第26夜
都道から脇道に入ると100m程先に大きな新興住宅街がある。深夜ではあるが、まだ眠りについていない家がいくつかはあるようだ。
暗闇の中にいくつかの明かりが浮かぶ。あそこまでたどり着けば助かる。助けてもらえる。蜘蛛の糸にすがるような気持ちで、一番近い明かりに向かって全力で走った。
心臓が壊れそうだった。最後の力を振り絞って、家の明かりまで半分ほどの距離を走った。突然ゴキッという異音とともにヒールが折れて弓子は路面に放り出された。
必死で起き上がろうとしたが、膝の痛みで立ち上がれない。弓子の背後に迫る闇が、より濃密な何かの形を生み出す。
あと明かりまで50m程の距離だ。脇道の横に立つ電柱に縋りながら必死に立ち上がった弓子を闇が包み込んだ。
熱い夏の夜の空気が一瞬にして凍る冷気が弓子の体を包む。縋りついた電柱に押しつけられた。闇の中で弓子の声にならない悲鳴のみが虚しく消えた・・・・・
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