045 パーティー

 俺(戦士/リージョンマスター)

 ファーレン(戦士/勇者)

 キルクス (魔法使い)

 レンド  (魔法使い)


 4人パーティーを組む場合、上記の構成員ならば攻守のバランスはいいほうだろう。戦士と魔法使いってのは、前衛と後衛といった配置が取りやすく、バトル時に安定感がある。回復役のサポートさえあれば、戦士の活躍の場は無限にひろがっていく。……回復役が倒れると、戦士的には致命傷を喰らったも同然となるため、一心同体といっても過言かごんではない。戦士が回復系のアイテムを所持していなければ、共倒れとなる。……[全滅]という表示が画面に流れると、やんでも悔やみきれない。



 ゲームの世界で過ごす2日目の夜、俺は[仲間のきずな]を手に入れたことにより、ひとりではなく同行者と宿屋に泊まっていた。また、この貴重品アイテムには進化系があり、[仲間のきずなプラス]といって、条件を満たせば嵌めた相手と[永遠のきずな]で結ばれるらしい。


 いわゆる、結婚ルートの

 結末ってやつか?

 ハッピーエンドとは

 ちがうよな……。

 誰かひとりでも、このゲームを

 クリアしたやつ、いるのか?

 俺たちが迎えるエンディングは

 ハッピーエンドになるのか?


 キルクスとレベル上げのため足を運んだ[カメレオンダンジョン]で入手したアイテムは、黒い袋でシュリンクされた書物のようなものと、[仲間のきずな+]である。


「キルクスが戻ったら、中身の確認をしよう」


 ひとまず、銀色の指輪(仲間のきずな+)は置いておくとして、気になるのは書物のほうだ。せめて表紙や題名さえわかれば、内容の想像は可能だが、中身が見えない状態につき、雑誌の袋とじを開けたいような気分にとらわれ、そわそわして落ちつかない(妙な感情がまさるのが、うっとうしい)。


「にしても、ずいぶん長風呂ながぶろだな」


 そんなに念入りにからだを洗っているのかと思いつつ、俺も入浴の準備を始める。最初に着ていたコットンシャツはNPCの女性にあげてしまったので、宿屋の受付で取り扱っていた[旅人の服]を1枚買った。V字型のえりに、ボタンはなく、クリーム色っぽい厚手のシャツである。白や黒といった色ちがいの在庫もあったが、なぜか七分袖しちぶそでしか売っていなかった。


 半袖はんそでのキャラクターも

 いるし、長袖ながそでもいるから

 季節感がよくわからんな


 正しくは、ダンジョンごとに体感温度は異なってくる。各リージョンに存在する村は攻略の拠点となり、道具屋と宿屋が配置されていた。入口には、プレイヤーのステータスが刻まれた石板せきばんが置いてあり、行動次第で変動する。


 部屋の扉に合鍵を差しこむ音がして、キルクスが戻ってくる。ふり向いた俺は、少年の背後に目を留め、驚愕した。赤い髪の勇者[ファーレン]が立っていた……。



✓つづく

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おじさんに期待しちゃだめだよ。リージョンマスターのハッピーエンドは前途多難のようです。 み馬 @tm-36

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