041 それはない
「この袋、今、開けてみますか?」
「いや、それはちょっと待て、キルクス。中身の確認は、村に帰ってからにしよう。……水浴びは、どうする?」
「あっ、そうでした! できれば、あのきれいな川があったところまで戻りたいです。……宿屋のお風呂は、有料ですし」
「なるべく、手持ちのゴールドコインは節約したいよな。俺もそう思うが、ひとまず、先に女性を迎えに行こう」
「わかりました。アイテムは、ぼくが預かっておきます」
「頼んだ」
キルクスは戦利品をリュックサックへ詰めると、女性のところへ向かった。岩陰にうずくまっている姿を発見したが、スカートを履いていないため、俺は胸当てを外し、上着を脱いで彼女へ手渡した。そのままでは目のやり場に困るので、腰に巻いてもらった。タンクトップ姿になった俺は、今更ながら脇毛がないことに気づいた。
……自分で
『助けていただき、ありがとうございます。わたしは、カメレオンダンジョンで素材集めをしている宝石商です。この森には
「そうでしたか。ここは密林ですから、肉食動物もたくさんいるはずです。女性ひとりで探索するなんて、おすすめできません」
キルクス少年が説教をすると、NPCは『お礼にこれを』といって[仲間のきずな]を差しだした。
「あれ? これって、ブレイクさんが持っていた指輪と似ていますね」
受けとったキルクスが、俺をふり向く。近づいて少年の
「ああ、同じに見えるな」と、俺。
『これは[仲間のきずな
「永遠のきずな?」と、キルクス。
『金の指輪を嵌めたプレイヤー同士は恋人と認定され、クリアまで行動を共にできます。ハッピーエンドの条件を満たせば、結婚式を挙げることもできる貴重品です』
俺とキルクスが結婚?
アイテムの発動基準に性別は問われないようだが、おっさんと少年が[永遠のきずな]で結ばれるエンディングとは、いくらなんでもマニアックすぎやしないか。
✓つづく
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