジョンの調査の結果、スタンピードは故意に起こされた可能性がございます。現在、リンデンベルド領のダンジョンの調査に俺、いえ私の仲間が向かっております。その結果次第ではございますが、まだ油断はされないほうがよろしいかと」


俺の言葉に貴族の皆さんが一気に不満を爆発させた。

次々に貴族から怒声が発せられる。


「どういうことだ!故意にスタンピードを起こすことなど出来るはずがない!」


「何をもってしてそのようなことを!貴様!我らをたばかる気か!」


「所詮冒険者など平民!少し手柄を立てたからといい気になりおって!根拠のない情報を陛下に話すなど許されることではないぞ!」


はぁ・・・

貴族めんどくさ・・・


俺は貴族の怒声は無視し、陛下に向かって王都のダンジョンでの調査結果を報告した。

オークのダンジョンでの調査結果が出るまでは、対策を考えたほうが良いことを話ていると、鑑定を終えたのだろう、マーヴィン第一師団長が謁見室へと入ってきた。


「王国騎士団第一師団長マーヴィン、王国の沈まぬ太陽ベルナルド2世陛下に拝謁いたします」


「うむ、マーヴィン第一師団長何用だ」


「はっ。先程、冒険者ゼンから話があった魔精錬石の鑑定を行いました。その結果をご報告に参りました」


マーヴィン第一師団長は真っ青な顔をしている。

ゆっくり魔精錬石を陛下に見せ、ごくりとつばを飲み込んだ。


「それがゼンが話していた魔精錬石とやらか」


「はい」


「鑑定の結果は?」


陛下がじっとマーヴィン第一師団長の持つ魔精錬石を見つめる。


「冒険者ゼンの話したことは本当のようです。この魔精錬石は、魔素を吸収し魔物を生成する石でした…」


マーヴィン第一師団長の言葉に一気にその場が静まり返った。

誰かのごくりとつばを飲み込む音が響く。


「それは、誠か?」


陛下がマーヴィン第一師団長にもう一度問う。


「はい、間違いございません。王国鑑定士複数人に何度も鑑定させた結果でございます」


「…う…む。そうか」


陛下が魔精錬石と俺の顔を交互に見て口を開いたり閉じたりと言葉を探している。


「魔精錬石が魔物を生成するものだとして、それが王都のダンジョンから見つかったからと、この先一斉スタンピードが起こると決定付けるのは早計ではないでしょうか。そもそも誰が何のためにこのようなことをしたのでしょう」


ずっと静かに今までのやり取りを見ていた宰相と思われる男性が口を開いた。


「そ、そうだ!何をもってこのようなことをしたのか!そもそも魔精錬石を埋めたのだってそこの冒険者かもしれんだろう!」


「そもそもSランク冒険者でさえ対応出来ぬ事態を、たかだかAランク冒険者如きが何故収拾出来たのだ!自らが計画したからではないのか!?」


貴族連中が宰相の言葉にのっかるように俺を犯人とする言葉を投げつけてきた。

その言葉を皮切りに次々と俺を罵る言葉が行き交う。

なんだろうこれ、俺もう応援要請とか断ろうかな。


「静まれ!」


ベルナルド2世陛下の怒声が響き渡った。


「王都を救った英雄に無礼な事を言うでない!」


ベルナルド2世陛下は貴族を睨めつけ罵詈雑言を吐き出していた貴族連中の口を閉じさせる。

さすが一国の王、威厳は半端ない。


「宰相、そちの言い分はもっともだ。一斉スタンピードなど荒唐無稽であるし、目的とて不明だ。じゃが魔物を発生させる魔精錬石が見つかったのも事実。であれば調べねばなるまいよ」


「ですが調査をするにもダンジョンの数が多く、またいくつかのダンジョンはSランク冒険者パーティでも調査が難しいでしょう。王都の被害も甚大で、早急に復興させねば民の生活もままなりません。ここは起きるかどうかも分からぬ事より、王都の整備に尽力なさるべきかと愚考致します」


宰相殿はモノクルをクイッと上げて淡々と述べた。

ほんとに愚考だわ。

王都の整備は確かに必須で早急に対応が必要だけどな、危険が及ぶかもしれん状態を放置するとかどうなのよ。


「陛下、どうやら俺、あっと、、私はこの場に相応しくないようです。一斉スタンピードの懸念は伝えました。そこの宰相殿が仰るように誰が何の為にやったか到底分かりません。この情報を元にどうするかはこの国を治める方々が決めること。であれば、一介の冒険者如きがこれ以上関わる事でもないですし、私はこれで退出させて頂きます」


陛下が罵る貴族を抑えてくれたけれど、宰相殿の意見にはがっかりだし、正直もう貴族連中に関わるのも面倒臭い。

危険は伝えたし、後の判断はお偉いさんに任せ、俺は関わる事を止めることにした。

問題が起きた時に自分らで対処も出来ないくせに偉そうな事を言われるのにはうんざりである。

俺は立ち上がり早々に謁見室を出ようとした。


「ま、待て!」


焦った陛下が俺を止めるも、宰相以下貴族連中を一瞥し、陛下に一度頭を下げると俺は踵を返しその場を辞した。


〔よろしかったので?〕


どうでも良いよ。

スタンピードが発生したらハイデルワイスの店に影響が出ないよう近場の魔物は駆逐するけど、他は傍観だな。


〔被害は甚大になりますが〕


だったとして、俺が対処する必要はないでしょ。


〔討伐の指名依頼が来ると思いますが〕


受けなきゃいいじゃん。


〔随分とご立腹なのですね〕


王侯貴族とやらはこの国を守るのが役目だろ。

本来国に危険が及ぶ情報を手に入れたら、真偽を確かめて対応するもんじゃないの?

それを情報を提供した俺が犯人扱いだ。

そんな考えしか出来ないからいざって時に何も出来ないんだよ。王国騎士団の弱さもしょうがないなって思ったわ。

これ以上は知らん。


〔オークのダンジョンの結果次第ではなかったのですか?〕


…ナヴィはどうして欲しいの?


〔誰がどのような意図で魔精錬石をダンジョンに埋めたのか。一斉スタンピードが起こるとして、それで得られる結果は何なのか…その結果はマスターに危険が及ばないのか…それを知りたいと思っています〕


…何処までも俺の為かよ。


〔私はマスターのためだけに存在するのでから〕


はぁ…

参ったな…

ナヴィには勝てないよ。


〔マスター?〕


オークのダンジョンの結果で、今後の動きを考えようか。

どの道ジガン達にはナントローモのダンジョンを調査して貰ってるんだしね。


〔マスターありがとうございます〕


いや、こっちこそだな。

頭に血が上って冷静な判断が出来なかったけど、ナヴィのお陰で大切な仲間に被害が及ぶかもしれないって事を思い出せた。

さすが俺の相棒だ。

ありがとうな。


俺とナヴィは王国云々は無視して今後どうするか会話しながら仲間が待つ騎士団の執務室へと歩いていった。


あ、魔精錬石返してもらうの忘れたな。

悪用されるのもアレだから壊す予定だったのに。

後で返して貰えばいっか。

とりあえずオルト達と合流しよう。

荒んだ心を癒すため仲間の待つ執務室へと俺は足を早めるのだった。

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