第24話 滲み出るもの

「それでは、兄さん。

 一緒にお風呂に行きましょう!!」


「いや、それはないからな!」

思わず、ツッコミをいれる。

その流れ、一時間前に見たぞ!

あと、ちょっと前のシリアスどこ行った?


「愛しのバニラちゃんのために~

 って感じでイケると思ったんですが。」 


「悪いな。

 お前のことは守ると決めたが

 妹として扱うつもりはないからな。」


線引きは俺の中にもつけておきたい。

バニラを守ると決めたが

あくまで保護対象としてだ。

妹としてではない。


「むぅ。一筋縄では行きませんか。

 なら、私のこと可愛がってくれませんか?」


「まあ、それくらいなら…」

彼女の傷は根が深い。

少しでも癒されるのなら

そのくらいのことはしてやりたい。


目の前にいる彼女は目をキラキラさせている。


スッ


俺は彼女の頭に手をー


「ひぃ!」バシ


彼女に手を弾かれた。


「あ、あれ…?

 わ、私…なんで?

 兄さん、違うんです!

 ごめんなさい…ごめんなさい!」

そのまま泣き出してしまう彼女。




思ったよりも彼女の心の傷は深い。

色々思い出して、

男性というものに恐怖したのだろう。


「ごめんなさい…ごめんなさい。」


ギュ


俺は取り乱す彼女のことを

頭から抱きしめる。


「大丈夫だ。バニラ。

 ほら、俺の心臓の音が聞こえるか?」


「お…おにい…さん?

 き、聞こえます。」


「おし。

 なら、次はゆっくり息をしろ。

 ゆっくりでいいからな。」

俺がそう言うとバニラは呼吸を始める。

最初は不安定だったが徐々に安定する。


「よし。いい子だ。

 大丈夫。俺がついているからな」

背中を擦りながら安心させる。


カレンにもよくやったなぁ。

まあ、別れた年にもやったけど。


「私がいい子なんて…

 でも、お兄さんの鼓動を聞いてると

 なんか…気持ちよくなってきます。」


「バニラはいい子だな。

 今は気を抜いていいんだぞ。」ナデナデ

今度は頭を撫でる。

さっきと違い払われたりはしない。


「お、お兄さん…私なんてそんな///

 …ぁ。気持ちいいです。

 撫でられるのなんて初めてです…ハフゥ。」

立たせっぱなしは悪いと思い、

バニラを抱きしめたままベッドに腰かける。


「バニラはお姫様みたいで可愛いな。

 俺に好きなだけ甘えていいぞ。」ナデナデ


 「…///」ギュー

バニラは恥ずかしくて顔を見られたくないのか

俺に密着して抱きつく力を強める。


「照れてるのか?

 そんな姿も可愛いぞ。

 寂しいならお兄ちゃんに

 もっと抱きついていいからな。」


俺はとりあえずバニラを誉めることにした。

今の彼女に足りないのは自己肯定だ。

だから、誉めて誉めて誉めまくる。




スリスリスリスリ


「頭をおしつけて、甘えているのか?

 そんな甘えん坊のバニラには

 ご褒美にナデナデ追加だな。」ナデナデ


「ふわぁ…///」

バニラは甘い声をだし始める。


とても気持ちよさそうで

このまま甘やかすとふやけてしまいそうだ。



スンスン…スンスン…

スーハースーハー

今度は俺の胸に顔を埋めて

臭いを嗅いでいるのか

呼吸音が規則よく聞こえる。


「どうした?汗臭かったか?」ナデナデ

一応、戦場から帰った後、

水を浴び血を落としてた後で

血だらけの服も着替えたのだが臭いのか?


「ふわぁ~///ちがいます。

 おにいちゃんのにおいを

 かぐとおちつくんです。」 


俺の胸に顔を埋めているからよく聞こえないが

臭いわけではないらしいよかった。


「そうか。

 バニラ。今はゆっくり休んでいいからな

 ゆ~っくり。ゆ~っくり」ナデナデ

小さな子を寝かしつけるように

できる限り優しい声で話しかける。


ウトウト


「眠いのか?バニラ。

 お兄ちゃんの胸の中で寝ていいからな。」


「ふぁい…」

 

