第29話 妹と妹

バタン

「おはようございます。お兄様!

 今日は私とお出かけしましょう。」

俺が帰ってきた日、

朝一番に俺を起こしにきたカレン。

これこれ、3年ぶりだが

これがないと朝が始まった気がしない。


「カレン、おはよう。

 いい天気だし、買い物でも行こうか。」

「…すやすや」

俺は久しぶりに寝起きカレンに

感激しながらも挨拶をする。


あれ?何か声が聞こえなかったか。


「お兄様!ありがとうござ…え?」

「どうしたんだ。カレン?」

「…」

嬉しそうな顔をしていたのに

急にカレンの表情がなくなる。


モゾモゾ

「な、なんだ!?」

俺の体の周りを何かが動いている。


「ふぁ~。」

そこにはネグリジェで眠っている

バニラの姿がそこにはあった。


「バニラ!どうしてここに」

「あ!おにいさん、おはようございます。

 いつものチューをしてください!!」チュー

「そんなことしたことないだろ!」ガシ

目を瞑りながら、

こちらに顔を近づけてくるバニラを

必死で抑える。


「おにいさんのケチ!

 じゃあ、ギューしてください。」ギュー

「しょうがないな。バニラは」ギュー

キスをすることは諦めたようで

抱き締めることに切り替えたようだ。

俺は彼女を受け入れ抱き締め返す。


「私…のに」

「どうした?カレン体調でも悪いのか?」

何かをボソボソと呟くカレン。


「お兄様の不潔!!!!」バタン



ぷんぷん怒りながら

俺の部屋から出て行ってしまった。


ーーーーーーーーーーーー


「バニラさんには節度を持って貰います。」

「ふぁい?」

朝食後、

中庭で今朝の怒りが収まったカレンが

バニラに対して話を切り出す。


「私は節度を持っていますよ。カレンちゃん」

「持ってません!!

 今朝だって、あんなうらや…

 いえ、破廉恥なことをお兄様として…」

「いや、そんなことはしてないぞ。」

「お兄様は黙っててください!!」

俺を発言を拒否するカレン。

どうやら、俺に発言権はないようだ。


「お兄様もお兄様です!

 アリアちゃんという素晴らしい

 許嫁の方がいますのに他の異性と

 夜を共にしたり抱き合うなんて不純です。」


「う…」


 

「バニラさんは

 お兄さんの妹ではありません。

 ですので、アリアさんに

 申し訳ないとは思わないのですか?」


「そんなっ…!!

 私は…グス

 バニラはお兄さんの妹です…っ」


「泣いてもなにも変わりませんよ

 本当の妹じゃないくせにお兄様を

 誑かすはいい加減にしてください。」

カレンの遠慮のない物言いに

バニラは泣き出してしまう。


たしかに俺とバニラは血の繋がった妹ではない


でも、


「カレン…。それは違うぞ」

「お兄様?」


カレンは俺とアリアのことを応援してる。


だから、俺とアリアの間に入ろうとする

バニラに厳しく当たるのだろう。

情けない兄としては嬉しいことこの上ない。


だけど、間違っていることがある。


「カレン。

 バニラは妹じゃないって言ったけど違うぞ。

 バニラは俺の妹だ。」


「おにいさん…」


バニラは俺の妹。

それだけは真実だ。



「違いません!

 お兄様、何を言っているのですか?」


「たしかに

 俺とバニラは血が繋がっていない。」


「その通りです。

 お兄様と血が繋がっているのは私だけです。

 アリアさんは許嫁ということで

 納得しましたがバニラさんが妹である

 ということは認められません!!」

いやいやと首をふる。


その仕草、昔から変わらないな。


「血が繋がってないけど、

 俺がバニラを本当の妹って思っている。

 だから、バニラは俺の妹なんだ。」


「おにいさん…!!」


「そんなの屁理屈です!」


「それでもいい。

 分かってくれないか?カレン」


「認めません!

 お兄様の妹は私だけです!!

 絶対に認めませんから!!!」ダッ


「カレン!!」

カレンは叫びながら

飛び出していってしまった。

あわてて追いかけようとするが


グイ

「おにいさん…」

「バニラ…」

バニラに引き留められてしまう。


カレンのところに行って欲しくないのだろう…


「バニラ、お前は俺の妹だ。」

「お兄さん!なら、バニラと一緒にー」

「だけど、カレンも俺の妹だ。

 どちらも大切なんだ。

 バニラだけを優先にはできない。」

「おにいさん…」

妹のどちらか選ぶなんて選択肢は俺にはない。


それでも、今はカレンが心配で仕方がない…


「行かせてくれ。バニラ」

「…」

だから…できるのはお願いするだけだ。

バニラが嫌だと言えばどうしようもない。

だけど、俺は優しいバニラを信じる。


「私とカレンちゃんを選べないなんて

 お兄さんは本当にわがままですね。」


「ごめん…。」


やっぱり、駄目か…

バニラに失望されてしまったか…


「でも、私が好きになったのは

 そんなお兄さんだったからです!!

