第19話 邂逅
私の身体は穢れている
色んな男を受け入れたこの身体
お兄さまは許してくれるだろうか?
おそらく、許してくれるだろう。
だけど、私が許さない。
きっともう元には戻れない。
あの人を愛しているからこそ
元には戻れない。
そんなことになった自分を
私は嫌悪し絶望する。
だけど、こうなったことに後悔はしていない。
私にはこれまでなにもできなかった。
今もこうやって身体を使うことしかできない。
だけどこんな私が
お兄さまの役に立つにはこうするしか…
ーーーーーーーーー
「かかれ!!国のために怯むな!」
「散らばるな!固まって戦え!!」
近くにゴミのように転がる人の死体
開いたままの目がこっちを見ているようで
気持ちが悪い。
「よし、やったぞ!
このま…うぁぁぁぁあああ!?」
「魔法だ!気を付けろ。
遠くから狙っているぞ…グハ!!」
辺りは全てを燃やし尽くすような
火の海が広がっている。
そんな光景を見ていると俺は実感する
今、俺は戦場に立っているのだと
…
…
…
俺が基地に来て一年が過ぎ、
戦争は過激を極め
ついにこの基地にも敵軍が攻めてきた。
この俺も戦場に
駆り出されることになったのだか
初めての戦場ということもあり、
俺には精神的にも肉体的にも
厳しいものだと思っていた。
しかし、そうではなかった。
実際に戦場に立って
人に向けて魔法を放つために手を向ける。
ボシュ
人があっさりと消し炭になる。
俺は躊躇なく魔法を放った。
俺はなにも感じなかった。
人を殺したというのに…
「よくも仲間を」ダッ
一人の兵士が
俺に向かって剣を構えて走ってくる。
先ほど燃やしたやつの仲間だろうか?
ザシュ
ブシャァァァ
俺はその兵士の首を腰の剣で切り飛ばす。
飛び散った血で身体中が
髪の毛と同じ血だらけになる。
血のついた剣を見て
俺はまた人を殺したのだと認識する。
しかし、なにも感じない。
「お、おのれ!!!」
今度は数人で襲ってくる。
俺は剣を構えて迎え撃つ。
グサ
「ぐわぁ」
胸を突き刺しても
ザシュ
「や、やめて」
内臓をぶちまけても
ザシュ
「ぎやぁぁーーーー!!」
腕を切り落としても
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ
また一人また一人と
人を殺しても罪悪感の一つも感じない。
「なんだ…あいつ!
一人ずつでは駄目だ!!
まとめてかかれ!!!」
50人ぐらいの兵士が
纏まってこっちに向かってくる。
今度はまとめてかかってくるらしい。
どこか他人事のように俺は手を構える。
ドオオオオオオオオオオオン!!
地面から大きな火の柱があがる。
人の集団は一瞬で炎に包まれ消し炭になる。
「あ、悪魔だ…」
「すげえ…」
「血に濡れた化物だ!!
あんなの…人間じゃねぇ!!!」
「あれがレジスト・ヴィレッジか!
あいつがいれば勝ったも同然だな!!」
敵味方から俺に対して、
恐怖に戦く声と称賛する声が聞こえてくる。
味方からの称賛の声を聞いていると
自分が素晴らしいことを
しているように感じる。
まるで自分が英雄になったように…
反対に
敵から恐怖の声を聞いていると
自分が悪いことをしているように感じる。
まるで殺人鬼であることを感じさせるように…
一人殺せば殺人鬼、100人殺せば英雄
やってることは同じなのに人により
認識が変わるのは分かる。
今、俺がしているのはどっちなんだろう?
良いことなのか?悪いことなのか?
