027 限定イベント
これは夢だと思いながらも、五感は正常に働いているわけで、それなのに俺は[マグマの遺跡]に足を運んでしまった。
……暑いなんてレベルじゃない。息が苦しい。吸いこんだ熱気で
「引き返すべきだろうか……」
今なら、まだ間に合う。道具屋で手続きした際、引き返すこともできると説明された。事前の装備をまちがえた挑戦者は、いったん村に戻って作戦を変更するという選択肢が与えられているようだ。しかし、俺的には[仲間のきずな]を入手しておきたい。リージョンごとの限定イベントには、ベストクリアの条件を満たしたプレイヤーにだけ、貴重品アイテムがゲットできる。つまり、クリアするまで何度でも出直すことは可能だが、その回数によってゲットできる戦利品のランクが落ちていく。
「まいったな。このまま行くか?」
岩山を
周囲に誰もいないのは、現時刻のプレイヤーがゼロだからではない。[リージョンフライハイト]のシステム上、NPC以外のキャラクターは、主人公の足取りを追うことができないようになっている(個別ルートが発動する)。もともと、ひとりで遊ぶ用のゲームにつき、パーティー編成といった画面は存在しない。ただし、[仲間のきずな]のような貴重品を入手すれば、プレイヤーがバディを追従させることができる。むろん、貴重品の効果を受けつけないリージョンもある。使いどころはかぎられていたが、現状が夢だと思いたい俺としては、誰でもいいから理解者がほしい。
「うおっ、危ねえ!」
ゴバッと、地面から
やはり、これはまぼろしか?
ゆっくり遺跡の内部へ歩いていくと、[岩ガニ]という爬虫類のモンスターが出現した。体長30センチくらいの
「なんか、罪悪感があるな……」
ミスリルソードで切りつけると、裏返って倒れ、10本の
「状況的に、ラスボスが登場しそうだな」
火柱に注意して戦う必要があるため、なるべく視野がひろく取れる中央付近へ移動すると、
ガラガラッ、ドォーンッという
「ファイヤーマンか。いくら敵とはいえ、人型に剣を振りかざすのは、緊張するな……」
もはや、リアルすぎる夢だと割り切るしかない。相手が俺を排除の対象として襲いかかってくる以上、倒さなければこっちが
「どこからでも、かかってきな」
ロールプレイングゲームの主人公らしく、敵を挑発してみた。今の俺は、レベル50以上あるはずだ。ファイヤーマンの能力値は、そこまで
✓つづく
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