第30話 謁見

「面をあげよ。

 お主がレジスト・ヴィレッジだな。」

「はっ、お気遣いありがとうございます。

 いかにも私がヴィレッジ家の長男。

 レジスト・ヴィレッジでございます。」

俺は玉座に座る老人に跪いて名前を伝える。


俺は城に来ている。

来た理由は単純。

目の前のじじい。

この国の国王陛下こと

メイダー三世に呼ばれたからだ。


せっかくの妹たちの再会なのに

こんなとこなんかには来たくはなかった。

だから、少し心が荒れている。


「此度のお主の戦果は聞いておる。

 よくぞ、アドルフ王子を撤退させてくれた」

「陛下にお褒めいただき、感激しております」

大分、遅れてはいるが

俺がアドルフを撤退させた

あの戦いを評価しているようだ。


「あの戦いのお陰で向こう側も

 攻撃を仕掛けてこなくなったのだ。

 お主には感謝し足りない。」

「ありがたき幸せ。陛下。

 一つご質問してもよろしいでしょうか?」

「よろしい。」

じじいの発言に少し気になることが

あったので質問することにした。


「ありがとうございます。

 陛下は此度の戦争に対して

 どのようにお思いでしょうか?」

このじじいの返答次第で

俺のこれからが大きく変わるだろう。


「ふむ、なるほどな。

 我としては別にどうとも思っていない。

 あちらが勝手に仕掛けてきているだけだ。」

「では、もし相手国が

 戦争を止めると言ったら

 どのようにいたしますか?」

じじいは戦争に乗り気ではないようだ。

しかし、一度振り上げた拳を下げるか別だ。


「あぁ、こちらは引くつもりだ。

 無駄に民を傷つけたくはないからな。

 後、そろそろ素で話していいぞ。

 お主にその喋り方は合っていないぞ。

 傲慢なレジスト。」


「ありがとうございます。

 陛下は寛容なんだな。正直、意外だった。」


「そうでもないと王などやっておれん。」


失礼だと思うが相手のリクエストなので

お言葉に甘える。

それに俺の噂も知ってるみたいだしな。


「それとお主はどうなんだ?

 この戦争をどう思う?」

「今すぐにでも終わればいいと思う。

 妹たちを傷つけたくないからな。」

「はは、妹のためとは…

 噂と違って優しいのだな。」

 噂に関しては全て事実無根だし。

 別に俺自身も冷たい性格

 という訳でもないからな。


「だが、すまない。

 此度の戦争は帝国から仕掛けてきた。

 だから、あちらが止めない限りは

 止めることはできないのだ。」


うーん。

ここで終わらせることができれば

楽だったのだがそうはいかないか。



「流石にそこまでは期待してなかった。

 むしろ、

 陛下が寛容なのが知れてよかった」

「お主、遠慮がないな。

 そうじゃ、我は寛容なのだ。」

「陛下がおっしゃったので」

「ふふ、お主面白いのぅ。」


じじいに好かれても嬉しくねえ。

だが、このじじいに対して俺は嫌悪感はない。

むしろ、評価できる人間性を持ってると思う。


「それで?

 陛下はなんのために俺を

 ここに呼んだんだ?」


「お主を前衛部隊の隊長に任命するためだ」

なるほどな。


予定どおり運命は動いているようだ。

俺がマーガレットと入れ替わりで

前衛部隊の隊長になるようだ。


「今の隊長であるマーガレットは

 統括隊長になってもらい、

 お主には前衛部隊の指揮を

 とってもらいたい。」


「なるほどな。

 だが、俺に周りを指揮する能力はないぞ。

 周りから恐れられているしな。」

軍に入って三年ほど経ったが未だに

俺は腫れ物扱いだしな。

最初はいけすかないやつだったが

戦線に立った後からは

逆らったらにヤバイやつと思われてる。


「だからこそだ。

 信頼のあるマーガレットは統括。

 腕っぷしの強いお主は力を見せつけるために

 前衛の隊長をやってもらいたい。」

指揮というよりは力を見せつけるために

俺に隊長をやらせたいようだ。

指揮をするのが隊長というイメージもあるが

力が伴わないと見映えは悪い。

適当に言ってる訳でもなさそうで安心する。


「分かった。

 俺が前衛の隊長を引き受けよう。」

「感謝するぞ。レジスト。

 その昇進祝いにお主には領地を与えよう。」

「ああ、そう言うのは

 父であるコールの方に通してくれ。

 俺が帰ってこれるか分からないからな。」

俺が領地を持ってるよりは

身内に管理させたほうが明らかにいいしな。


「わかった。コールに話を通しておこう。

 他に何か聞きたいことはあるか?」

「ない。十分聞きたいことは聞けた。」

「ふ、ならば早く妹のところにでも

 帰ってやるのだな。」

「言われなくてもそうするわ。」


失礼だと思いつつも俺は軽口を叩く。

このじじいが寛容で本当によかったと思う。

普通だったら、死刑になってもおかしくない。


「陛下。此度は謁見

 いただき感謝いたします。」


「よい。また話し相手にきてくれ。

 お主と話すのは楽しかった。」


「大変恐縮です。」スタスタ


冗談じゃない。

何が悲しくてじじいの相手を

しないといけないんだ。

それに次があるかもわからないしな



「レジストか…面白いやつだ」


何かじじいが呟いたかもしれないが

俺は知らないふりをして家に帰った。




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おまけ


家族 (レジスト5歳)


「くそ!やってらんね~」

俺は変態フレイとの修行を終えて

疲れきっていた。

変態フレイの修行という名の

セクハラで。


というわけではなく、

自分に意味のあることなのか?

という疑問を持ってしまったから

精神的に疲れてしまった。


どうせ、俺は死ぬことは決められていて

そのルートを変えることはできない。

一度思ってしまうともう抜け出せない。


「死ぬなら、いっそのこと。」

修行なんていらないんじゃないか?

このまま逃げても

遊んで適当に過ごしても

何も変わらないかもしれない。


「あらあら、レジスト?

 そんなところでどうしたの?」

「母上…カレン」

ネガティブなことを考えていると

お花畑な母親がカレンを抱っこしながら

声をかけてきた。


「いや、なんでもない。」

照れ臭いこともあり、俺は強がる。

それに悩んでいる内用は

人に相談できるようなことでもない。


「あらあら、

 レジストはあんまり甘えて来ないから

 ママは悲しいわ。」

「カレンがいるから大丈夫だろ?」

「そうね。

 でも、ママはね。

 レジストはレジストで甘えてほしいのよ。」


…っ

すごく母親らしいことを言われる。

いや、たしかに彼女は俺の母親だ。

だけど、精神的にはこの人のことを

母親と思うことはできないでいる。


「大丈夫よ。ママはレジストのママよ。」

優しい。俺には優しすぎる。


「あ…ああ、ありがとう。母上」


俺にも彼女たちをちゃんと

家族と思えるときが来るのだろうか?


「あー。あー。」

「ほら、カレンもそうだって言ってるわ。

 おにいさま~って」

「そんなこと流石に考えないよ。」



暖かい。

これが家族か。




この後、二人とめちゃくちゃお茶会をした。







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あとがき


今日は雨が強いので

外出の際はお気をつけてください!

無理は禁物ですよ。


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