第24夜

 通り抜けなければ駅には着かない。ほんの2分弱の闇の中を通り抜けなければ帰れない。ほんの僅かの距離、ほんの僅かな時間なのに。


 もともと弓子はホラーや都市伝説などが好きであった。映画やアニメ、本なども恐怖ものを好んで読んでいた。


 『そんな存在など、いるはずがない』が弓子の持論であった。テレビなどでの恐怖番組があると、翌日の昼休みには職場で話に花が咲くが、弓子は笑って話には入らなかった。


 普段帰りが深夜になることがあっても、痴漢や強盗などの犯罪者には不安を感じるが、人外の恐怖など感じたことがなかった。


 でも今は怖いのだ。目の前の闇が怖いのだ。自分を飲み込んでしまいそうな闇が怖いのだ。


 目の前の闇を前にして、弓子の足は止まっていた。たかが100m程の距離であるが、闇が妖しく蠢きなぜか先が見えない。


 闇の中で何かが動いた。闇の中で何かの気配が動いた。闇の中で何かの存在が動いた・・・・・

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