第35話 格の違い

ガキン!

ガキン!

ガキン!


「どうした!レジスト。

 君の実力はそんなものなのか?」

「…っ」

アドルフの猛攻に俺は防戦一方だ。

上がっているのは魔力だけだと思っていたが

身体能力の方も桁違いに上がっている。、


「これでどうだ」キュイーン

「なんだ…」

剣をふるいながら、アドルフの周りに

光が収束していく。


「ふん!」

「くっ!」ス

俺は光に気を取られ、

力任せの剣で後ろに後退させられる。


「くらえ!これが僕の魔法だ」

アドルフの体からレーザーが放たれる。


まずい!?


ズドーン



アドルフの放った魔法は凄まじく、

辺りは煙に包まれている。


「赤い悪魔もたいしたことがないな。

 今の僕は最強なんだ。

 この世界を統一するのは救世主である僕だ」

アドルフはレジストを倒したと

確信して興奮し始める。



「ぐあ!?」


そのとき、

一本の線がアドルフの肩を貫く。

完全に虚を疲れたアドルフは叫び声をあげる。



「あつい!!一体何が!?」

傷口から炎が広がっていき全身を包む。

火達磨になるアドルフから

焦げた肉の匂いが広がっていく。


「よそ見するとはいいご身分だな。」

煙のなかから俺は出ていく。

体は先ほどの魔法で傷ついたがなんとかなる。


そう簡単にやられてたまるかよ。

こっちは命がけなんだからな。


「レジスト!?どうして」

俺が生きてると思っていなかったのか 

アドルフは火に包まれながら驚く。


「誰が教えるかよ。」

情報は戦いの基本だ。

易々とネタばらしなどはしない。


まあ、とっさに鉄の壁を作っただけだけどな。

それでも守り切れないなんて

魔力差がよほどあるようだ。


「おのれ」

怒りの声をあげながら

火を消そうとするアドルフ。


「俺が消さない限り、消えないぞ。

 大人しく降伏しやがれ。」

俺は無様に転がるアドルフを見て、

降伏を提案する。


「だれが降伏なんてするか」ピカーン

そう言うとアドルフの周りが光に包まれる。

そのとたん、俺の炎が消えて

のアドルフが出てくる。


「僕に無様か姿をさせて…

 絶対に許さないぞ!!レジスト」

「そう簡単にはいかないか」

光魔法は攻撃、回復どちらもできる便利魔法。

そんなのをバカみたいな魔力を持ったやつが

使ったら無敵になるに決まっている。






………




…………



ザシュ!


ドゴォォオオオオン!!



「弱いな。レジスト」

「ガハッ!!」バタ


数十分後、俺は地面に這いつくばった。

あれから先は一方的だった。

それはそうだろう。


相手の攻撃は防ぎきれない。

しかし、こっちの攻撃は即座に回復される。

どうしようもない。

小細工をしようにも

圧倒的力の前ではなにもできない。


「そのまま貴様にはそのまま無様に死ね。

 それとバニラは返してもらうか。」

バニラのことを口にするアドルフ。


一応、妹のことを忘れてなかったんだな。


「なぁ、アドルフ。

 お前はバニラをどうするつもりだ。」

俺は一途の望みをかけてアドルフに問う。


バニラを大切にする。

そう言ってくれるなら、

俺は悲しいがバニラを返そう。

俺はバニラの幸せであればいいからな


だが…


「軍の強化に使うに決まっているだろう。

 バニラのおかげで世界は平和になるんだ。」

当たり前のことのようにアドルフは言う。


もし…


「ああ、そうか」ザッ

冷めた声と共に俺は立ち上がる。


バニラをまた傷つけるなら

      俺は絶対にこいつを許さない!!


「ふん、立つのか。

 お前じゃ僕には勝てないのに」

「ああ、俺だけじゃ勝てないな。」

「認めたか!レジスト」

悔しいが俺じゃこいつに勝てない。


それは事実だ。



ザシュ!!


「あ、れ…」

アドルフの首が体から落ちる。

まるで人形の首のように取れたのだ。


「お兄様を傷つけるな。この○○が」

アドルフの後ろから

冷たい声で剣を構えたカレンが現れる。


俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど、

可愛い女の子があんまりそんなこと言うな。


「お兄様!!大丈夫ですか?」

「ああ、何とか大丈夫だ。」

一転して心配そうに俺に駆け寄ってくる。


女の子ってこええな


カレンがきたことにより他の二人も

こちらに駆け寄ってくる。


「レジきゅん、派手にやられたね~」

「まあな、この程度ですんでよかった。」

俺のことをからかってくるフレイ。


派手にやられはしたが予定では

フレイたちも怪我をする

可能性もあったと考えると大したことはない。


「お兄様…」

悲しそうに兄の死体を見るバニラ。

俺の味方になると言ったが、

やはり、実の兄の死は辛いのだろう。


「ごめん、バニラ。」

俺はバニラに謝る。

もしかしたら、

殺す必要はなかったかもしれないからだ。


「いいんですよ。

 やらないとお兄さんがやられてました。」

バニラはこちらに気を使って気丈に振る舞う。


強いなぁ。バニラは…


「今、お兄さんの傷を治しますね!」

そう言って

バニラが俺に触れようとしたときー


キラキラ


周りから奇妙な光が集まってくる。


ドクン

何か嫌な予感を感じる。


キラキラ


「なにこれ?」

「嫌な予感がするわ。」

カレンとフレイが口にする。


フレイは俺と同じ意見だ。


キラキラ


そのまま、光はアドルフの死体に集まる。


「まさか!!」

俺は光の正体に気付き叫びだす。



「カレン!アドルフの死体を燃やせ!!」

「お兄様!?了解しました!」

俺は急いでカレンに指示を出す。

これは魔法だ。

早く止めないと!


「ああ…」

もう手遅れだった。

辺りは完全に光に包まれてしまった。


ザッ


誰かの足音がする。


「もう終わりかと思ったよ。」


あいつだ。



あいつが生き返ったんだ。




「束の間の勝利おめでとう。レジスト」



その言葉と共に

アドルフは俺たちの前に姿を表したのだった。

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