第53夜

 京子は午後、定期通院で外出している。健康診断で血圧がやや高めであったため、簡単な診断と降圧剤の処方を月に1回受けていた。


 14時頃から降り出した小雨のせいだろうか。午前中は賑わっていた喫茶店も午後には客足が鈍っていた。浅子と夢人は、カウンター内で時間を持て余していた。


 ゆっくりと進む壁の時計も16時を刻んでいた。久し振りに開いたドアに夢人の声が響いた。


 「いらっしゃいませ」


 開いたドアから京子のやさしい笑顔がのぞいた。


 「ただいま、ごめんなさいね、お客さまじゃなくて」


 「お帰りなさい。以外と時間がかかったのね。特に何もなかったんでしょう?」


 「ふふふ、何もある訳ないじゃない。いつも通り、ただお薬をもらいに行くだけなんだから。お留守番させちゃってごめんなさいね」


 「バアちゃん、今日はお客はほとんど午前中だけ。午後は雨のせいか、ご覧のとおり閑古鳥でヒマを持て余していたんだ」

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