第26話 一夜を共にして
「…さん。…さん。」
誰かの声が聞こえる。
とても優しい声で聞いていて心地がいい。
「…」
声が止まってしまったが、
その代わりか腕になにか感触を感じた。
柔らかくて温かい感触を。
その感触はとても気持ちがいい。
もう少しだけ寝よう
そう思い、俺は意識を落とした。
…
…
「んぅー。…えへへ」
目が覚めると隣では涎を垂らしながら
俺の腕に抱きついて寝ているバニラがいた。
?
???
なんで?
昨日、俺はバニラが落ちついて
眠りについた後、
離れたところにあるソファで寝たはず。
頭をフルに回転させ昨日のことを思い出すが
そこまでの記憶しか俺にはない。
「おにぃさ~ん」
「バニラ?」
話しかけられたと思い
バニラを見るがすやすやと眠っている。
どうやら、寝言だったようだ。
「おにぃさん、好き…」
うん、かわいい。
細かいことは気にしちゃいけないな。
俺は完全にバニラに陥落していた。
もう一線を引くとか言っている場合ではない。
バニラの妹力(?)が高いのが悪い。
「バニラ。起きろ」
心苦しいがこのままでは起きれないので
バニラのことを起こす。
「うー…うーん。あっ、お兄さん?」
ぱちりと目を開けて俺の名前を呼ぶバニラ。
「おはよう。バニラ」ナデナデ
「おはようございます。お兄さん」スリスリ
俺が撫でると頭を押し付けてくるバニラ。
まるで猫のようだ。
「バニラ、なんでここで寝てるんだ。」
「あ、朝起きたらお兄さんがいなかったら。
さみしくって…つい///」
照れているのか頬を赤らめている。
うん、それならしょうがないな
「バニラがよく眠れたのなら構わない。」
「ありがとうごさいます…///」
律儀にも感謝を俺に伝えてくる。
気にしなくてもいいのに
「それよりもお兄さん、
昨日よりも優しくないですか?
お兄さんって言っても怒りませんし。」
「気のせいだよ。バニラ」ナデナデ
「まあ、いいですけど///」
そっぽを向いてしまったが手を払わない。
やはり、バニラは甘えん坊だ。
「バニラはかわいいなぁ」ナデナデ
「///」
黙り込んでしまった。
少しやりすぎたかもしれない。
「服はあそこのクローゼットに
入れといたから着替えていいぞ。」
「はい、分かりました。」
服に関しては、
昨日の夜に
あいつも本気で夜這いしに来たわけではない。
と思いたい。
「どれにしましょうか?」
クローゼットを開け、どの服にしようか
と彼女は悩んでいる。
その姿は普通の女の子と大差ない。
「これにします!」
白いドレスを手に取る。
どうやら、それが気に入ったようだ。
「着替えるの手伝おうか?」
「なに言ってるんですか!!
ありえません!!この変態お兄さん///」
顔を真っ赤にして怒りだすバニラ。
「いいから、
お兄さんは外に出ていってください!!」
そう言って、バニラは俺を閉め出す。
俺の部屋なのに…
それよりも
昨日は素直に着替えさせてくれたんだがなぁ
…
…
…
「きゃあああああああああああ////
私…なんてことを///」
昨日あったこと覚えてなかったのね…
この後、半日は口を聞いてくれなかった。
…
…
…
「そろそろ機嫌を直してくれよ。
昨日はあんなに甘えてくれたのに」
「忘れてください!
あんなのいつもの私じゃありません。」
口を開いたと思ったら怒り始める。
妹の反抗期かな?
初めてだわ~お兄ちゃん悲しいわ~
「それにお兄さんは
なんで恥ずかしくないんですか?
それが一番気に入りません!!」
「いや、恥ずかしいもなにも…
だって、妹と風呂入っただけだろ。」
「なんでそんなに軽い感じなんですか!
