第9夜
壁に掛けた古い振り子時計は21時5分を刻んでいた。喫茶店の閉店時間は20時30分と決めてはいるが、入店中の客が全ていなくなるのは、概ね21時近くになるのが常であった。
今夜も最後の客が店を出たのは20時50分。それから京子と浅子で戸締りをして店内の片付けを始める。
店ではコーヒー等の飲み物の他に、カレーやピラフ、サンドイッチ程度の軽食メニューが数種類で、片付けはさほど手間がかからない。10分程でさっと片付け、京子は浅子と自分用のコーヒーを入れ始めた。
「母さんたら、まだあんな馬鹿げた事件の報道をまともに聞いてるの?」
「だってどのテレビ局に回しても、ニュースや報道番組はその話ばっかりなんだもの」
「あの元刑事さん、おかしいんじゃない。100年前のフランスの殺人事件なんか誰も知らないわよ。それにドラキュラなんて・・・・・」
半分笑いながら、浅子はカウンターの椅子に腰を掛けた。
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