029 呼び出しベル
いざ、初対面の人間に直接声をかける瞬間ってのは、いくつになっても緊張するよな。
子どもの頃、ファミリーレストランで外食するさい、すぐトイレに立てる通路側の席がお気に入りだった。ウェイトレスに向かって「すみませーん」と注文を頼む役は、少し苦手だったけどな。今でこそ、押すとピンポーンと音が鳴る、ワイヤレスのオーダーコールシステムが各テーブルごとに置いてあるが、こじんまりとした飲食店には導入されていなかったりする。しかも、じっくりメニューをながめていると、「ご注文がお決まりでしたらお伺いします」と、
あれから、飲食店の接客システムはだいぶ
意を決してスニーカー少年に近づくと、俺の
「な、なんですか、あなたは?」
ほらな、思ったとおりだ。まだ声変わり前なのか、女の子っぽい調子の声が耳に届く。俺は両手を軽くあげ、笑みを浮かべた。
「敵意も悪意もないから安心してくれ。俺はゲームのプレイヤーで、戦士のブレイクだ。きみの名前を教えてくれないか」
自己紹介をしてから、
「ブレイクって、
「
「あなたも……、ブレイク……」
少年の態度が不自然に変わる。真剣な表情をして、俺の顔を見あげてきた。互いに初対面だと思われたが、どうやら少年のほうは[ブレイク]と
仮に、俺(
少年は長い沈黙のあと、ようやく[キルキス]と名乗った。操作キャラクターの外見や名前から、プレイヤーの性別を判断することは難しい。[キルキス]という響きも、どこか中性的で、人物像は
✓つづく
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