そのまま、バニラと一緒に横になる。


スゥスゥ

すると、よほど疲れていたのだろう。

すぐに寝息をたてる。

寝ている姿はとても愛らしい。


ここにきて一年以上たつが

やはり、甘やかす相手がおらず、

俺もなかなか寂しかったからといって

つい色々やりすぎたな。



「俺も疲れたし少し寝るか…

 って思ったより体が軽いな」


今日は俺も色々ありすぎて

疲れたはずだけど今は疲れていない。 

むしろ、絶好調まである。


これがバニラの能力か…

触れると強くなるという能力だが

副次効果で相手を癒す効果もある。



俺には関係ないことか。

彼女の能力ために彼女を守るわけではない。

彼女自身を守るために戦うのだから。


「まあ、疲れはないが

 それでも眠いから寝るか~」

風呂に入ってないがまあいいだろ。



そして、俺は意識を


バン


「レジきゅん!お風呂入ろう…ハァハァ」

「ご主人様、お風呂のお時間ですよ…ジュルリ」


うん。これは俺が悪い。

獣のことを忘れていた俺が悪い。


「「あっ」」


2体の獣はベッドの上で

抱き合って眠る俺たちを見つけたようだ。



「「事後?」」


「ちげぇわ!!!」



俺の今日1日はまだ終わらないらしい。



ーーーーーーーーー

おまけ


墜ちていく心(18話でレジストが寝落ちした後)


チュパ…チュパ


ペロペロペロペロ


チロチロ


…ジュルルルルルルルルルルル


不快な音と感触で目が覚める。

最低な寝起きだ。


「…ペロペロあ、起きたんだね。

 おはよう、レジきゅん…ジュルル」

「おふぁようごさぁいます。ご主人様。」



「何…ァァンやってんだ。お前ら…ハァン!」

刺激に身体が反応してしまう。


俺の周りには横から腰に捕まりながら

俺のへそを嘗め回している変態フレイ

と俺の上半身を起こしながら耳元に

しゃぶりついている雌犬マーガレットがいたからだ。


「「ご褒美プレイ」」

無駄に息があってるのが腹立つ。

そして、俺が起きてもやめようとしない。


「や…ヒィンめろ…へそを吸うな…ぁぁ!!」


「ご主人様は、耳の中が弱いのですね。

 女の子みたいな反応で

 私、新たな扉が開きそうです…チュルル」


「やめろ!その先に待つのは破滅だ…ァン//」


「そうよ。メーガンちゃん…ジュルル

 レジきゅんはクソガキで基本的に

 ツンツンしているけど、

 受けに回ると

 これ以上ないくらいにかわいいのよ…チロチロ」


「そんなこと…イヤ…ねぇ!

 へその中を舐めるなぁあああ!」

こいつら、いつからこれをやっていたんだ。

全然身体が我慢できない。

もしかしてすでに俺は…


「一時間ぐらい前からだよ。

 レジきゅんのことでメーガンちゃんと

 盛り上がってね~

 気持ち良さそうに

 眠るレジきゅんがいたからついね。」


「はい。フレイさんと

 大変有意義な時間を過ごしていたら、

 美味しそうな顔で

 寝ているご主人様がいたからつい。」


「ついねじゃねえよ!

 後、俺の…は大丈夫なのか?」


「…ってな~に?レジきゅん~」ニヤニヤ

こいつ俺に言わせようとしてるな。


「ご主人様の童貞は話し合った結果、

 本人の同意無しにはいただかないという

 停戦協定が結ばれたので安心してください」

よかった。俺の初めては大丈夫らしい。

こいつらの話を信じるのならだが


「じゃあ、なんでこんなこと?」

実質、襲われているこの状態はなに?


「さっきの停戦協定だけど、

 レジきゅんから襲ってきたら関係ないのよ」


あ、そういうことか


「ご主人様の理性を奪って

 私たちにその欲望を解き放ってもらうため

 奉仕させていただいております。」


「やめろ。

 今なら戻れる。

 だから、話し合おう。」

前には変態フレイには

後ろには雌犬マーガレット逃げ場などない。




俺は寝落ちるべきではなかったのだ





「「や・だ🖤」」




「う、ううううううわぁぁぁあああ!!!」





こうして、俺は彼女たち墜ちていくのだった






        BADEND 墜ちていく心













簡単に落ちる訳ねぇだろ!!

尻をひっぱたいて逃げたわ!!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る