第33話 入隊
「本日より前衛部隊に配属されました。
カレン・ヴィレッジです。
よろしくお願いします!」
俺たちの前でハキハキとした態度で
挨拶をするカレン。
ついに、このときが来た。
カレンが軍人となり、
原作の登場する時が来たのだ。
ただ、少し原作とは違う。
原作では彼女はなぜか後衛部隊配属のはずだ。
今の彼女は彼女の意向により、
俺の率いる前衛部隊に配属となった。
「うわ、めっちゃかわいい!」
「マーガレット隊長とは違うタイプだな」
「めっちゃ健気そう。俺、告白しようかな?」
「おい、レジスト隊長の妹だぞ!
死にたいのか?」
隊員たちが色々なことを話している。
俺のかわいい妹が欲しいやつは
俺に勝てるようになってから来るんだな
くぅーーーーーーー!!
一度は言ってみたいセリフだな。
まあ、俺はカレンが本当に好きになったなら、
反対なんてしない。
俺は幸せそうに花嫁衣裳を着るカレンを
結婚式で泣きながら見送りたいからな。
「カレン・ヴィレッジ」
「はい!おに…隊長何かございますか?」
俺はカレンに対して声をかける。
一応、ここは軍隊だ。私情は禁物。
そこの線引きだけはちゃんとしないとな。
「お前は何のためにここにきた?」
「わたしは…」
彼女に理由を聞く。
こんな危険なところに来た理由を。
「私は大切な人を守るために来ました。」
「上出来だ。」
俺は彼女の言葉を聞いて満足するのだった。
…
……
………
「お兄様、今日から私もここに住みます。」
「いや、カレンには自分の部屋があるだろ。」
その日の夜、
カレンは俺の部屋に突撃してきた。
線引きってなんなんだろうな?
「そうです。カレンちゃんは帰ってください。
この部屋は私とお兄さんの部屋です。」
「いや、今日からバニラもカレンの部屋だ。」
今まではバニラが危険だと思い、
俺と一緒の部屋で生活していた。
「えー!どうしてですか!?」
「いや、当たり前だろ。
年頃の男女が
一緒の部屋にいるものではないぞ。」
しかし、今はカレンがいる。
カレンならどこぞの変態どもと違い、
悪影響にもならないだろう。
「むー」プク
「バニラさん!
そんな顔をして
お兄様を誘惑しないでください。」
「カレンちゃんこそ、
お兄さんの部屋に夜這いしに来た癖に!」
「しにきてません!!」
この二人、前に実家に帰ったとき以来だが
相変わらず仲が悪いな。
「「ムムム」」
お互いににらみ合いを続ける。
俺にとっては
小動物が威嚇してる程度にしか見えない。
絵にして飾りたいぐらいだ。
「二人とも喧嘩は止めるんだ。」
「でも、カレンちゃんが…」
「バニラも年上なんだから、大人げないぞ。」
「うっ…」
俺が説教をするとバニラは言葉に詰まる。
「そうです。
バニラさん、反省してください!」
「カレンも落ち着け。
軍人になったんだろ?
些細なことで癇癪を起こすな。」
「うっ…」
カレンもバニラと同じように言葉に詰まる。
「もう二人は大人なんだ。
だから、小さなことで争うのはやめろ」
「「は~い…」」
全く、俺の部屋に住むという話で喧嘩するなど
おにいちゃんとしては嬉しいが
大人の俺としては
少しお転婆が過ぎると思うところがある。
「そうだ。
いい機会に少し距離を置こう。」
「「え?」」
俺としても寂しくなるが
兄として2人と距離を置いた方がいい。
これからの彼女たちのためだ。
あまり俺に依存しない方がいい。
「おにいさん…」ポロポロ
「ば、バニラ!?」
バニラが泣き出してしまった。
いや、今日の俺は負けないぞ。
これは彼女のためなんだ。
絶対に譲るわけにはー
「バニラの…こと、捨てるんですか?」ポロポロ
「いや、そんなことはないぞ。バニラ
俺はバニラのためを思ってだな…」
「バニラのためなら一緒にいてください!
バニラはお兄さんといるのが幸せです。
だから、そんなこと言わないでください。」
「いや、でもなぁ」
俺の意志が早くも崩れそうだ。
俺のバニラはかわいいなぁ。おい
「お兄様…」
「か、カレン。
カレンもバニラを止めてくれ…」
「せっかく、
お兄様に会うために頑張ったのに…」
「お兄ちゃんも
そんなにカレン思ってもらって嬉しいぞ。
だから、今はバニラをだな~」
カレンは俺のために頑張っていた。
知ってはいたが、改めて言われると嬉しい。
それはそうだろ?
かわいい妹が
俺のために頑張ってくれているんだぞ!!
嬉しくないわけないだろうが!!
「でも、お兄様は
私と一緒にいるのは嫌なんですか?
私のことはどうでもいいんですか?
もう嫌いになったのですか?
やはり、バニラさんの方がいいんですか?」
「そんなことは…」
俺は妹たちを平等に愛している…
その気持ちは一つの嘘もない。
「なら、一緒の部屋でもいいですよね?」
「いや、それは…」
「だ め で す か?」
「あ、はい」
威圧感がすごい。
流石は俺の妹だ。
この俺が怯むほどの目力とかビックリだよ。
「ありがとうございます!お兄様。」
笑顔でお礼を言ってくるカレン。
可愛らしい笑顔ですけど、
彼女、さっきまで俺のこと脅してたんですよ
「おにいさん。
なら、バニラもいいですよね?」
便乗してバニラも乗ってくる。
流石にこれ以上は…
「いや、それは…」
「カレンちゃんはいいのに
バニラはダメなんですか…」ウルウル
上目遣いで訴えてくるバニラ。
うん。駄目だこりゃ
「分かったよ。二人とも。
俺と一緒の部屋で暮らそう。」
「「やったぁー!!」」
仲良く抱き合う二人の妹。
お前ら、実は仲がいいだろ
ーーーーーーーーーーーー
おまけ
密約
「バニラさん。ちょっといいですか?」
「なんでしょうか?カレンちゃん」
「私がお兄様の部屋に住めるように
協力していただくことはできませんか?」
「嫌です。お兄さんと住むのは
わたしだけでいいです。
邪魔をしないでください。」
「このままではバニラさんも
お兄様の部屋に住めなくなりますよ。」
「そ、そんなわけ、
お兄さんは私と住んでるんですよ!」
「そのお兄様はバニラさんを
私の部屋に移すように動いてますよ。」
「え?嘘ですよね。」
「本当です。
お兄様は私たちに兄離れさせるつもりです」
「兄離れ?アニバナレ?あにばなれ?」
「そうです。
私たちから離れようとしてるんです。」
「そんな!お兄さんが私から離れるなんて!
おにいさんはどこにいってしまうんですか?
バ、バニラは捨てられるんですか!!」
「落ち着いてください。バニラさん
だから、協力しませんか?
二人で協力すれば
私たちに弱いお兄様も堕ちるでしょう。」
「…でも、私は二人っきりの方が…」
「いいんですか?
このまま、泣いていても
お兄様は離れるだけですよ。」
「嫌です!おにいさんと一緒にいたいです。」
「なら、分かりますよね?」
「カレンちゃんに協力します!
三人で一緒に住みましょう。」
「ふふ、交渉成立ですね。」
二人の少女は固い握手を交わすのだった。
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