第14話 約束
「レジスト様///」
アリアが裸で立っている。
正直、状況が分からない。
「アリアどうしたんだ?
服を着るんだ。
そんな格好だと風邪を引くぞ」
とりあえず、服を着るように説得する。
風呂とは別でこういうところで
裸を見ているのは
俺の精神衛生上よろしくない。
「いやです!」
「お、おう。
これが反抗期ってやつか?」
噂の反抗期(?)になっているアリアは
止まらない。
「レジスト様…私を抱いてください」
「え?」
聞き間違えだろうか
今、アリアは抱いてほしいと言わなかったか?
うん
聞き間違いだ聞き間違い
「お,おい。アリアー」
「私がレジスト様のモノであることを
この体に刻んでください!!」
ダッ
俺に勢いよく抱き着いてくるアリア
俺の服がしっとりと濡れる。
泣いているのだろう…
どうやら、アリアは本気のようだ。
妹はおませさんになったらしい。
お兄ちゃんとしてはそういうのは
まだまだ先のことだと思います!!
…
…
現実逃避している場合じゃない…か
アリアは本気なのだ。
いつものお兄ちゃんとしてではなく
今は男として向き合わないと…
誠意には誠意を見せなければ
男として申し訳がたたない
「アリア。どこで知ったか知らないが
こういうことは俺らにはまだ早いぞ。
もう少し大人になって―」
「それでは遅いんです!!」
諭そうとしたのだがアリアの激情に止められる。
遅いってどういうことだ?
「だって…」
「だって!」
アリアは堪えきれないのか震えている。
その姿はすごく痛ましい。
「もうあと何回レジスト様が会えるか
分からないじゃないですか!!!」
アリアは言うとおりだ。
俺は戦争が始まったら戦線に行ってしまうため
アリアに会うことは出来なくなるだろう。
「許嫁を解消なんて絶対に嫌です!
私はレジスト様のことを愛しているんです!
貴方のことを忘れること
なんてできません!!」
アリアは賢い子だ。
どこか察していてのだろう
俺が戦争に出ようとしていることに…
だけど、見ないふりをしてこの日常を維持していた。
本当は辛いのに…
「あなたは私を変えてくれた。
昔の苛められていて弱かった
私を変えてくれたんです!
今、こうして私がここにいるのは
あなたのお陰なんです!」
彼女は一生懸命に思いを伝えてくる。
その姿はいつもの彼女とは違い
とても真剣だ。
「だから…」
彼女は大きく息を吸い込むと
「お願いします。レジスト様…
私にあなたのモノである証をください。
忘れられないようにあなたの愛をください!」
真っ直ぐな思いを俺にぶつけてきた。
…
アリアは俺が彼女のことを変えてくれた
と言ってきた。
俺はそんな大層なことをしていない。
ただ、妹として愛してきただけだ。
震えながら上目遣いづかいでこっちを見てくる彼女を見ていると抱きしめたい気持ちが強くなる。
ギュッ
「レジスト様…?」
彼女はとても儚い。
こうやって抱きしめるだけで壊れそうなほど…
そんな彼女が俺は愛おしい
一生守ってあげたい
一生甘やかしてあげたい
一生そばにいてあげたい
何度も言っているが俺は彼女のことが好きだ。
妹としても一人の女の子としても…
だからこそ…
「ごめん。アリア
俺は君を抱くことはできない。
まだ若い君を抱くわけにはいかない。」
「レジスト…様…っ」
泣きそうだ…ダムが決壊する寸前のようだ。
無理もないこれは明確な拒否だ。
俺のことを愛してくれる彼女を
捨てていくと言っているようなものだ。
「ごめん…なさいっ
私の…ぅぅわがままで…困らせて」
彼女を泣かせてしまった。
どう答えても
泣かせてしまうのだから仕方がない
受け入れわけにはいかなかった。
若い彼女を抱くことはアリアにとって
かなりの負担になる。
仮に子供ができた場合、今度はアリアの命が
危険に晒されてしまうからだ。
かといって、
俺が戦争に行かないわけにはいかなかった。
ここで俺が逃げてしまうと
俺の守りたいものを失ってしまう。
だから、アリアを受け入れることはできない
だけど…
チュッ
「…!?」
俺はアリアの唇に自分の唇を重ねる。
チュパチュパ
そのままお互いの舌を絡み合う。
こうしていると体が一体になるようだ。
プハッ
何分間か舌を絡めると
息継ぎのために一旦キスを止める。
「れじしゅとしゃまぁ?」
酸欠になったのかアリアの目は
トロンとしており目の焦点もあっていない。
確かに
俺はアリアとの身体の関係は受け入れない
だけど、愛さないとは一言も言っていない。
「アリア。愛してる」
「レ、レジスト様」
アリアは全てをぶつけてきてくれた。
だから、今度は俺の番だ。
「アリアのことが好きだ。
愛らしい笑顔を向けてくれる君も
甘えん坊な君も
辛いのに我慢しちゃう健気な君も
俺は全て大好きだ。
だから、俺だけを愛してくれ。」
「嬉しい…////
で、でもレジスト様は…」
照れている姿も愛らしい。
今すぐ撫でてあげたいが今は話さねば
「確かに、俺と君は離れることになる。」
「です…よね」
とたんに悲しそうな顔をする。
そんな顔は見たくない
「それがどうした!
