021 空気を読め
いつから俺を、ここの[リージョンマスター]だと気がついていたのだろう。他の
ここはひとつ、ナビゲーターを気取り、本当の立場は伏せておくとしよう。
『レンド、おじさんに期待しちゃだめだよ。俺は、ただのNPCだからな』
『あー! 戦士の[ブレイク]見っけ!! あんたから[伝説の剣]をもらったって、ファーレンが言ってた!』
俺と[レンド]の
ゴールドコイン稼ぎが
目当てか……?
レベルに対し、所持金が多すぎる。バトルが発生しないリージョンで、
『じゃあ、ふたりとも、またどっかで会えたら、声をかけてくれていいからねー! がんばって〜!』
『お気をつけて』(レンド)
『ああ、またな』(俺)
去りぎわに応援されたが、なにをがんばれって? まあ、いい。やはり[ファーレン]は学生だろうか。知り合いの雰囲気も若く感じ取れる。勇者になれて余程うれしかったのか、吹聴しているようだ。仮名を使うネットゲーム内で身近な人物が接触するケースは
『ファーレンさんって、ブレイクさんのご友人ですか?』
『いや、ちがう。数日前、勇者になりたがってた
つまり、彼はもう二度と、俺が管理するこのリージョンに移動することはできない。同リージョンで発生する他のイベントを楽しみたければ、いちどゲームを終わらせる必要がある。至難のハッピーエンドでも、バッドエンドでもかまわない。エンディング後にセーブ画面は表示されないが、スタッフロールが流れているあいだ、これまでのデータが自動記憶される。ふたたび新しく始めようとすると、一部の機能が引き継げるため、選択肢があらわれる仕組みになっている。
『それより、時間は平気か? 今から勇者イベントに突入すると、1時間くらいはかかるぞ。たぶん』
『ご心配なく。あすは仕事が休みなので、今夜はゲーム
『へえ、そりゃけっこう。こんどは、そう簡単に倒されるなよ』
『はい、がんばります』
……こうして、俺は見ているだけのNPCだが、レンドはひとりでなんとかドロニュルを倒し、次の選択肢を迷わずチョイスして、最後の試練まで進んだ。いよいよ俺は役目をはたす時がきた。試練をクリアしたプレイヤーに[伝説の剣]と[勇者の称号]を授けるわけだが、このタイミングでバグが起きた。いきなり画面がまっ黒になる現象を深夜に経験すると、ホラー映画の主人公になった気分で恐怖を感じる。……空気を読んでくれ。
✓つづく
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