第22話 密室の男女
「あ、あの…」
「…」
俺は王女を無言で見ている。
彼女はそんな俺を見て困惑している。
「ごめん…なさい。私、迷惑ですよね」ウルウル
「い、いや。そんなことはないぞ。」
その仕草は反則だろう。
彼女に嫌われて、距離を離そうと思ったが
王女の涙にやられてあえなく撃沈した。
「ふふ、なら良かったです。」
満面の笑みで彼女は笑う。
彼女には迷惑じゃないと言ったが
絶賛迷惑している。
なんで、
年頃の女の子が
俺の部屋に住みたいって言うんだよ!!
…
…
…
遡ること一時間前のことである。
「このお方と一緒の部屋がいいです!!」
王女様のやばい発言に
俺とマーガレットはフリーズしていた。
王女が俺たちを簡単に
暗殺できるくらいには動けないでいた。
「いやいや、流石に許可できん!
男女一緒の部屋など風紀が乱れる!!」
俺より先に立ち直った
マーガレットが正論を言う。
グッチョブだ!
だが、風紀が乱れるとかお前がいうな!!
「でも、私…他の人は怖くて…」
「いや、王女様。さっきまで俺のこと
怖がってただろ?
だから、やめといた方がいいって」
怖いからって異性と同じ部屋で過ごしたいとか
帝国の性事情イカれてるだろ!!
いや、こっちにもヤバいやつら居たわ…
俺はそっと
「あなた様なら、私も安心できます。」
「王女よ。やつは男だ。
夜な夜な女に奉仕を求める変態だぞ!!」
黙れ!
そもそもそれは俺からじゃなくて
お前らが勝手にやってるだけだ!!
「いえ、この方は大丈夫です!
間違いありません!!」
一応、
あと、この子の俺に対する信頼は何だ?
俺はお前の大事な兄をボコった男だぞ。
「もし、この方と一緒でないなら…」
「お、おい」
「私は捕虜で構いません!」
強い意志で言ってくる王女。
そこには王女の威厳を感じる。
いや、こんなことで威厳を使うなよ!
「どうする?レジスト・ヴィレッジ。
私としては捕虜で構わないが。」
俺の反応を伺ってくるマーガレット。
決定権は俺に託されたようだ。
あーそうか。
王女の考えはよくわかった。
俺のことを信用して
断れない状況を作ったのだろう。
俺が彼女を捕虜にしないと信じて
どこで俺のことを信用したのかは分からない。
しかし、
俺は身内以外には優しくはないぞ。
「分かりました。
俺の部屋で引き取らせてもらいます。」
「…!」
だけど、今回は俺の敗けだ。
来客として扱いたいのは俺のわがままだ。
彼女が酷い目に遭うのが見たくないからな…
「ただし、
何が起きても文句を言うなよ。
マーガレット様が言ったように
俺も男なんだからな。王女様よ。」
最終確認を王女に行う。
今からでマーガレットの部屋にしてほしい。
「問題ありません!
私はあなた様を信じておりますから!!」
王女は曇りのない笑顔で言ってくる。
その笑顔は間違いなく
ヒロインにふさわしい笑顔だった。
「勝手に信じていろ。それで裏切られて
絶望しても知らないからな。
それと出歩くときは俺かマーガレット、
あとここにいないがフレイってやつの内の
誰かと一緒にいるんだぞ!いいな!!」
「はい!分かりました。
ですけど、私は絶望なんてしませんよ。
だって、あなた様がいますから!」
これは敵わないな…
そう思いながら、
俺はその場を後にするのだった。
とカッコよく締めたかったのだが…
「あの、あなた様の
お名前を教えて貰えませんか?
ちゃんと名乗っていただいてなかったので」
「レジスト・ヴィレッジ様ですね。
素敵なお名前ですね。
レジスト様とお呼びしても
よろしいですか?」
「私はシュークリームが好きなんです。
レジスト様は何が好きですか?
エクレアですか?
こちらの国では流通していないものですね。
どんなものか気になります。」
「こちらには
どのようなお花があるのですか?
………
レジスト様は詳しいですね!
家族とよく見ていた?
そうなんですね…いいですね…」
部屋に戻ってからこの王女、
俺にずっと話しかけてくる。
マーガレットのとこでの話を忘れてるのか?
まあ、暗くされるよりはいいが、
よくも飽きないものだ。
とりあえず、淡白に返事を返す。
何度も言うがこの子と仲良くなるのは
俺にとってよろしくない。
「なあ、王女。
あんた、自分の立場を分かっているのか?」
「バニラでいいですよ。
私の立場ですか?来客ですよね。」
「は?あんた。
あんなの形だけの言葉を信じてるのか?
あまり、俺を信じると痛い目に遭うぞ。」
思わずため息がでる。
この子もやっぱり兄と同じで
現実が見えていないタイプなのだろうか?
俺は彼女に失望する。
所詮、あいつの妹なんだと…
「ふふ、レジスト様の
そういうところが信じられるんですよ」
「そういうところ?」
お前がここにいる元凶である俺に
信じられるところなどないはずだ。
「無意識でやっているのなら、
あなた様は元から優しいのですね。」
「優しいとか…王女の目は節穴か?
