第25話 常識 非常識

「なに!バニラが捕まっただと」


「は、王子が赤い悪魔にやられた後、

 あなた様のために自らを犠牲に…」

僕が目を覚ますと基地のベットの上だった。

一人の近衛兵が現れると矢継ぎに

気絶している間のことを説明する。


「まずいぞ。

 バニラが捕まったとなると

 軍の戦力が予定よりも下がってしまう。」


「王女様の心配はなさらないのですか?」

近衛兵が余計なことを聞いてくる。

何を言っている?国の危機なんだぞ。


「そんなことよりも今は軍のことだ。

 すぐにバニラを取り返さなくては

 戦力の上がりが悪くなる。」


「しかし、王女様が捕らえられたのは

 あの赤い悪魔のいる基地ですよ!」


「赤い…悪魔」

脳裏に僕がやられる前の光景が浮かぶ。


バニラの力により

最大限の強さまで上げた僕の剣を

軽々と止め、逆に切りつけてくる。

挙げ句の果てには体術で

僕のことを圧倒した血だらけのあいつを…


「おかしい。

 なんで…あんなやつに僕が負けたんだ。」

「王子…」


僕は救世主だ。

この世界を平和にするために戦っている。

なのに


『妹のためだよ』


なんで妹のことしか考えてないやつに

負けなければならないんだ!


認めない認めない

認めないぞ!


僕は世界のために戦っているんだ…


『そんな現実味のないことを

 理想とは呼ばない。

 お前が言っているのはただの妄想だ!!』


ダン!!


腕を思い切り机に叩きつける。

そのせいで机はくだけ散る。


「お、王子。」

「兵の戦力を最大限まで集めろ。

 あの基地を制圧する。」

冷たい声色で指示を飛ばす。

普段の僕では考えられない。


「は、はい。

 ですがあの赤い悪魔に勝つためには戦力が…」


「…」


確かにあいつは強い。

やみくもに人を集めても

範囲魔法があるから意味がない。

しかも、頼みの綱のバニラも

今は囚われの身だ。


どうすればいいんだ。


「あ!」


一つだけ方法があった。

時間はかかるが方法が



「あの基地に攻撃するのは4年後にする。

それまではこちらから攻撃せず、

戦線の現状維持を図れ!

どうせ奴らはこっちから攻撃しなければ

攻めてこない。」


「4年ですか。

 随分長く見積もられるのですね。」


4年か…確かに長すぎる

しかし、あいつに勝つためにはしょうがない。

それに、

バニラの力で強化するためには条件がある。

あいつらに使うことはできない。

それが可能なのは僕だけだ。

なら、相手の急激な戦力アップはないだろう。


「その間に僕はあいつを超えるために

 鍛えることにする。

 指揮に関しては各基地の隊長に任せると

 伝達してくれ。」


「かしこまりました!

 失礼します。」

足早に近衛兵は出ていく。


四年後にまたあいつと戦う。

今度は僕があいつに教えてやる。

圧倒的な力の差を…


そして思い知らせてやる。

世界が危機だというのに

妹だけを守ろうとする傲慢なあいつに

僕の崇高な理想を…



「次は負けない。絶対にバニラを取り返す。」




そう誓いながら僕は拳を握り込んだ。




ーーーーーーーーー


「バニラ。もう少しだからな」

「ぅぅん…おにぃさん?」

俺はバニラを背負いながら

大浴場に向かっている。


先ほどまでは入らなくてもいいと思ったが

バニラは女の子だ。

少しでもキレイにしてあげたい。

だから、無理矢理でも連れていくことにした。


「「お風呂…ジュルリ」」


余計な奴らも付いてきたが…


「ほら、バニラお風呂に着いたぞ。

 フレイたちと入ってきな。」

「んー…おにぃさんもいっしょがいい」


ギュー

しがみついて離れようとしない。


「おい!バニラ。」

ポン

起こそうとしたとき肩を叩かれた。


「レジきゅん、諦めて一緒に入ろう?」

「そうですよ。ご主人様。

 バニラ王女も

 それを望んでらっしゃいます。」

「お前ら、それが狙いで付いてきたのか」

真顔で進めてくるから少し怖い。

少しは自重してほしい。


「おにぃさん…スゥ」

「しょうがないか。」

どうせ、やましいことをするわけではない。   


「まるで本当の妹のように

 懐いていらっしゃいますね。

 どんなプレイをしたんですか?」 


「なにもしてねぇよ!」


「レジきゅんはエロいから。

 視線だけで発情させられるわ。」


「ああ、なるほど」


「できるか!!