それすらも分からない…
「や、やめて」
敵軍の女兵士が近くで腰を抜かしている。
俺はそっちの方へ歩きだす。
ザッ
「こ、こないで!」
近くの物を手当たり次第投げてくる。
そんなもの当たらないし
そこにお前がいる限りは止まる気はない
ザッ
「だ、誰か!」
周りの仲間の兵士を呼ぼうとする。
この場にいる敵軍の兵士は
俺を恐れるやつか死んでいるやつだけだ。
ザッ
「ごごごごめんなさい」ジュワァ
彼女は俺が近づくと
失禁して謝りだしてしまった。
恐怖で下半身が緩んだのだろう
自分の下に水溜まりを作っている。
「…ヒィク…ゆるじで…ぅぅぅ」
俺が怖いのだろう。
泣き出してしまった。
なんで彼女は
そんな覚悟で戦場に来たのだろう?
ブン
「ひぃ…っ!!」
そんな覚悟に
俺はイラつきながら剣を振り下ろした。
ガキン
俺の剣が受け止められる。
割り込んできたやつがいるからだ。
「僕がいる限り、
これ以上は好きにはやらせない!!」
金髪で碧眼で
育ちのよさが雰囲気に出ている男。
ついに
ついに出会ってしまった
俺の運命に深く関わる男に
「セイバー王国のみんなは僕が守る!!」
アドルフ・レイモンド
ゲームの主人公が俺の前に立ちはだかった。
…
…
…
剣越しに睨み合う。
よくみると確かに整った顔をしている。
怒ってもイケメンとか…
マジで主人公様々だな
「仲間たちをよくも!
僕は君を絶対に許さないぞ!!」
アドルフは俺に対して怒りを覚えているようで
俺に明確に敵意を向けてくる。
なんだこいつ?
馬鹿にしているのか?
「これは戦争だ。
こっちの兵士もお前たちに殺されてる。
なら、おあいこだろ?」
「それでもだ!
僕は犠牲を出したくない。
誰も傷つけたくないんだ。」
「あ?」
あーイラつく
こいつ、俺の両親より頭お花畑だ。
比べるのもあの二人に失礼なほど
「僕が全てを救ってみせる。
セイバー王国だけではなく
兵士も民も全て!!」
ふざけたことを言いながら
やつの自分の身体が光り辺りを包む。
キラキラ
「この回復魔法は…」
「アドルフ王子がきてくれたぞ!」
「これで勝てる!」
「赤い悪魔も王子なら倒せるはずだ!!」
先ほどまで傷だらけだった
兵士たちの傷が癒えていく。
これがやつの聖魔法か。
100人以上の人間を
一度に治療できるなんてチートだ。
「みんな!僕に続けぇぇ!!」
「「「「おーーーーー!!!」」」」
やつが来ただけで士気も戻ったようだ。
このままだとヤバイかもしれないな
魔法で一気に全滅させようとするが
「君はこの僕、
アドルフ・レイモンド相手をする。
覚悟するんだな!!」
俺に向けて剣を向けてくる。
逃がす気はないのだろう。
ゲームのシナリオ通りなのか?
それとも原作にはないストーリーなのか?
俺には判別することはできない。
「お前に名乗る名前などない。
都合のいい理想など叩き壊してやる。
お前こそ覚悟しろ!!」
だけど、俺は引くわけにはいかない。
ここでこいつと戦うのは俺の自己満足。
気に入らないから戦うだけだ。
それでも、絶対に引かない!!
このクソ野郎に一発入れるまでは…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
プロフィール
主人公
男 20歳
好きなもの
???
???
???
金髪碧眼で魔法も剣も使いこなす
セイバー王国の王子。
双子の妹のバニラがおり、
兄妹以上の愛情を注いでいる。
性格は非常に良く、色々な人物から
好かれるほど人望もあつい。
非常に理想家で王国や貴族だけではなく
国民、土地全てを守ろうとする気概もある。
15歳のときに戦争に参加し、
溢れ出る才能で帝国軍の指揮官になり、
20歳でメイダー王国を半壊まで追い込んだ。
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次回もシリアスパートです。
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