020 再会と疑問
短髪に
『こんばんは、ブレイクさん』
と、気さくに話しかけてくるため、俺も『よう』と応じる。
『久しぶりだな。元気にしていたか』
『はい。仕事が
ということは、現実のレンドは社会人だろうか。学生アルバイトって可能性もあるが、落ちついた口調から察するに、成人女性だと思われる。個人情報を質問してもルール違反ではないが、ここは仮想空間だ。相手のプライベートは、むやみに掘り下げないほうがいいだろう。
『もう、だいじょうぶなのか』
『少し疲れていますが、ログインして良かったです。こうして、また、ブレイクさんに会えましたし』
『俺に?』
今のは、わざとらしかったかもな。レンドは、俺の案内で勇者イベントを経験している。ちなみに、現在の時刻は深夜だ。そろそろ自動モードに設定し、ログアウトしようと思っていたが、見知ったキャラクターがリージョン移動してきたので、続行を決めた。
『それじゃあ、今から村人を助けに行くか?』
『はい、お願いします』
『了解。ついて来な』
レンドにとっては、二度目の挑戦となる勇者イベントだ。ちょいとステータスを確認しておくか。(ピッ)
レベル──88 命中率──72
攻撃力──48 素早さ──62
防御力──52 魔力───85
精神力──92 運────01
武器/杖/マジックメイス
前回は、レベル85くらいだったよな。そんなに変わってないか……いや、待て。運が01ってなんだ。下がってるような? いくらなんでも不自然な数値だ。01なんて、あきらかに極端すぎるだろ。レンド自身も違和感がないのか? 前回ゲームオーバーになったのは運のせいか? だとすれば、今回も同じ結果にしかならない。無意味だ。
『おい、レンド』
『はい』
『リージョン移動する前、
『なにかとは……』
『たとえば、ステータスの運に関係するイベントとか』
『運、ですか?』
当の本人は気にしていないのか。魔法タイプの性質上、精神力の伸びが強点となり、運の低さをカバーできるとはいえ、さすがに01では死亡フラグが立ちまくるだろうに……。それとも、運を低めにキープする理由があるのか。だとしても、勇者イベントに出現するドロニュルと、最終試練の敵を倒さなければ[伝説の剣]も[称号]も手に入らないぞ。……いったい、なにを考えている?
『あの、ブレイクさんって、リージョンマスターですよね』
レンドに正体を見抜かれた俺は、答えあぐねてしまった。できれば気づかないフリをして、適度な距離感を保ってほしい。
✓つづく
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