第12夜

 あの事件の関係者全てが口を閉ざしたまま既に15年の歳月が流れ、世間では完全に忘れられた今、『風船人形』事件が発生していた。


 「夕子の時と同じじゃない。中身がない死体なんて、同じ犯人なのかしら」


 「母さん、もう止めてよ。姉さんの事故はもう15年も前のこと。今度の『風船人形事件』だって、どんな事件なのか分からないんだから」


 「分かってるわよ。でもやっぱりどうしても気になっちゃうのよ」


 「今回の事件はともかく、姉さんたちの事件は残念だけどもう終わってる事件なのよ」


 悲しい記憶を思い出させたくない浅子の優しさが分かるだけに、京子はこれ以上は話すのは諦めて口を閉じた。


 京子が営む喫茶店は1階が店舗、2階が住居となっており、1階と2階をつなぐ階段が喫茶店の一番奥に設置され、階段部分と店舗部分をドアで仕切っている。


 「俺はそうは思わないな」


 突然店の奥から声がかかった。夢人である。

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