 それにお前も納得するんじゃない。」

こいつらがそろうと本当にめんどくせぇ。


とりあえず、

バニラの服を脱がして風呂場まで背負っていく


「レジきゅん…私が言うのもなんだけど

もう少し脱がすときに恥じらいとかないの?」


「ん?何で?」


「君がそれでいいなら私は何も言わないよ。」


相変わらず変なやつだな。


そうしている間に変態どもも服を脱ぎ始める。


「いや、お前ら。

 恥じらいとかないのか?」


「「レジきゅん(ご主人様)がそれを言う?」」


いや、普通に男女が

一緒の風呂に入るのはおかしいからな。



 

もしゃもしゃ


「バニラ、痒いところはないか?」

「…んぅ、キモチイイ…ふぁ」   

俺はバニラの長い髪を丁寧に洗っている。

流石はヒロインとてもキレイな髪をしている。


いつも、侍女にやってもらってるんだろうな


「流すぞ。」

「はぁい。」


バシャ


目に入らないように気を付けて

お湯をかけてゆく。


「よし、次は体だな。

 バニラ、自分でできるか?」

「おにぃさんがやって~」

「バニラはわがままでかわいいな。

 よーし、お兄ちゃんに任せとけ。」

はは、バニラはかわいいな。

妹はこれぐらい甘えてくる方がいいんだよ。


「「いやいやいやダメですよ(だよ)」!!」」


うるさいぞ、外野


「レジきゅん。 

 いくらなんでもやりすぎだよ。

 そう言うのはお姉さんにして」


「お前にするわけないだろ。雌豚」


「ヒィィン!」


シャカシャカ


変態フレイのことを無視して

俺はバニラの体を洗うために石鹸を泡立てる


「本当にやるのですか?」

「当たり前だろ。

 せっかく、キレイな肌なんだから

 汚れたままだとかわいそうだろ。」

「いや、かわいそうだとかではなくて…」


だから、今日はなんなんだよお前ら。


「あ!」


叫ぶ雌犬マーガレットを無視して俺はバニラの体を洗い始める。


ゴシゴシゴシゴシ


ゴシゴシゴシゴシ


「バニラ、痛くないか?」

「うぅん」

どっちなんだ?


石鹸のついたやわらかいタオルで

バニラの背中側を十分磨く。


バシャァァア


バシャァァア


十分に磨けたので泡をお湯で洗い流す。

うん。キレイになったな


「バニラ、次は前を向いてくれ。」

「あい。」ウツラウツラ


バニラのやつ。まだおねむのようだ。

とてもかわいいらしい寝顔をしている。


ゴシゴシゴシゴシ

ゴシゴシゴシゴシ


「…んん」

「バニラ、もう少しだ。がんばれ」

ふらふらしているから少し大変だったが

前側も十分に洗い終わった。


バシャァァァ


バシャァァァ


再度お湯をかけ、

完全に泡を落とし終える。


「バニラ、流し終わったぞ。

 湯船に浸かろうか。」

「はぁい」

うんうん。

美人さんがもっと美人さんになったな。

お兄ちゃんは嬉しいぞ。

 

ちゃぷん


俺たちはそうして二人仲良く湯船につかる。

バニラはプカプカ浮いていて

とてもかわいらしい。


「は?普通に洗っただけ…」

そんな、バニラを見て癒されている俺に

雌犬マーガレットが信じられないものを見るような顔をする。

「だから、何度もいってるだろ。

 ただ、洗うだけって言ってるだろ。

 何がそんなにおかしいんだ?」


「いや、おかしいのはレジきゅんよ!

