第14話 謁見の間
「ようやく終わったようね…。」
白のブラウスに紺のパンツとサーコートを羽織、足元にはブーツを履き、儀礼用のエストックを腰につけたソフィア。
「まさか、沐浴までするなんて…。」
絹のブリオーに身を包んだシャーロット。
「…。」
ヴィクトリアンメイド姿のオリヴィアは、戸惑っていた。
「でも、いいのかしら?
私が帯剣するなんて…。」
敵陣のど真ん中、しかも敵大将を眼前に控えてソフィアは戸惑っている。
「ソープ、大丈夫よ。
いざとなれば、私の生命一つを持って…。」
シャーロットが覚悟を決める。
「いざとなれば、私が二人をお守りします。」
オリヴィアがソフィアとシャーロットを前にわざとカテーシをして見せる。
三人はお互いにコロコロ笑いあった。
「さぁ、行きましょう。」
オリヴィアに促され、
さて、三人が扉に到着すると、重厚な木の扉が奥に向かって開かれ、促されるまま三人が扉の奥に入る。
40畳ほどの広間の奥には一段高い床が設けられ、そこには玉座に座る
彼の右側には二刀を両脇に下げたダークエルフと黒いフードを纏った巨躯のガイコツ。
そして左側にはインディアンのような風貌の男と、
シャーロット達三人が、玉座の手前まで近づいた所で、黒騎士が低い声を響かせる。
「そこで、止まられよっ!」
シャーロット一行が止まると、黒騎士は話を続ける。
「これより尋問を行うっ!」
すると、オリヴィアがシャーロットの前に駆け出し、少年との前に割って入り訴えかける。
「このような扱いはひどく有りませんか?」
そう言って、オリヴィアはシャーロットにカテーシを行う。
「こちらにおわす方は、ホーランド王国 第三王女 シャーロット殿下です。
また、隣におられますのは、殿下の御学友であり、伯爵家の娘ソフィア様、私は、殿下の侍女 オリヴィアです。」
すると、儀礼用エストックを取り出したソフィアが、シャーロットを前に栄誉礼を行い、膝をかがめて見せる。
「恐れ多くも、第三王女に対し、尋問とは、あまりにひどい仕打ちでは有りませんか?」
一連の所作を見届けた後、オリヴィアが少年の方に振り返る。
少年は眉一つ動かす気配はない。
「言葉が過ぎるぞ、娘っ!!」
騎士は声を荒らげ、剣の柄に手をかけ歩みだそうとする。
オリヴィアとソフィアが構えを取った刹那
「待てっ!」
青年が立ち上がり、騎士を制止しながら、シャーロットに近づいて立ち止まる。
ソフィアは魔法詠唱の構えをするが、こちらはシャーロットが制止している。
「貴女は、良い配下をお持ちのようだ。」
そう言って、シャーロットの前で膝をかがめ、彼女の手甲に接吻をする少年。
「私は、リッケルトと申します。
王女殿下。」
そう言うと、立ち上がってオリヴィアの方を見る。
「オリヴィア殿よ。
貴女の言う通り、これは大変失礼なことをした。
場所を改めさせて頂きたい。」
オリヴィアは頭を下げた。
リッケルトは小さく頷く。
「ハインケルっ!
王女殿下の歓待を任せる。
くれぐれも失礼のなきように。」
「はいっ!」
ハインケルが頭を下げ、シャーロットたちの前に来る。
「貴殿たちの歓待を仰せつかったハインケルと申します。
どうぞこちらに。」
こうして、尋問を受けること無く、シャーロット達は大広間から退場していった。
~オリヴィア視点~
(まさか、こんな格好でシャーロットの供廻りとなり、敵大将に遭遇するハメになるなんて…。)
準備された、あまり見たことのない衣装に袖を通しているオリヴィア。
「そうか…ソープ様の思いつきだったわね…。」
やがて、彼女の身支度を手伝っているメイド達とほぼ同じ服装に落ち着いた所で、戸惑ってしまうオリヴィア。
再開してみたら、シャルはお姫様ルックで眩しいかぎり。
そして、ソープも宮廷騎士の装いで、これまた凛々しさに磨きがかかっている。
からのぉ~、私の…ド…レ…ス。
私は思わず深い溜め息をついた。
◇ ◇ ◇
いざ、謁見の間に入った瞬間は不思議な感じだった。
魔城の攻略は、一つや二つではない。
その都度感じた事と言えば、憎悪と殺気、死臭と腐臭…およそ
しかし、ここは他とは大きく異る。
威厳と静けさ、威圧はあったが、殺気は感じられない。
促されるまま、敵大将の近くに来た所で『尋問を行う』と言う。
それに、ソープが栄誉礼を行った際は、ハインケル公も一目置いていたと聞く。
ここは、交渉を有利にするためにも、こちらには、王侯が居ることを知らしめる必要がある。
もっとも、私達を制圧した騎士が静止させようとしたときには、どうなるかと思いましたが…。
どうやら、私達が相対した敵は『モンスター』では無いようだ。
~シャーロット視点~
この服は、何なのでしょうか?
身体のラインが
正直、このような服は、私に似合うものではありませんが、相手が用意したものを使わないのは不信感を与える。
「…そうなんですが。」
やはり恥ずかしかった。
◇ ◇ ◇
さて、二人の機転で、交渉における不利な状況は回避できそうです。
とりあえず、捕虜の方々の生命の保証、あわよくば、開放まで取り付け…。
その上で、可能であれば休戦と戦後補償の処理を行い、一日も早く終戦を迎えたいところです。
私は、この戦いの発端を知りません。
母が死去し、父王が怒りのままに起こした戦いだと聞いていますが、母の喪に服することも無く、この戦を始めてしまった父王…。
いつも冷静だった父王は何処に行ったのでしょう?
余程、眼前に見える
だけど、スケルトンの歓待って、どんな事をされるのでしょうか?
少々不安です。
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