第31話 姉妹
「お姉様、あれは何ですか?」
「わ、解らないわ。」
ドーム状の建物の中に居る巫女服姿の姉妹。
彼女たちの視線の先に有るものは、白く輝く封印の魔法陣。
その中央部には、マッコウクジラのような巨大な頭部の怪物。
マッコウクジラと似ても似つかないのは、巨大な顎に、図太いキバがびっしりと並び、強靭な四肢で立っている。
その怪物の足元には、首の無い祭祀服の男性死体と、黒いグレートソードを持った少年。
そして、魔法陣に縫い付けられた祭祀服の男性とおぼしき巨躯の白骨体。
「小僧、神を侮辱するのか?」
クジラは唸るような咆哮を上げている。
「神だとぉ?
フザけた事を言うじゃないか。」
黒い大剣を振りかざし、涼しい顔の少年の目に、狂喜が見え隠れする。
「お嬢さん方、大丈夫かい?」
いつ現れたのか、姉妹の隣に立っているインディアン。
「ここから、少し離れるよ。
荒事が拡大しそうなので…。」
「すいません、私たちは動けません。
神に捧げられたイケニエなのですから…。」
「そうですか…。」
自分たちの希望と裏腹に、見せられてしまった不幸な現実を必死に受け止めようとする姉妹と、その意を受け、彼女たちの傍に留まるインディアン。
振り下ろされる大剣は怪物に当たる手前で、封印の力で弾かれてしまう。
すると、
「主よぉ、これは美味くないぞぉ。
一度結界を破って喰らわぬか?」
「喰えそうかい?」
少年が涼しげに質問すると、黒い大剣のルビーが怪しく光り輝き、瞳のようなものが出現する。
「勿論だ!」
怪物が唸り狂う
「愚かなりっ!
神を喰らうなど、畏れを知らぬ愚か者め!!」
怪物の周りに複数の魔法陣が出現する。
ファイアーボールっ!
サンダーボールっ!
アイスショックっ!
アースクエイクっ!
魔法の波状攻撃が襲いかかる。
「!!!」
立ち昇る煙と響く轟音に姉妹は言葉を失い
「これは…またぁ…。」
インディアンは半目開きになる。
「ふふふ…分を弁えぬ…ぬっ!!」
煙が晴れ、そこに立つ少年には外傷のかけらもない。
黒い大剣のルビーは、いよいよ赤く燃え上がっている。
「ふむ、量はまあまあだが、味は下品だな。」
バリトンが舌打ちをする。
すると、少年は剣を白く輝く魔法陣に突き立てる。
「うむ、甘露甘露。」
バリトンが歓喜すると、白く輝く魔法陣が消失し、怪物も狂喜しだす。
「三百年ぶりのシャバか…
あのフザケた坊主に縫い付けられ、生贄の捕食もままならなかったが、これで…?」
全身を虚空から引きずり出す怪物。
封印の恨みを晴らすべくかま首をもたげた八本の
「くそ坊主め、
怪物があたりを見回すと、
「おい、その
怪物の脇腹に深々と
「こらこらぁ、余所見のお痛は、頂けないなぁ。」
「ふん、意気がるな小僧っ!!」
八本の蛇が少年に襲いかかるが、黒剣を置いたまま、攻撃を
「おいおい、エモノを置いてどこに逃げるのだ?」
怪物が自分の体に刺さった黒剣を抜こうとするが、傷跡しか残っていない。
「エモノってのは、コイツかい?」
少年の影から実体化する黒い大剣。
その剣の柄を握る少年。
「
甘辛の角煮しか、調理法を考えられん。」
「そうかい、
バリトンに答える少年。
その奇怪な風景に青ざめる姉妹。
その横では、インディアンが白骨体に鼻歌交じりにお
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