☆第十七話 醍醐味!☆


 山の散歩道を少し長く一回りして、キャンプ場が見えて来ると、時間はお昼をちょっと過ぎた頃。

「えへへ~♪ お腹 好きましたね~♪」

「僕もだよ。それじゃあ、バーベキュー しようか」

「は~い♪」

 育郎も亜栖羽も、お腹がグーグー鳴っていた。

 トイドローンをテントの中へと置いて、受付けへ行って、食材の入ったクーラーボックスを受け取ってくる。

「私~、バーベキューって 初めてです~♪」

「ぼ、僕もだよ…。とにかく、戴いた手順の説明書を…」

 キャンプの火起こし等について、解説の資料も受け取っているので、初めての育郎でも失敗は少ないだろう。

 指定されたバーベキュー設備で、説明とにらめっこをしながら準備を進める、育郎と亜栖羽。

「えぇと、着火は…」

「細い枝を、交互に重ねて~…こうですか~?」

 二人で確認をしながら、十数分で着火に成功をした。

「やった! それで…細い薪を くべていって…」

 最初の火が点いたので、後は細い薪から太い薪へと、隙間を作りながら燃料を重ねてゆく。

「それじゃあ私~、食材を持ってきますね~♪」

「あ、亜栖羽ちゃん、一つ お願いして良い?」

「は~い♪」

 育郎が火を調整している間に、亜栖羽にはテントの荷物から、巾着袋を持って来て貰った。

「これですか~?」

「うん、ありがとう」

 キャンプ場で用意してくれた小型のケトルに水を入れて、コンロで湯を沸かしながら、巾着を開ける。

「イ、インスタントだけど…」

 青年が用意をしていたのは、持ち運びサイズの、インスタント珈琲やパックの紅茶や緑茶や紙コップなどの、お茶セットだ。

「お茶セットですね~♪ 私、用意します~♪」

 脇のテーブルで、亜栖羽はお茶を用意する。

 小型なケトルの湯は、すぐに沸いた。

 バーベキュー台の火も、説明書通りな感じで、十分に強くなる。

「それじゃあ、お肉 焼き始めるよ♪」

「は~い♪」

 熱々な焼肉ネットの上に、美味しそうなお肉を乗せると、ジュウゥっと香ばしい音と煙と香りが、ワァっと拡がった。

 亜栖羽と育郎は、思わず揃って、香りを堪能。

「んん~♪ 美味しそ~♪」

「うん♪ 早く食べたいね」

 牛肉だけでなく、豚肉や鶏肉、ピーマンやタマネギ等も、金網へ乗せる。

「オジサン~♪ お茶~、淹れました~♪」

 ドリンクを冷やす意味でも、食材と一緒に氷も予約をしていたので、亜栖羽は焼き肉用にと、冷たい緑茶を淹れてくれた。

「こっちも、焼けてきたよ」

 亜栖羽がお茶のカップと割りばしを用意して、育郎が紙皿へと、野菜とお肉を取り分ける。

「わぁ~、キャンプのお肉だ~♪」

 お皿の上の牛肉や鶏肉が、ジュウジュウと脂を跳ねさせて美味しそうで、野菜類もコンガリと程良く焦げて、良い香りだ。

「それじゃあ」

「「戴きます」~す♪」

 焼きたてのお肉を頬張ると、口の中で、甘い肉汁がドュワっと溢れる。

「んん~♪ ぉ美味ひ~♪」

「ぱく…んん、丁度良く焼けてるねぇ♪」

 口の中から鼻の奥まで拡がる焼き肉の香りが、とても幸せ。

 晴れた青空と、緑の深い森と山々と、サラサラ流れる川と、時折聞こえる鳥の鳴き声。

 キャンプ場という、自然環境の中で食べる食事は、やはり一段も二段も美味しく感じられた。

 特に、最愛の天使と一緒に食事をしているのだから、人生で最も美味しい食事の一つであろう。

 育郎にとって、これまでの人生で最も美味しい食事とは、全て亜栖羽との食事である。

「あ、玉ネギ 充分焼けてる」

「私~、戴いちゃいます~♪」

 初めてのバーベキューは、食材を残さないよう、やや少なめに予約をしたけれど、育郎の体格を考えると、普通よりもちょっと多めだ。

 それでも、小柄な亜栖羽とほぼ半分ずつ食べられたのは、亜栖羽にとってもキャンプのご飯が美味しかったからだろう。

「ふぅ~、ご馳走様でした~♪」

「美味しかったねぇ…♡」

 水場で後片付けをする二人には、まだ楽しみがあった。


                    ~第十七話 終わり~

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