第20話 傲慢な兄
ガキン!
ガキン!
「「ハァッ!!」」
俺とアドルフは剣をぶつけ合う。
主人公ということもあり、流石に強い。
だが
ザシュ
俺の方が強い。
アドルフの脇腹を俺の剣が切り裂いた。
「ぐっ…」
「「「「「王子!?」」」」
アドルフが脇腹を抑えて跪くと
周りから同様の声があがる。
それはそうだろう。
自分の国で一番強いやつが膝をついている。
それは国の敗北に繋がる。
動揺してもおかしくない。
「そこまでの力を持ちながら、
なぜ、平和のために使わない!」
脇腹を魔法で治療しながら
俺に説いてくるようだ。
笑わせる。
付き合うつもりはなかったが興味本位で
何を言ってくるのかを聞いてみることにした。
「平和ためとは?」
「民や兵士が傷つかない世界を作ることだ。
だから、こんな争いやめよう!!」
多分、良いことを言っているのだろう。
だけど、俺にはなにも感じない。
ただの演劇にしか思えない。
「お前が言う傷つけない世界とは
お前の国は攻撃していいが
こちらは反撃してはいけないという
お前の国にとって
随分都合のいい世界なのだな。」
「違う!メイダー王国も救ってみせる。」
まじで何を言ってるんだこいつは?
言葉が通じていない。
「いずれ、僕が王国と帝国を統合して
新しい国を…
誰も傷つかず争いのない国をつくる!!」
「「「「「王子!」」」」
王子様の素晴らしい言葉を聞いて
兵士たちは士気をあげているようだ。
反吐が出るほど気持ち悪い光景だ。
「貴様はなんで戦争が起こっているのかを
本当に理解しているのか?」
「勿論だ。
物資の不足やいがみ合いだろ。
だから、国を一つにすれば解決する。」
駄目だ。
これ以上は俺の頭がおかしくなる。
このおぼっちゃまに
そろそろ現実を教えてやろう。
「確かに一理あるかもしれいな。
だが、お前の言う
統合が起きれば何が起こると思う?」
「平和になるに決まっている!」
「違うな。
答えは分裂だ。さらなる分裂が起きる。」
「なんだと!!」
驚いたようにこっちを見てくるアドルフ。
さらに追撃しようか
「当たり前だろ。
他国同士でも分かり合えないのに
同じ国同士で分かり合える訳がないだろ。
いがみ合いが増えて分裂する。」
「…っ。でも!
いつかは分かり合える。」
「何をふざけたことを言っている。
そんな訳がないだろ。」
「何で分かる!!」
何も分かっていないようだ。
こんなので軍の指揮ができたものだ。
「仮にお前が国を統合したとする。
それは王国が帝国に下ったということだ。
王国側の人間は
帝国側の人間をどうすると思う?」
「…」
答えられないのか?
それとも自分の愚かなことに気づいたのか?
アドルフは黙り込む。
なら、俺から正解を言おう。
「答えは虐げる対象にすることだ。
吸収されたことにより格下の存在となった
王国の人間は
一生、帝国の人間に搾取されるのでした。
めでたしめでたしってな。」
「そ、そんなこと僕がさせない!」
アドルフは叫ぶ。
その瞳の闘志は消えていない。
こいつ、ここまで言ってもまだ言うのか…
真性の馬鹿だ。
「そのとき、すべきことは?その方法は?」
「それは…」
「手段も方法も目処も立っていない。
そんな現実味のないことを
理想とは呼ばない。
お前が言っているのはただの妄想だ!!」
「…っ」ギリ
アドルフは認められないのか
悔しそうに歯を食い縛っている。
「傷も癒えただろ。
そろそろ再開しよう。」
こいつの相手はめんどくさい。
とっとと終わらせたい。
「なら、君はなんのために戦っているんだ?
世界の平和のためじゃないのならなぜ!?」
やつは知りたいらしい。
俺がなんのために戦うのかを
自分はこんなに悩んでいるのに
なんでお前は悩まないんだ
とでも言いたいのだろうか?
