☆第二十二話 お土産選び☆


「う~ん~…」

 管理棟の受付けで、亜栖羽は悩んでいた。

 キャンプ場のお土産コーナーには、管理人氏が手作りをした木製のキーホルダーしか、並べられていない。

 そしてお値段も、女子高校生のお小遣いでは、友達の分を含めた三つの購入は、かなりキビしい感じだ。

「凄く丁寧に 作られているんだけどねぇ…」

「そうなんですよ~☆」

 単純に、値段が高い。

 というワケではなく、育郎も亜栖羽も、手彫り手作りの小さな看板に焼き印を押された木製キーホルダーには、価格以上の価値があると感じている。

 ただ、キーホルダーに関しては管理人氏の職人魂が強く出ているようで、お手頃価格のキーホルダーは、皆無であった。

 とはいえ、育郎だって亜栖羽との思い出だけでなく、一緒にキャンプをした記念としても、キーホルダーは欲しい。

「…亜栖羽ちゃん。僕もキーホルダーが欲しいから、亜栖羽ちゃんとお揃いで買うよ。それで、帰りに道の駅とか寄るから、友達へのお土産はそこで買う。っていうのは どう?」

「は~い♪ …え、良いんですか~?」

 道の駅へ寄ってくれる事に喜んだ事への「は~い♪」で、キーホルダーを亜栖羽とお揃いで育郎が買ってくれる事への「…え、良いんですか~?」だ。

「うん…♡ すみませーん」

 亜栖羽に選んで貰って、お揃いのキーホルダーを手に入れた育郎は、強面が更に肉食猛獣似となるご満悦。

「それじゃあ、お世話になりました」

「お世話になりました~♪」

「またいらして下さいね」

 管理人氏へ挨拶をして、車で出発をする頃には、ヘッドライトが必要な位に、陽が傾いていた。

「こっちの県の道の駅なら、お土産になるよね」

「はい~♪ 道の駅~、私 夏前に、オジサンから教えて貰って~♪ 今すっごく ワクワクしちゃってます~♡」

「そう…でへへ♡」

 一般道を走って道の駅へ到着すると、駐車場は少し混んでいる感じ。

 駐車スペースへ車を停めて、外へ出ると、山の空気が冷たい。

 陽が落ちて来た道の駅は、赤い夕焼け空と蒼い夜空のコントラストに、背景の山が黒くて大きい。

「山とか~、ちょっと、怖いですね~♪」

「妖怪たちの時間…かな?」

「うぅ~☆」

 想像力の豊かな亜栖羽は、怖そうに震えた。

 比して、道の駅は明かりが眩しく、なんだかホっとする。

「中で、何か暖かい物 飲もうか」

「は~い♪」


 家族連れが多い感じな入り口を潜ると、内部は、明るくてニギヤカだった。

「わあぁ~♪」

「おぉ…広いねぇ」

 一般的な道の駅だけど、天井が高く、飲食スペースが意外と広い。

 二人は軽く店内を巡って、お土産のコーナーへ。

「こっちの県の…食べ物が良いかな…?」

「そうですね~♪ あ、見てください~♪」

 亜栖羽が手に取ったパッケージは、栗饅頭が六つ入った、白い箱。

 見本では、ハート型の栗饅頭という珍しい形なうえ、饅頭表面への焼き印も、それぞれ違う観光名所の名前が読める。

 その一つには、キャンプ場の名前もあった。

「珍しい形だし、栗饅頭なら 季節感のあるお土産にもなるね」

「ですよね~♪ 他の名所の名前も ありますし~♪」

 饅頭ごとの焼き印が違うのは、観光協会のアイディアだからだろうか。

「値段はどう?」

 もし足りないようなら、その分だけでも、青年が出すつもり。

「はい、大丈夫です~♪ これ二つ、買ってきま~す♪」

 亜栖羽も、育郎の心遣いを解っているのだろう。

 今日のキャンプについて、家族には秘密だけど、何らかの設定は、ミッキー嬢たちとの間で出来ているのだ。

 育郎も会計へと付き添っていたので、すぐ隣で立ち尽くす巨漢へと、亜栖羽が笑顔で振り返る。

「お待たせしました~♪」

「うん♪ それじゃあ、何か飲んでから ミッキーちゃんたちとの待ち合わせの駅まで、送るよ」

「は~い♪」

 亜栖羽のスマフォには早速、育郎に買って貰ったキーホルダーが、着けられていた。


                    ~第二十二話 終わり~

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