俺はこれから毎日君に愛を告げる!
戦線に行っても毎日手紙を書く!
君が安心して俺のことを待てるように
何度だって君に愛を伝える!!」
アリアが幸せになるなら身を引こうと思った。
彼女の気持ちを知った今は
俺が彼女を放したくない!!
「そ、それって////」
「戻ってきたら、俺と結婚してくれ!
絶対に戻ってくる。
だから、それまで待っててくれ!!」
彼女に俺の全てをぶつけた。
この世界で初めてのプロポーズ
離れたくないけど待っててくれ
なんて、わがままで傲慢なのだろう。
まるで本当のレジストのようだ。
内心で笑ってしまう
だけどなぜか清々しかった。
アリアを見るまだ脳の処理が
追い付かないようだ。
それはそうだろう。
振られたと思ったら
プロポーズされてるだから
「アリア。よく考えて「いえ!よろしくお願いします!!」はや!!」
整理する時間を上げようと思ったが
すぐ返事をされる。
あんまり早いと心配だよお兄ちゃんは
「私、待ってます!!
貴方が戻ってくるまでずっと!!」
「いいのか…
いつになるのか分からないぞ?」
確認のために言う。
これは俺のわがままだ。
アリアから離れるけど別れたくないという。
「心配ですし不安にもなります。」
「じゃあ、なんで?」
不安なのに決めた理由が気になる。
「だって…///
毎日、愛を伝えてくれるですよね…」
顔を赤くしながら
手をもじもじさせて言ってくる。
「ああ、もちろんだ!」
「いなくなるまでの間、
毎日キスをしてください。
抱きしめてください。
そうしてくれたら私は満たされますから…」
「アリアが嫌と言うまでやってやる」
かわいらしいおねだりだ。
むしろ、俺の方からしたいぐらいだ。
「ふふ…
そしたら、私は一生放しませんよ。」
「はは、それはそれでいいな。」
お互いに笑い合う。
「じゃあ、
さっそくお願いしてもいいですか?」
「ああ、いいぞ。」
「抱きしめたまま一緒に寝てくれませんか?」
「任せておけ。」
二人で一緒の布団に入り、抱きしめ合う。
アリアの甘い匂いがして少し落ち着かない。
「キスして貰ってもいいですか…///」
「ああ。
愛してるよ…アリア」
チュッ
照れながら言ってくる彼女に口づけする。
俺は愛しい彼女と眠りにつくのであった。
ーーーーーーーーー
おまけ
いなくなった人
ある日、私の元に訃報が届いた。
私の許嫁である
レジスト・ヴィレッジ様の訃報だ。
それを見て私は
そうなんだとどこか他人事だった。
親が勝手に選んだ相手だし
別に仲良く遊んだわけでもない。
たまにお茶会をするぐらいの仲でしかない。
しかも、五年ほどまともに顔を合わせていない
いいところは一応ある。
彼のおかけで人が来ないことだろう。
それぐらいだ。
後は性格が傲慢ですべての人を
見下している
ろくでもないやつなので察せるだろう。
訃報を一度置いて、自分の机を見る。
箱が置いてあり、
その中には手紙がたくさん入っている。
この五年、誰かさんから届いた手紙だ。
少し、覗いてみようと思い、
何枚か手紙を読んでみる。
そこに書かれていたのは
自分の戦果のことがほとんどで
誰かに宛てた手紙には思えない。
本当に傲慢なんだから…
呆れながら読み進める。
そのまま読んでいると結構時間が経っていて
読む前は昼間だったのに
すっかり日が落ちている。
最後に届いた手紙までようやく読み進めた。
しかし、
何故か最後の手紙を読むことができなかった。
これを読むと
何かが終わってしまうような気がしたから…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます