第28夜

 「くそ、ホシはどんな野郎なんだ。何1つウラも出てこねえ」

 

 怒りに任せて叩きつけた拳に、会議用のテーブルが音を立てて揺れた。


 「おい川村、机を壊すなよ。苛立つのは皆んな同じなんだ」


 統括の中原警視正が正太郎に注意した。確かに全く進まぬ捜査に全員が苛立つと同時に途方に暮れていた。


 再度の殺人事件発生に、統括を中心に調整担当の9人が会議室に顔を揃えて対策会議をしている最中である。


 「通常のコロシなら、マメにジドリすりゃあマルモクの一人二人は必ず見つかるはずなんだが」


 「桜田班長、この都内全域を俺達6人でいくらアミウチしたって、ホシかヤマにぶち当たる可能性なんかまずゼロじゃないんですかね」


 「確かにそうかもしれないな。しかし風船人形もこれで2体、いや15年前のヤマを入れりゃあ3件目だな。サクラダモンの威信にかけて、まさかこのままオミヤ入りさせる訳にはいかねえんだ」

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