 なんで女の子の体を洗うっていう

 大事なイベントなのに

 介護作業みたいに淡々とやってるの?

 馬鹿なの? 不能なの?」


「いや、妹の体を洗っただけだろ。

 イベントもなにもないだろ。

 どさくさに紛れてヤバイこというな。」

どうやら、俺と変態フレイには

大きな認識の違いがあったらしい。


まあ、変態の感性は俺には分からん。


「いえ、おかしいのはご主人様です。

 ここは洗いっこプレイをして

 バニラ王女を気持ちよくするところです。

 寝ぼけている彼女が無防備なのを

 いいことに彼女の柔肌を

 手で撫でまわしながら、耳元で言うのです。

 『寝てるのに感じてるのか?体は正直だな』

 あぁぁぁぁん!!

 自分に置き換えると興奮します…ジュルリ」


うわぁー(白目) 

きっちぃ、妄想だけでそこまで考えるとか

やばいにもほどがあるわ

ただ、妹の体洗うだけで

なんでそんな妄想できるんだ。こいつは?


「自分に置き換えるのいいわね…ハァハァ

 でも、バニラ王女のままでも

 寝とられた感じがしていいわ…ゾクゾク」


 どうやら、

 ここでは俺がマイノリティらしい。


 十分温まったので変態どもを無視して

 風呂から上がり、バニラの体を拭いてから

 変態フレイに持ってきてもらった服を着せる。

 

変態フレイが俺の部屋に

来たのはそれが理由だ。

もう一人の方は知らん。


そして、俺はバニラをおぶり、

自分の部屋まで連れていき、

俺のベッドに寝かせる。


「よく眠っているな…」ナデ

バニラの頭を一撫でして

そのまま俺は離れたところで寝ようとした。



「おにぃさん…うう、いかないで…」



しかし、バニラの寝言で離れられなくなった。

どうやら、うなされているようだ。


「お兄ちゃんがついているからな。バニラ」

「えへへ、おにぃさん。」

近くに腰かけてバニラの手を握ると

幸せそうな顔をするバニラ。



そんな彼女を俺は見守るのであった。







あっ!


「バニラのこと妹扱いしちまった。」


「「今さら!!」」



お前らまだいたのかよ。




―――――――――――――――――――

おまけ


理想



ごくり


俺はバニラのきれいな柔肌を

見て思わず、喉を鳴らした。


ぴとっ


ビクッ


俺が泡の付いた手で背中に触れると

彼女の体が跳ねる。

なれない感覚に体が驚いたのだろう。



にゅるにゅる

にゅるにゅる


そのまま背中に泡を広げていく。

彼女の柔肌が俺の手に吸い付く。


「あうぅ…んんっ」

甘い声が口から漏れ始める。

その声に俺は思わず興奮してしまう。



「はっ…はひっ…ん…ふう」


くちっ


くちっ


そのまま腕を


「はっ…はっ…んんぅ!」



にゅぱぁ


くちっくちっ

くちっくちっ


脇を洗っていく。


彼女は顔を赤くして

体を小刻みに震わしている。

その姿を見ていると

俺に嗜虐心が湧いてくる。


サスサス


「ひぃん」びくぅ

下腹部を優しく触ると

彼女が可愛らしくい嬌声を響かせて

とてもいやらしい。


「はぁ…はぁ…」

触られ続けて声をあげ続け

息の荒い彼女の耳元で

俺はそっと囁いた。



「寝てるのに感じてるのか?体は正直だな」

「んあああああ!!」ビクッ

声だけで達してしまったようだ。

そして、俺は達して痙攣している

彼女の下半身に手を―――――――――






「んほおーーーーーーーーーーーーー!!

 洗いっこ妄想さいっこーーーーーーーー!!

 ドSなレジきゅんもいいし

 レジきゅんを寝取られ気分にもなれる!」



「さすが、フレイさんです。

 これは私も体の疼きが止まりません。

 今からご主人様に鎮めていただかねば」


「いい加減帰れ、雌豚ども」





ーーーーーーーーーーーー


レジストと妹の関係は健全です。多分ですけど






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