 だから、今回は引かせてもらいます。

 次は絶対に私に構ってくださいね!!」


「バニラ…。ありがとう」ダッ

俺はそう言ってバニラから離れていく。


本当に優しい妹だ。

こんな優柔不断な俺を

好きだと言ってくれるんだ。


 

だけど、カレンも優しい。

最初も言ったが俺とアリアのために

バニラを離す悪役をやってくれたのだ。

優しくない訳がない。


そんな妹たちのために俺は行かなければ…





「おにいさまぁ…」スンスン

思った通り、カレンは俺の部屋にいた。

俺の枕を抱きながらが鼻を啜っている。


「カレン…」

「…」

俺がベッドに腰かけるが

カレンは枕で顔を隠して返事をしない。


「3年前も全く同じことしたな。

 俺もあの時は困ったよ。

 大切な妹に行かないで!

 なんて言われちゃったからな~」


「…」

俺は話しかける。

カレンは反応してくれない。


「あれから、

 3年過ぎてカレンは美人になったな。

 お兄ちゃんびっくりしたよ。

 俺は嬉しかった。

 だけど、同時に悲しかった。」


それでも、

俺は話続けるカレンが反応するまで…


「悲しい?」

ようやく返事をしてくれた。


「これからカレンが成長して

 どんどん離れていくと思ってな。

 お兄ちゃんだって寂しいんだよ。」


「お兄様…」


「カレンは大きくなったから

 もう俺なんていなくても

 いいんじゃないかって思ってた。」


「そんなこと…」


「そうだな。俺の勘違いだった。

 カレンはまだまだ子供だったんだな。」


「…///」


「おいで、カレン」サッ

俺はカレンに体を向けて両腕を広げる。

3年前と俺も変わらない

カレンの全てを受け入れる。


「お兄様っ!」ダキッ

カレンは力一杯俺を抱き締めてくる。

そう、3年経ってもまだ彼女は13歳。

俺やアリアと違ってまだまだ子供だ。

甘えたかったのだろう。

なのに戦線にいるときはバニラを可愛がり。

昨日はアリアと一緒に過ごしていた。


「昨日…うぅ…お兄様に会えて嬉しかった!

 戦いがあったって聞いたときは

 お兄様に何かあったらって…ぅう

 心配で心配で眠れなかった…

 無事に帰ってきてくれて…

 本当によかった!!」


「ああ、俺もカレンに会えてよかった。

 カレンが元気で嬉しかった。」


「でも…お兄様は知らない女の子を

 連れて帰ってきました…

 聞いた話だと

 とても可愛がっているようですね。

 昨夜もお楽しみでしたし、

 私は寂しい思いをしているのに…」


「ごめんな…カレン。」ギュ

悲しそうにしているカレンに俺は抱き締める。

そうするとカレンは

ダムが決壊したように叫び始めた。



「寂しかった!」

「ああ、俺も寂しかった。」


「会いたかった!」

「俺もいつもカレンのことを考えてた。」


「撫でて欲しかった!」

「今から撫でてもいいか?

 俺も我慢の限界だ。」


「抱き締めて欲しかった!」

「ああ、カレンの体は暖かいな。」


「お兄様!お兄様!!

 私のお兄様!!!」ギュー

「ああ、カレンのお兄ちゃんだぞ。

 今日は一杯甘やかしてやるからな。」


寂しかったら一緒にいよう。

撫でて欲しかったら撫でよう。

抱き締めて欲しいなら抱き締めてやる。

だから、いつでも甘えていい。

だって、




俺たちは兄弟なんだからさ…





そうして、

俺たちはしばらくの間、抱き合うのであった。




ーーーーーーーーーーーー


おまけ


本当の気持ち


「お兄様!」ギュー

「甘えん坊は変わらないな。カレン」

帰ってきてから

ツンツンしていたカレンだったが

二人になったらこの通りだ。


「ようやくお兄様に出会えたんですもん。

 素直にならないともったいなくて///」

「かわいいなぁこいつぅ」ナデナデ

照れながらも素直な気持ちを言ってくる。

照れ顔もかわいいなぁ


「はわぁ、久々のお兄様の手だ。」ハワワ

「ん、手をとってどうしたんだ。」

頭を撫でている俺の手を見て、

カレンは感嘆の声をあげた。


俺もカレンを撫でるのは久々だから、

テンションが上がる。


「ん…チュパおにいさまのて…チュパ」

すると、

カレンは俺の手を取りしゃぶり始めた。

しゃぶり方が少しいやらしい。


「赤ちゃんみたいに吸ってどうしたんだ?」

「お兄様がいなくて寂しかったんです…

 だから、甘えたくなって…」

寂しかったのだろう…

ここ数年全く会えていなかったから…

だから、その分の反動がすごい。


「そんな素直な子には

 めちゃくちゃ甘えさせてやるからな!

 覚悟しろよ!カレン。」


「きゃー🖤お兄様!」


久しぶりに 

デレデレな妹が見れて最高でした。





え?続きがないのかって??




俺がいつまでも

妹のかわいいシーンを見せると思うなよ。



この変態どもめ!!

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