もっと、照れてくださいよ!」
顔を真っ赤にして怒っている。
なんか、理不尽に怒られている気がする。
「って、妹!?」
今度はなにかに驚いている。
慌ただしい子だ。
「どうした。俺のかわいい妹。」
「え…昨日はダメだって言ったのに…
それに私は…」
昨日俺が言ったこと、自分の今までのこと
のせいで信じられないと言った感じだ。
ギュ
「あ…お兄さん。」
そんなバニラを俺は抱き締める。
「いいんですか?私、汚れてますよ。
あなたの妹にふさわしくないですよ…」
「そんなことはない。
バニラはキレイだし、汚れてなんかない。
それに…」
「それに」
「お兄ちゃんがお前を妹と言っているんだ。
ふさわしいとか
ふさわしくないとかどうでもいい。
バニラは大切な俺の妹だ。」
「お兄さん…私、嬉しいです!!
もっと甘えてもいいですか?
もっと可愛がってくれますか?」
「ああ、お兄ちゃんが全部受け止めてやる。
だって…
俺はバニラのお兄ちゃんだからな!」
カレンのことを忘れたわけではない
だけど、俺はバニラのことを知ってしまった。
知ってしまった彼女のことを
見捨てることはもうできない。
もし、俺が二人のどちらかの命を
選ばないといけないときがくるかもしれない。
その時が来たとき俺は選べるのだろうか?
今の俺には選べない。
苦しんでる女の子を
見捨てることは俺にはできないからな…
今は全力で守ってみせる。
「こうして、レジきゅんは
新しい妹を手に入れたのであった。」
お前いつからいたんだよ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
教えて!フレイ先生(レジスト14歳)
「なあ、フレイ。
ちょっといいか?」
俺は模擬戦後、フレイに声をかけた。
「なに?レジきゅん
溜まっちゃったの?
なら、今夜お姉さんの部屋に来て…」
「いや、そう言うのはいいから。」
俺は馬鹿なことを言うフレイを切り捨てる。
最近、下ネタが多いと思うわ。この
「なんか、レジきゅん最近対応雑じゃない?
昔はあんなに突っ込んでくれたのに///」
「言い方に悪意があるぞ!!この発情豚!」
「…あぁん!?それそれ」ブルブル
相談する相手を変えるか非常に悩むが
現状こいつより頼れるやつがいないのが辛い。
「単刀直入に聞くが
お前は聖剣についてどのくらい知ってる?」
「聖剣?」
前にも調べたが未だに情報は
ほとんど得られていない。
もし、敵国がそれを手に入れたら
戦況が大きく変わる可能性がある。
だから、少しでも情報が欲しい。
「そうね~。
イーナキラー
本当に存在したかも怪しい存在。
記録だと女性しか扱えないが
手にすることができれば
大きな力が手に入るってやつよね。」
「ああ。
そこまでは知っている。」
ここまでは俺が調べた中にも記載があった。
「そう。ならこれは知ってるかしら?
その聖剣には対となる魔剣があるのよ。」
「魔剣?」
なんだそれは?
「たしか、名前は
イーナドロップだったかしらね。
聖剣と同じで女性にしか装備できない剣。
これは手にすると莫大な魔力が
手に入るって話よ。」
「そんなものがあるのか!
だが、どこにもそんな記載はなかったはず
なぜお前が知っているんだ?」
俺も結構調べているが
そんな記載は見たことがない。
なぜ、こいつが知っているんだ?
「私はレジきゅんの師匠になるまでは
色々なところに行っていたからね~
世界は広いってことね。」
フレイはウィンクをしながら言ってくる。
忘れがちだが
「なら、その2つの剣の所在はわかるか?」
もしかしたら、こいつなら
「流石に分からないは
そもそも存在しないのかもしれないし
この世界のどこかにあるのかもしれない。
それともー」
「それとも?」
「もう存在が変化しているのかもしれないわ
剣とは違ったものにとか~」
「槍とか杖にってことか?」
「そういうこと、
不変の存在とは限らないってことね。」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
久々にこいつの賢いところを見たわ。
「それにしても、レジきゅん。
聖剣に興味を持つなんて男の子っぽいわね」
「うるせぇよ。
別にそんなんじゃない。」
「でも、レジきゅんには必要ないでしょ。」
「え?」
俺には必要ない発言に少し驚く。
なんだ。こいつ?
俺は聖剣がなくても強いって言いたいのか。
そう言われるとちょっと嬉しいがーー
「だって、男の子には立派な聖剣が下半ー」
「いい加減にしろ!!!」
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