まあ、俺の解答は5歳のときから決まってる。
「妹のためだよ」
「い、いもうと?」
「ああ、今は家族もだけどな。
可愛い妹をこんな戦争に
巻き込まないように俺は戦っている。」
これだけは変わらない俺の信念だ。
「そ、そんなことのために…」
「そんなことではない。
俺にとって王国なんてどうでもいい。
妹たちが無事ならそれでいい。」
「なんて傲慢なやつなんだ」
俺からしたら全てを救おうとする
お前の方が傲慢に見えるけどな
ジャキ
やつは剣を構える。
「やはり、僕は僕の理想を信じる!
だから、君を倒す!!」
「俺は俺の妹のために戦うだけだ。」
俺も剣を構える。
どうせ、話してもこいつとは分かり合えない。
そうなるとやるしかない。
「…っ!!
君みたいな自分のことしか
考えないやつに僕は負けないんだぁ!!」
ダッ
俺の方に駆けてくる。
頭に血が上っているようだ。
そんなに俺の言うことが気に入らないのか?
ブン
ブン
ブン
冷静でないからか。剣に精度がない。
だから、いくら早くても簡単に躱せる。
ガン
「…ガハッ!?」
大振りのせいでスキだらけの顔面に
パンチを入れる。
歯に当たって手が結構痛い。
「い、いたい」
どうやらモロに入ったので
相手も痛いようだ。
アドルフは顔を抑えて悶えている。
サッ
これは好機と思いそのまま懐に入り、
アドルフ身体を掴む。
グル
「な、なにをーーーうわぁあぁあ!!」
俺はアドルフを空中に持ち上げる。
突然のことに
アドルフは驚いたようで慌ててる。
ドシーーーーーン!!!
「…ぁぁ」
そのまま顔面から地面に叩きつけた。
俺が初めて
数時間気絶した技だ。当分、起きないだろう。
「「「「「王子!!」」」」
アドルフがやられたことにより、
帝国の兵士は動揺し始めた。
「お、王子がやられたぞ」
「助けにいかなければ」
「王子をやったやつに勝てるわけがー」
人間とは薄情なものであんだけ民のためとか
言っていた王子のことを助けるやつはいない。
所詮、人間なんて身内だけが大事なもの。
ジャキ
俺はアドルフを投げるときに
落とした剣を拾い上げアドルフの方に向かう。
「おい、王子が殺されるそ。
お前行けよ。」
「いや、無理だよ。
お前の方が行けよ。」
周りの会話を無視して
俺はアドルフの元に向かう。
ようやく、一つ終わる…
俺が10年以上かけて鍛えてきた理由の一つが
スッ
俺はアドルフの
目の前に立ち剣を上にかざす。
こいつを殺せばカレンの未来が一つなくなる。
そして、俺はアドルフに剣をーーー
「やめてください!!
お兄さまを殺さないで!!!」
振り下ろそうとして止まる。
金髪でウェーブのかかったお姫様。
俺の夢に何度も出てきた少女。
バニラ・レイモンドがそこにいたから
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
プロフィール
バニラ・レイモンド
女 20歳
好きなもの
兄
シュークリーム
花
セイバー王国の王女。
ウェーブのかかった金髪で童話にいる
お姫様のような見た目である。
胸が大きいのが密かなコンプレックス。
主人公の妹であり、奥ゆかしい性格から
国民の人気の高い王女である。
主人公のことは生まれたときから
ずっと一緒であり、
世界で一番大切に思っている。
兄と同じ聖魔法を使うことができるが
回復魔法しか使うことができない。
争いごとは嫌いだが
兄が戦争に参加するということで
自分も助けるために衛生兵として
戦争に参加することを決意する。
○○○○○を強化する能力を持っており、
そのせいでーーーーーーーーー
error
データエラーが確認されました
ーーーーーーーーー
シリアスはまだ続きます。
新作始めました。
「俺と寝る女は彼氏持ち」
NTRを主題としたラブコメとなっております。
本作と同じように
6時更新を予定していますので
ぜひ、一度お試しください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます