第11話 未来のために
たすけて、おにいさま
男たちに無理やり衣服を破られ
穢らわしい手が伸びていく。
もういやだ
代わる代わる男たちが現れ、
その行為に終わりは見えない。
◯にたい
終わりなき絶望になにもすることができない。
早く楽になりたいそう願っているようだ。
まただ
またあの夢を見る。
金髪の女の子の夢だ。
最近は彼女の心の声も
聞こえてくるようになった。
そのおかげで
彼女のことが分かった。
彼女はおそらくヒロインだ。
バニラ・レイモンド
それが彼女の名前だ。
なんで俺の夢の中に
彼女が現れるのかはわからない。
それに
主人公側の言うなれば正ヒロインである。
そんな彼女がなぜこんな目に?
主人公は何をしているのだろうか?
考えてもラチがあかない。
ただ一つ分かることは
夢の中の彼女が傷ついてるということ。
命を捨てたいほど絶望していることだけだ。
俺にできることがあるなら
なにかをしてあげたい。
だけど
彼女をただ見ていることしかできない。
そもそも、ただの夢なのだから
俺には関係ない…
そう思っても割りきれない自分がいた。
―――――――――――――――――――
「駄目だ。全然思いだせない。」
俺は11歳になり、
もう一度ゲームの設定を
思い出そうと奮起していた。
そろそろゲームの本編が始まるということで
少しでも情報が欲しくなったからだ。
思い出せたことは主人公サイドのことだけ。
俺ことレジストのことは思い出せない。
それもそうだろう。
メインは主人公で
俺はあくまでサブキャラに過ぎない。
だが、主人公たちのことを
思い出せたことによるメリットもあった。
まず、重要なのは主人公の年齢だ。
主人公は俺と同い年である。
主人公が戦争に参加したのは
記憶によると15歳のときだったはずだ。
つまり、
あと数年で戦争が起こり
俺もそのぐらいで戦争に参加する。
これは非常に重要であり、
俺の今後に影響する情報だ。
悠長にしている間にも少しずつ
期限は迫っていたことに気づき、
焦りを感じるがおかげで色々と目安はついた。
これが一つ目のメリット。
次に主人公の設定だ。
名前はプレイヤーが選ぶ形式で
デフォの名前は残念ながら思い出せなかったが
王子なので調べればすぐ出てきた。
アドルフというらしい。
ちょっとかっこよくて羨ましい。
俺なんて並びかえるとシスターだぞ…
アドルフ・レイモンド
セイバー帝国の王子で双子の妹バニラの兄。
短い金髪に碧眼の高身長のイケメンで
希少魔法である聖魔法の使い手でもあり、
周りの人間からも信頼されている人間性、
なにもかもがハイスペックの男。
主人公らしく
ライバルキャラの俺とは対極だ
戦場で会えればすぐ分かるので
ある意味、便利なのかもしれない。
それに情報は戦争では重要だ。
特に聖魔法とは回復と攻撃をどっちもできる
チート性能だが知ってると知ってないとでは
大きく差が出てたであろう。
これが二つ目のメリットだ。
最後に主人公の妹バニラについてだ。
彼女はセイバー帝国の王女。
俺と主人公と同い年で、
兄と同じで聖魔法の使い手だが
兄と違い回復魔法しか使えない。
ウェーブのかかった金髪で
童話のお姫様のような見た目をしている。
細かい設定は思い出せないが
彼女は兄と同じで15歳のときに
衛生兵として戦争に参加している。
彼女について思い出したのはそれぐらいだ。
彼女も戦争に参加するということは
このまま行けば戦場で会うかもしれない。
正直、夢のこともあり
手にかけづらいので会いたくはないが
いざとなったらーー
まあ、役に立つ情報はこれぐらいだろ
「そういえば、元々の設定の
俺の強さってどうなんだろう?」
敵のことを考えると自分の強さが気になる。
ライバルキャラになるってことは
自国であるメイダー王国では
トップクラスに強いのは間違いない。
今の俺に
そこまでの強さがあるかは分からない。
俺の強さの指針といえば
そうそう存在しないとは思うが…
てか、あいつアレで
メインキャラじゃないのが不思議だ。
…
「お兄さま」
色々と考えていると
今日も一段と
かわいらしくなってきたカレンが呼んできた。
「どうした?」
「今日も修行をつけて貰ってもいいですか?」
「ああ、いいぞ。」
去年辺りからカレンも
俺と修行するようになった。
最初は反対したが
俺の隣に立ちたいと言われたので
泣きながら了承した。
今はもう
組み手しかしていないため丁度いい。
ちなみに
頼もうかと持ち掛けたが
「フレイって誰?」
と存在すら拒否しているので無理だろう。
あいつ、嫌われすぎだろ…
「やぁーーー!!」
「甘い!」バシ
「きゃっ!?」
木の棒で斬りかかってくるカレン。
そのカレンの木の棒を軽い力で弾き飛ばす。
そんなわけで俺が教えてる。
修行は手を抜くわけにはいかないので
厳しく教える。
「痛い…グス」
「泣いている暇はないぞ!
