龍神庵銀子は薬売り

　沖野銀子は江ノ島の老舗、龍神庵の娘である。龍神庵は人の薬だけでなく神さまの薬・霊薬を商うことで名高い霊薬局である。両親は三年前に他界した。
　銀子は、兄・白金、姉・金子と暮らしている。浮き世離れした白金と金子であるが、霊薬の調薬を成す霊薬師として世に名高く、銀子も密かに霊薬師に憧れている。
　銀子は老舗の霊薬局である弁天楼の娘・当麻紫乃と常日頃から競い合っている。
　学校に商売、薬の勉強と銀子の毎日は忙しない。
　五月のとある日。大黒審判が行われる。大黒さまの霊薬審査に合格せねば霊薬局は名乗れない。弁天楼は地の虹『弁天涙』で見事合格。しかし龍神庵は海の虹『朔龍湯』を提出するも不合格。白金の命懸けの請願と弁天さまの執成しにより、大黒さまは三日後の再試験を決める。
　一発逆転を期す銀子と紫乃は…続きを読む