043 露顕

 赤い髪の男は、まちがいなく[ファーレン]である。相変わらず、お気に入りの[伝統下着]を身につけていた(現在地は脱衣所につき、それほど違和感はない)。むろん、キルクス少年とは初対面だったが、やたらとフレンドリーな態度でせっしてくる。


「へぇ、キルクスっていうんだ。もしかして、ハンバーガーのピクルス、、、、と発音いっしょ? オレ、そんなにピクルスって好きじゃないから、きみのことは[キルっち]って呼ばせてもらおっと! オレのことも、自由に呼んでくれていいからな!」


 馴れ馴れしいというより、図々しい気もするが、本人に悪気わるぎはないため、キルクスのほうで受け流した。服を脱いではだかになると、入浴のため先に足を運んでいたファーレンと、それほどひろくない湯船ゆぶねに、肩を並べてつかる状況となった(ファーレンのふんどしは、ついでに洗うといって、おけに引っかけてある)。


「オレさ、勇者イベントをクリアして、[伝説の剣]をもってるンだぜ。キルっちは、もう勇者の称号を手に入れたか?」


「ぼくはまだですが、勇者イベントに向け、ダンジョンでレベルを上げている最中でした」


 思いがけず、少年より先に目標を達成したファーレンの登場により、[リージョンフライハイト]の世界は大きく動きだす。そうとは知らない俺は、部屋のベッドで(すっかり)ひと眠りしていた。


「それ、なんかの貴重品アイテム?」


 と、ファーレンが少年の左手の薬指を見ていう。脱衣所で外そうとしたが、抜けなかった。


「はい。これは[仲間のきずな]という、ペアリングです。ぼくは今、ブレイクさんと行動を共にしていて、もう片方は彼が……」


「ブレイクだって!?」


「わっ、なんですか?」


 ファーレンは、いきなりザバッと立ちあがると、キルクスの顔をのぞき込み、「そうか、そうか!」と、つぶやく。


「オレ、[ブレイク]を探すためリージョン移動してきたところなんだぜ。夕暮れ時だし、宿屋に泊まって正解だったな。キルっちといっしょなら話が早い。会わせてくれよ」


「でも、どうして、ブレイクさんをご存じなんですか?」


「だって、あのひと[リージョンマスター]のひとりだろ。仲良くなれば、こっそりヒントとか教えてくれそうじゃん」


「ブレイクさんが、リージョンマスターって、ほ、本当ですか?」


「なんだ、キルっち。いっしょにいて気がつかなかったのか」


 ファーレンのかんは意外とするどい。ふたりの会話は俺の真相に迫りつつあったが、キルクスとファーレンこそ、予想どおりのプレイヤーである。いよいよ、ヒロイン役の[レンド]があらわれるのを待つばかりだ。



✓つづく

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