第32話 運命の選択

「いや~ん」ドサ

俺の魔法の前にして倒れるフレイ。

今日は久々の実戦型の訓練だ。

全力で行かせてもらった。

ギャラリーはいない。

俺たちだけだ。

俺たちの魔法はあまり見られたくないからだ。


「レジきゅんにもう勝てないか~

 本当に強くなったね。

 ただ、魔法の縄で縛るのは

 ちょっと特殊プレイすぎない?」

「いやいや、戦略だから戦略!

 火を途中で縄にして縛るのは効率的だろ。」

「ふふ、冗談だよ。」


軽口を叩き合うのも俺たちらしくていい。

これが俺らの師弟関係だ。


「これで私が教えることはもう何もないね。

 もう、私はお払い箱かな~。」

「なに言ってるんだ?

 お前に何十年も世話になってる。

 そんな簡単に捨てたりしない。」

「ふふ、レジきゅんの優しさに

 お姉さん…濡れちゃう…はぁん」ビク

「おまえなぁ…」

このやりとりも今は大切にしたい。

あと何回できるのかも分からないしな。


「なんで急にこんなことを

 やろうと思ったんだ?」

「レジきゅんの実力が知りたかったんだ。

 あの王子に勝てるかどうかをね。」 

「結果はどうなんだ?」

フレイは変態だが実力は確かだ。

そんな彼女が判断するなら間違いないだろう。


「全然駄目ね。

 万に一つも勝てないわよ。レジきゅんは」

「…なんだと」

俺はあいつに勝てないらしい。

それほどの実力差があるとは思えない。


「前回は俺が勝ったし。

 俺は修行を続けている。

 必ず勝てないとは言えないだろ!!」

「そういう問題じゃないの…

 あの王子は今こうしている間も

 魔力が上がり続けてるわ。

 どういう理屈かは分からないけど。」

「魔力が上がり続ける…」

そんな馬鹿なことがあるわけが…



ビキ


一つだけあった。

元々、このゲームはエロゲーだ。

エロシーンを見るためにやってる層が多い。

だから、ゲームを簡単に

クリアするための救済処置が存在する。


その救済処置を使うには

とある場所で四年、居続けなければならない。

育成パートやそれまでの恋愛パートを

飛ばして一気に強くなれる寸法だ。


つまり、アドルフはそれを使ったのだろう。

平和のために

手段を選ばないやつにはお似合いだ。


「俺はあいつに勝てないのか…」

「ええ、このままでは無理ね。」

「フレイ!何かできる修行はないのか。

 このままじゃ、全てが終わっちまう!!」

「言ったでしょ。レジきゅん…

 あなたはすでに私を越えているわ。

 私に教えることは何もないわ。」

無慈悲にもフレイは俺に事実を突きつける。


結局、俺には何も救えやしないのか…

俺は絶望して床に膝をつく。


「一つだけ方法はあるわ。」

「なんだそれは!教えてくれ!!」ガバ

俺は顔を上げてフレイに問う。

なんでもいい勝てるならすがり付く。



「君にはできないと思うよ。」

「俺にできることならなんでもやってやる!」

「そう…」

そう言うとフレイは顔を伏せてしまう。

こんなに深刻そうな彼女は初めてだ。


「レジスト君。

 君はカレンの命を奪える?」

彼女は突拍子のないことを言う。


カレンの命を奪うだと…


「なに言ってるんだ!選べるわけないだろ。」

「そう、ならこの話は終わりね。」

フレイは淡々と話を終わらせようとする。

終わらせる訳にはいかない。


「どういうことだよ!答えろ、フレイ!」

「前に魔剣の話をしたよね。」

「ああ、それがどうした。

 今の話に関係ないだろ。」

「いや、関係あるからしてるんだよ。」

いつものふざけた雰囲気ではない。

本気のようだ。


カレンの命


魔剣


繋がりなんて…まさか


「賢い君だから気づいたみたいだね。

 そうだよ。魔剣は彼女のことさ。」

「馬鹿な!カレンは人間だぞ。」

カレンが魔剣だと…

そんな馬鹿な話はあるわけがない。

現に俺はカレンが産まれたときを見ている。


「私も初めは驚いたよ。

 まさか、彼女の中に魔剣があるなんてね…」

「魔剣があるってどういうことだ?」

「疑問に思ったことがない?

 彼女の体質のこと。」

「体質…」

カレンの体質…だと

カレンの体質は

感情によって無限に魔力が上がる。

そのおかげで彼女の魔力は

この世界で最高にもなれる。


「フレイ!カレンの体質のこと!?」

「私を誰だと思っているの?

 それぐらいとっくに分かっていたよ。

 彼女の体質は異常よ。

 あんなものはこの世に2つとないわね。」

忘れていたがこいつは天才だ。

文献だけでは分からないことも

知ってるときがあるくらい。


「だから、私が断言する。

 魔剣はあの子だ。

 魔剣が彼女に力を与えたんだ。」

確かに理に叶ってる。

魔剣の力というなら、

カレンの体質にも納得ができる。


しかし、そんな設定は俺の記憶にはない。

裏設定というやつなのだろうか?


