036 協力プレイ

 ということで、手分けして限定イベントの情報収集をしたところ、このリージョンでは滅多めったに発生しないことが判明した。


 ってか、みんなヒントを

 開示かいじしてねぇだけだろう


 信用できそうな情報を得られなかった以上、無理して挑戦する必要はない。村の石碑前で合流したキルクスは、小さく肩をすぼめた。


有益ゆうえきな情報はありませんでしたね。限定イベントはあきらめて、[カメレオンジャングル]へ行きませんか?」


「ああ、いいよ。そうしよう」


 当初の予定どおり、キルクスのレベル上げに付き合うことになる。俺としては、限定イベントの内容に興味があったが、仲間の希望を優先し、ダンジョンへ向かった。前回の[マグマの遺跡]同様、密林ダンジョンは湿度が高く、じめじめムシムシしている。ジャングルの入口に立っているだけで、ひたいに汗が浮かんだ。かたわらのキルクス少年は、やけに涼しい顔をしていたが、「暑いですね」と声を発した。


「熱帯雨林って雰囲気だな。せいぜい、泥濘ぬかるみに足を取られないよう、気をつけて進もうぜ」


 キルクスは「はい」といってうなずき、ホワイトロッドを構えて歩きだす。本来ならば、ひとりで探検すべきところを、ふたりで調査できるとは、ありがたい。見落としガチなアイテムも、ふたりならば探しやすいだろう。


「ジャングルといえば、シダ科の植物だよな。園芸植物というより、花をつけない草ってイメージだが、陸上には1万以上の種類が自生してるってンだから、驚きだよな」


「ブレイクさんは、植物に詳しいんですね。もしや、お仕事はインテリア関連ですか?」 


「うん? まさか。俺は草花くさばなでる気質ではないよ。父親の趣味が盆栽ぼんさいでさ。庭木とかなえとか、買いに行くのを付き合わされたから、自然と植物の知識が身についたようだ」


 休日になると、父はよく、隣県にあるガーデニングセンターへ、トラックを走らせた。ビニールハウスに並ぶ植木鉢ポットには色々な花が咲いており、大きな常緑樹なども取り扱っている。当時子どもだった俺は、英国庭園に迷い込んだかのような錯覚に、わくわくしたものだ。余談だが、小学生のとき、近所の家の玄関に、食虫植物が置いてあった。


 ハエトリグサとかなんとか

 言ったっけ……?


 虫を捕食する植物を初めて見たが、昆虫と植物の世界は奥が深い。


「ブレイクさん、向こうから水の流れる音がします。川があるようです」


「ああ、俺も気になっていた(水分補給をしたいと思っていた)。……きれいな水だといいが、行ってみるか」


「はい。行ってみましょう」


 キルクスも考えることはいっしょのようで、周囲を警戒しつつ先立って歩き、川を目ざした。……そろそろ、ドロニュルとか出現しそうな雰囲気だな。


「ブレイクさん、敵です!」


 思ったとおり、地面から4体のドロニュルがあらわれた。はさみ撃ちにされたが、あせらずミスリルソードを構えた俺に、キルクスが補助魔法で援護する。俺は戦士として攻撃に集中し、ノーダメージで敵を倒した。



✓つづく

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