第23夜
人気のない深夜のビル街は昼とは違う顔を持つ。巨大なビルの影は翼を広げた怪鳥の様に、まるでのしかかられるような圧迫感さえある。
硬い路面を叩く自分自身のヒールの靴音が、弓子の不安を煽るようだ。自分の足音がまるで別のものの足音のように後を追ってくる。振り向きたいが怖くて振り向けない。
駅前広場にたどり着くまでの5分が、やたら長く感じる。特に最後の壁のようなビルの背面は、明るい月明かりさえ遮り、何かが潜むための闇をつくっている。
もう駅は直前、あとはこの突き当りのビルの背面に沿って右折すればすぐである。正面に立ちはだかるビルの大きな影がつくる闇が弓子を待ち受けている。
闇が蠢く。闇に潜む何かが蠢く。闇に棲む恐怖が蠢く。駅前広場に続くほんの2分程度の闇の恐怖が口を開けているようだ。
何かいる。多分いる。不安が恐怖が心臓を鷲掴みにする。背中が寒い。体中の鳥肌がぞわっと粟立つ・・・・・
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