それに…


「カレンが剣であることは分かった。

 しかし、それとカレンの命を

 奪うことと何が関係あるんだ?」

「君があの子の命を奪って

 力を奪えばいいんだよ。

 そうすれば王子にも勝てるかもね。」

「そんなことできるわけがない!!」

「だから、最初に言ったでしょ。

 君にはできないって。」

だから、言ったでしょと呆れるフレイ

呆れるのもしょうがない。

どうせ、俺が選べないと分かっているから。


カレンとアドルフに勝つための力

二つのことを俺は天秤にかける。


カレンは俺の大切な妹だ。

この世界で未来に絶望して

諦めて逃げようとした俺に希望をくれた。

カレンのために生きる楽しさを教えてくれた。

一緒にお互いを守りあうと決めた。

俺にとって大切な存在だ。

この世界で行き続けられたのも

彼女がいたからだ。



そんなカレンを…


そんなカレンの命を奪うなんて


「俺には…ない」

「なに?レジスト君」

「俺にはカレンの命を

 奪うことなんてできない!!」

俺には選択できない。


仮にカレンの命を選択した場合、

そんなのアドルフと同じだ。

妹を勝つための道具としているのと同じだ。

俺にはそんなことできない。


「俺はカレンを犠牲にしない。

 カレンを道具のようにしたくない。」

「負けてもいいの?

 あなたの大切な妹が危険に晒されるのよ。」

「それでも、俺は絶対に勝ってみせる。

 俺の命が尽きようとも妹を守るんだ!

 それが、5歳のときに

 俺が俺自身に誓ったことだから!!」

このままだと俺はほぼ負けるかもしれない。

だけど、一人では死なない。

あのやろうだけは絶対に道連れにしてやる。



「レジきゅんは変わらないね。」

ようやくフレイがいつもの口調に戻る。

表情もとても穏やかだ。


「ああ、だって俺はお兄ちゃんだからな」

無様にだって足掻いてやる。

妹のためならなんでもできるんだ。


「ありがとう。フレイ

 おかげで覚悟を決めたわ。」

「君は一人じゃないからね。

 だから、最後まで一緒に足掻こう。」

「ああ。よろしくな」


俺たちはお互いの手を握る。

これは約束だ。

最後まで逃げないと決めた俺の…





ーーーーーーーーーー

おまけ


おしえて!マーガレット


「ご主人様、少しお時間いいでしょうか?」

「ん?珍しいな。別にいいぞ。」

雌犬マーガレットが俺に相談事があるのはかなり珍しい。

変態だがなんだかんだ言って頭は切れる彼女だよほど重要なことなんだろう。

こういう時ぐらい真面目に聞いてやるか。


「ご主人様は

 なぜ、私に手をださないのですか?」


ベチン

「あふん…いいです!!ご主人様」

俺は無言で頭をひっぱたいた。

俺の時間を返せ。この雌犬マーガレット


「帰れ」

「ご主人様、これは真面目な話です。」

「お前にとってはな。

 俺にとってはどうでもいい」

なんでこいつに手を出すのが

真面目な話になるんだ?


ここは軍の基地だぞ。


「ご主人様のように獣のように女に

 飢えている男性が

 私やフレイさんのような

 女性がいるのにご一切手を出さない。

 私はこれが不思議でしかないんですよ。」


「人を性魔獣みたいに言うな。」

不服でしかない。


「やはり、フレイさまの言うように不能…

 いや、朝は一応勃っ「だまれ!!」」

うん、こいつの方がよっぽど性魔獣だな。


「というわけで私は仮説を二つ建てました。」

「一応、聞こうか?」

どうせろくでもないが聞いとく。

聞かないと後がめんどうだからだ。


「一つはご主人様が男色家である仮説」

「黙れ、ありえない。」

俺はノーマルだ。

それだけはない。


「もう一つは…」

「もう一つは?…うわ」ボフン


俺はマーガレットにベッドに押し倒される。


ペロ


「…んん。やめろよマーガレット。」

俺の耳元をなめてくるマーガレット。


「もう一つはこうやって組伏せられるのが

 好きだからですよ。ご主人様…」

艶かしいマーガレットがそう言いながら

服をーー



ガチャ


「お兄さん、イチャイチャしま…

 二人とも何やってるんですか!!」


「バニラ王女」

「バニラ!」


バニラのおかげで俺は解放されるのだった。






「お兄さん!

 なんで、私を呼んでくれないんですか!!」



へ?



「バニラ!?」


そう言って服を脱ぎながら

バニラは俺たちのところに向かってくる。


今の終わるところだろ!!


「そうですね。バニラ王女。

 三人で一緒にヤりましょう。」

「お兄さんのこと気持ちよくしますからね。」


そして、二人に抱きつかれたところで






チュンチュン



「ううん、おにいさんすきぃ」スピー


俺は目を覚ましたのだった。


俺って溜まってるのかな?

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