あんたが都合よくみているだけだ。」
常に距離を置くようにできるだけ冷たい態度を
とっているのに何を言ってるんだ?
「私のことを楽天家とでも思っていますか?」
内心を見透かされて驚く。
「ああ、そうだ。
この状況で他人を信じるなど
普通の考えではないだろ。」
「レジスト様だから信じられると
私は言っているじゃないですか。」
「何を根拠に!!」
イライラしてくる。
こいつら兄妹はどうやら俺を
イラつかせるのが得意らしい。
「根拠ですか。まずは、
私を来客にしてくださったことですね。
あなた様にメリットがないのに」
「そんなことか…
優しくしてお前を懐柔するためだ。」
もちろん、そんなつもりはない。
でも、このままいいように
流されるのは嫌だったから嘘をつく。
「ふふ」
彼女が俺のことを笑う。
気に入らない。
「何がおかしい?」
苛立ちを隠せずに彼女に聞く。
彼女は怒らないでくださいと
一言謝ってから理由を語る。
「ですから、
そういうところが優しいんですよ。
弱みに漬け込む人は
懐柔するためなんていいません。
それに、あなたは散々自分を信じるなと
私に忠告してくれるではないですか?
そんなお人好しな人が
悪い人なわけありません。」
「…」
俺は黙り込むしかない。
無意識に出ていた。
俺にそんな意図は一切なかった。
「それに冷たい態度ですけど、
一度たりとも私の話をあなた様は
無視することはありませんでした。
それでも冷たいといいますか?」
前言撤回だ。
彼女は賢い。
兄なんかよりもずっと現実を見ている。
下手をすると俺よりも
「でも、一番はあなた様に触れたときに
似てると感じたからです。」
「似てる?」
彼女は危険だ。
これ以上、深入りしてはいけない。
そう分かっていても
「夢の中で私のために怒ってくれた人に…
自分に関係ないはずなのに…
私のためになにもできない自分に
怒っていた人に。」
彼女に魅入ってしまう。
「だから、私はレジスト様を信じます。
こんな私に優しくしてくれる
あなた様だから信じられるのです。」
彼女は笑顔で言う。
こんな敵軍の中で味方もおらず
一つの部屋で男と二人っきりなのに。
迷いのない笑顔で…
あー
駄目だ。
はっきり、わかってしまった。
俺はこの先、彼女の命を奪うことはできない
ーーーーーーーーー
おまけ *閲覧注意(胸糞描写あり)
夢の中のあの人
私は毎日のように基地で違う男に抱かれる。
なぜ、王女の私がそのようなことをするのか?
それは私の体質が原因である。
私の体質は触れたものを強くする能力。
深く触れれば触れるほど
その効果は格段に上がる。
この能力に目を付けたお兄さまは
13歳の頃から私を抱いた。
私は嬉しかった。
何一つ、お兄様の足元に及ばない私が
お兄さまに求められる。
それは至福のひとときだった。
だが、15歳になってから事態は一変した。
兄が軍に参加すると決めたのだ。
私はもちろんお兄さまに付いてくことを決め、
衛生兵として参加することになった。
その時からだろう。
お兄さまは変わってしまった。
元々、理想を持っている素晴らしい方だった。
だけど、
軍に入ってからはそれが顕著になった。
力を世界を統一して平和にするための力を
欲するようにお兄さまはなったのだ。
それで、目を付けたのが私の体質だ。
お兄さまは軍を強くするために
兵士に私の体を売った。
私が泣こうが助けを求めようが
お兄さまが私を助けることはない。
代わる代わる、違う男が私と体を重ねる。
そんな生活が3ヶ月ほど経っても続いた。
もう、夜に寝てても行為をする夢を見る。
たすけて
もういやだ
○にたい
しかし、これぐらいしか
私がお兄さまの役に立てることはない。
そして、今も悪夢にうなされる。
もう、いいや
私は精神が摩りきれて思考を捨てようとした。
そのとき、
ポゥ
光が見えた。
とても暖かい光が見えた。
ポゥポゥ
初めは小さな光だった。
しかし、夢を見るごとに大きくなっていった。
ポゥポゥポゥ
初めはよく分からなかったが
これは感情のようだった。
幻覚が見せているものか?
誰かが見せていてくれているのかは分からない
スッ
その夢を見て、日付が少し経った後、
私はその光が知りたくなり触れてみた。
ザザ
そこにあったのは怒りの感情だった。
私のためになにもできず、
無力な自分に怒るそんな感情。
嬉しかった。
全てを失った私にはその光が嬉しかった。
こんな私のために怒ってくれるその光が…
こんなにも心が満たされるのも久々だった。
そのお陰で私は私を捨てずに生きてこられた。
軍に入って一年が経った。
私はまだ生きている。
未だに毎日男たちと体を重ねている。
しかし、私はもう絶望しない。
夢のあの光に助けられたから
あの光がだれの感情なのかは分からない
だけど、なんとなくいつか会える気がする。
もし、会えたらのなら伝えたい
ありがとうをあの
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公に関しては
ゲームを早期クリアするために
ドーピングなどなんでも利用するタイプの
プレイヤーを意識しています。
なので、主人公がやっていることは
あくまで作業ですので悪意はないです。
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