040 戦利品ゲット

 いつのまにか、宝箱が出現していた。


「ブレイクさん、カメレオンの向こう側に、宝箱があります! もしかしたら貴重品が入っているかもしれません。開けてみましょうか?」


「ああ。トラップの可能性もあるから、気をつけたほうがいいぞ」


「はい、気をつけます」


「さっきの女性は?」


「大きな岩があったので、斜面の白い花を目印に待機させています。さいわい、どこも怪我はなく、意識もしっかりしています」


「そりゃ、よかった。だとしても、早く迎えに行ったほうがいいかもな。カメレオンは中ボスかもしれん。2体同時に出現されたら面倒だ」


 体力の数値が高めのカメレオンは、致命傷を与えないかぎり、しつこく襲いかかってくる。丸々と太りすぎて走力は低めだが、捕食対象を見つけると、らせん状の舌を素速く伸ばしてくるため、油断は禁物だ。また、ボスにしては、特殊能力の設定が物足ものたりない感じがした。もっと巨大で攻撃力のあるモンスターに出喰わすまえに、NPCを村まで送り届けるべきだろう。


 カメレオンジャングルの

 特定イベントが発生して

 いるのか?

 ちがったとしても、

 救出対象のNPCを見失ったら

 ベストクリア扱いには

 ならないはずだ……

 

 突然だが、シュリンク(収縮)といって、商品を透明な薄いフィルムで包装する方法がある。いつからだったか、本屋に並ぶ書籍のほとんどがこのシュリンクの対象となり、立ち読み客が激減げきげんした。商品を密封することで汚れ防止などに貢献するいっぽう、あまり強度がないため、簡単に破れてしまう。ゲームの攻略本しかり。百科事典のように分厚くて重い本も、無理やりシュリンクされており、本体の角がゆがんでいたりする。新品で購入したものの、家に帰って開けてみると表紙が折れていた……という経験を何度かしたことがある。返品しようにも、レシートをもって店員に状態を確認してもらうさい、「いちいち細かいことでうるさい客だな」と思われそうで、いつもあきらめてしまう。


「ブレイクさん、見てください。この戦利品のカタチ、きっと本ですね」


 なぜ俺が、シュリンクについて(頭の中で)語っていたかというと、カメレオンを倒したことにより出現した宝箱の中身が、フィルムで密閉された書物っぽいからである。しかも、透明ではなく、まっ黒のビニール袋だ。……戦利品の中には、ありがた迷惑なアイテムも存在する。シュリンクで表紙を隠す必要がある書物とは、あやしい要素しか感じられないのだが。



✓つづく

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