☆第二十一話 名案☆
「トイドローン~、すごいですね~♪」
「ね♪ 僕も、想っていた以上に綺麗に撮れてて、驚いたよ」
亜栖羽とのツーショットというだけでなく、空撮の動画だ。
いつも通りのカメラ撮影も、いつも通りに沢山撮影が出来たし、一緒の初バーベキューや初テントも過ごせた。
育郎的にも、キャンプは大満足。
トイドローンの撮影は三分程だったので、映像鑑賞はすぐに終わり、しかしまた再生したりして、データは亜栖羽へのスマフォへも送り済み。
コロんと姿勢を変えたうつ伏せ少女は、青年の腕枕に頭を乗せて、小さな両掌も筋肉枕へ乗せ、目を閉じた。
「う~ん…バーベキュー…」
「?」
バーベキューに、何か問題があったのだろうか。
「バ、バーベキュー…なにか、あったの…?」
もしお腹を壊したとかだったら、今すぐに、車で病院まで搬送する。
という決意で尋ねたら、少女は、青年の考えも知りたい様子。
「バーベキュー喫茶~…とか、やっぱり 無理ですよね~☆」
「え…? ああ…」
キャンプ前に亜栖羽が話した、学園祭の出し物の件だ。
今月の末に行われる学園祭で、亜栖羽のクラスはコンセプト喫茶を出す事だけが決まっていて、そのコンセプトについて、今度の金曜日に放課後のHRで決める。
と、育郎も聞いていた。
「バーベキュー喫茶…お客さんを 選びそうかな…。それと、教室では 許可されない感じじゃないかと…」
育郎の意見に、亜栖羽は「言われてみれば」的に、キュっと目を閉じる。
「あ~、そうですよね~☆ 校庭とかでお店出せたとしても、オジサンの仰る通り~、お客さん 長居しちゃいますよね~☆」
「うん、そう思うよ…」
「あ~っ! それにアレですよね~っ! 材料費とか、すっごく かかっちゃいますよね~っ☆」
「ああ、それもそうだろうね」
バーベキューの串一本を五百円で出すとしても、喫茶店ならドリンクとセットになるだろうから、串の食材を減らすしかなくなるっぽい。
「ただの串焼きとかじゃないと、コストもかかる。っていう感じだね」
それでは喫茶店ではなく、串焼き屋台だ。
「ですよね~☆」
ガックリしながら、少女は青年の上腕へ、頬を預ける。
(! やっ、柔らかいっ…暖かいっ…可愛い…っ!)
軽く参っている亜栖羽も、やはりというかそれ以上に、育郎にとっては護りたくなる天使であった。
バーベキューから、何かを思い出した亜栖羽。
「あ~っ! そういえば、山の中に、栗の木とか、無かったんですよね~☆」
「そういえば 見なかったね。もっと奥の…山の中の散歩道とかじゃないと、見られないのかも…。うん、見て」
育郎がスマフォで調べたら、キャンプ場HPの道中写真で、そのように確認できた。
「栗の実~、見られたかもですよね~☆」
そう言われると、育郎もすぐ亜栖羽を背負ってテントから走り出て、全力疾走で栗の木まで連れて行ってあげたくなる。
(じ、時間は…っ⁉)
スマフォの時計を見るに、遅くとも後三十分ほどで、キャンプ場から出発しなければならない。
(ぜ、全力疾走すればっ…ギリギリで往復できるか…っ?)
とか真剣に悩む強面を見て、亜栖羽は育郎の考えている事が、解ったらしい。
「オジサンと、ゆっくり散歩~、もっとしたかったですね~♪」
「ハっ–う、うん…♪」
(そうだった…亜栖羽ちゃんを背負って山道を走ってっ、万が一にも転んでっ、亜栖羽ちゃんを怪我させる…。なんて、絶対にしてはならないのに…っ!)
自分の考えを改め、心を落ち着かせた育郎。
暴走しそうな青年を、少女は実に上手に押し留めた。
それでも育郎は、亜栖羽の願いを叶えたくて必死に考えて、思いついて、巨体をモジモジさせつつ告げる。
「そ、その…また、あの…キャ、キャンプ…しましょう…っ!」
「! はい~♪」
亜栖羽の輝く笑顔が、嬉しそうで恥ずかしそうだった。
テントの中で転がってオシャベリを楽しんでいたら、そろそろ帰る時間だ。
二人でテントを畳みながら、亜栖羽が思い付く。
「あ、栗専門喫茶~、とか、どうでしょうか~?」
「なるほど…。秋の味覚一点っていうコンセプトも、お客さんに 喜ばれそうだよねぇ♪」
とか話しながら、二人の初キャンプは暮れてゆく。
~第二十一話 終わり~
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