たとえばアイドル、たとえば消防士。
いわゆる花形呼ばれる輝かしい職業にも、舞台裏が必ず存在します。
そう、それは特殊な能力をもって人々を救うヒーローであったとしても……
ヒーローではなくその事務方に、本来当たることのない点にスポットライトを当てた本作ですが、特撮だSFだファンタジーだと侮ることなかれ。
シフト管理やノルマの設定、タスクの処理など、現代のビジネスや社会生活においても役立つノウハウが分かりやすく凝縮。
その中においてもドラマ性を失うことなく、ヒーローの表と裏、両面より描写することで多くの人間の物語が交錯し、ストーリーとしても感情としても非常に追いやすい作りとなっていて、専門用語に不慣れな方でも親しみやすい作品となっています。
ヒーローとしての熱さ、その裏方としての熱さ、ふたつの王道の、絶妙なバランス感覚のうえに成り立った良作です。
異能犯罪者を取り締まる治安維持組織ヒーローアソシエーションの司令官に着任した主人公・東條甚一郎。
しかし一匹狼のエース・赤城に他のメンバーは萎縮して現場のチームワークはバラバラ、おまけに人手不足でチャレンジ精神も低い。そんな問題だらけの現場をまとめる東條の手腕に期待が高まる。
よくある戦隊ヒーローのお約束では、問題が起きても意地と根性で打開したり、強敵が現れても秘密兵器で対抗したりするが、現実はそんなに都合良くない。その代わりにマネジメントの力で解決する設定が新しい。
例えば、「リーダー」と「マネージャー」の役割の違いはわかるだろうか?
そうしたマネジメントの基礎から、3つの要素「自分の管理」、「メンバーの管理」、「仕事の管理」を実践しながら、若い部下の秘めた想いや情熱を描き、次第にプロフェッショナルに成長していくヒーローたちの姿が格好良いのだ。
ちなみに選者の自分はビジネス書の仕事も手掛けているので保証しますが、本作で描かれるマネジメント術は実際に専門書で解説されているものと同様で、実用書として社会人も読める内容になっています。
世の中の管理職の皆さんがヒーローに見えてきます。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)