それとも、辞めるか?」
「…っ。辞めません!
お兄さまの隣に立ちたいんです!」
彼女は健気にもついてくる。
正直な話、今にも撫でまわしてあげたい。
「なら、次はこっちから行くぞ。」ダッ
「受けます!」ガン
「よく受け止めたな。カレン!
まだまだ行くぞ!」
「はい!」
カレンの筋はめちゃくちゃいい。
それもそのはずだ。
彼女は
未来でメイダー王国のエースになるのだから。
「…ハァハァ」
「カレン。大丈夫か?」
「…ハァハァ
大丈夫です…お兄さま。」
疲れたようで少しぐったりしている。
まだ彼女は6歳で身体も
出来ていないから厳しいだろう。
本当は戦いなどして欲しくないし
辛いなら辞めて欲しい。
だけど、彼女が決めたことだ。
俺が止めることはできない。
なら、俺ができることは
彼女が
悲惨な未来に進まないように強くするだけだ。
「カレン。こっちにおいで?」
「はぁい」
俺は芝生の上で正座で座り
カレンに手招きする。
カレンは少しふらついた足取りで
こちらに来ると
ポフ
そのまま俺の膝の上に寝転んだ。
ナデナデ
「お兄さま…
私、お兄さまの迷惑になっていませんか?」
「ん?そんなことないぞ。
カレンのことを迷惑に思うわけないだろ。」
頭を撫でていると
カレンは縋るような声で俺に言ってくる。
カレンはお兄ちゃんの生きる糧だ
カレンがいなければ、俺は生きていけない。
「本当ですか?」
「ああ、それにカレンはすごく成長してる。
だから、毎日が楽しみなんだ。」
「ありがとうございます。お兄さま」パァ
嬉しいのか。
太陽のような笑顔で俺の方を見てくる。
大天使を膝の上に寝かせるとか
不敬じゃないか?俺処されないか?
そんなことを思っていると
スゥスゥ
「寝ちゃったか。」
疲れと撫でられたことで
眠ってしまったようだ。
気持ちよさそうに眠っている。
カレンはこんな幼い感じだが
すでに俺の8歳の頃よりも強くなっている。
近接戦に関してもすごいが
魔法はもっと素晴らしい。
元々、魔力量は桁違いに高いのに加えて、
才能というものが違った。
俺が苦労して5年で身につけた
火を色んな物に変える魔法も
わずか一年で身につけるほどだ。
だからこそ、心配になる
今は戦争が起きていないが
近い未来必ず起こる。
そのとき、彼女は前線に
出るようになるだろう。
彼女はその時どうなるのだろうか?
ゲームのシナリオ通りになるのか?
そんなことは俺が許さない
だから、俺が前線で頑張り、
できるだけ
彼女が前にでないように頑張らなければ…
いざとなったら俺が…
俺はそう思いながら
彼女の頭を撫で続けた。
ーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
プロフィール
アリア・ウィーズベンチ
女 20歳
好きなもの
一人
読書
甘いもの
ライバルキャラである
レジスト・ヴィレッジの婚約者。
魔力はないので魔法を使えない。
人を避ける理由は幼い頃に
特徴的な髪の毛が理由で
同年代の子どもに苛められたからである。
しかし、苛めに関しては
レジストと婚約してからは
報復を恐れたのかパタリと止んだ。
レジストとの関係は
決してよかったとは言えないが
苛めの件もありレジストには感謝していた。
レジストの死後ーーーーー
データが破損しているので読めません
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本当に今さらですが
ヒロインは妹のみ有効です。
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