第11話 監獄 ~モック視点~

(さぁ~て、これだけ捕虜ひとが増えてくると、食事の問題も解決しないとなぁ。)

 捕虜収監牢へ向かいながら、モックは城内ねぐらで供される塩っぱいスープと乾パンの食事を思い出し、ゲンナリとしてしまう。


(イモや麦は育っているんだからなぁ…収穫と料理が出来ればなぁ…。)

 ボロ布を纏ったスケルトン達を引き連れ、両腕を後ろに組ながら歩いて行くモックだった。


 ◇ ◇ ◇


 場面は変わって、ここは捕虜収監牢。

 モックと彼が引き連れる異様な団体の姿に、牢内の人間は戦々恐々とし、緊張の糸が張り詰めている。

 そのような中をニタニタしながら、牢内の人間を物色しているモック。


「え~っとぉ~。

 彼と、彼…、それから、彼と彼を。」

 モックの指示に従い、スケルトン達が牢屋から農夫の男性を連れ出してくる。


 さて、連れ出した男達を従え、さらに牢内を物色するモック。

 すると、女性が囚われている牢内で一騒動が起こる。


「あなたぁ~っ!

 あなたぁ~っ!

 どうして、こっちを向いてくれないの?」

 一人の女性が格子を掴み、飛び出さんばかりの勢いで叫びかける。


 男性陣の方に振り返るモック。

 その面倒くさそうな表情に男性陣の顔も引き吊っている。

「誰が彼女の旦那さん?」

 モックの質問に誰も答えず、女性の泣く声だけが響いている。


「貴方の向かって左端の彼が、彼女の夫よ。」

 女性の声が、牢内から聞こえてきた。

 モックが視線を向けると、泣いている女性を胸元に寄せ、彼を睨め付けている三十代の女性。


 モックは満面の笑みを浮かべ、彼女へ問い返す。

「夫婦は、彼らだけかい?」

「いいえ。」

 モックの問いに毅然と答える女性。


「分かった。

 俺の名前は、モホーク。

 モックと読んでくれ。」


「キャサリンよ。

 キャスと読んでもらって良いわ。」


 モックは、キャスと彼女が抱き寄せている女性を牢から引き出す。

 抱き合う夫婦と、その二人を複雑な表情で見つめる男達。


「それじゃ、キャス。

 他のメンバーの夫婦もチョイスしてくれ。」

 モックに促され、キャスは次々と夫婦を選別していく。


 程なくして、人が集まるとモックは全員を引き連れて捕虜収監牢を後にする。

 そして、キャスは元の牢内に戻される。


「彼らをどうするつもり?」

 キャスが詰問すれば


「な・い・しょ♪

 まぁ、バラバラで居るよりも良かったかもね♪

 最期くらいは、夫婦で居たいでしょ?」

 モックはヘラヘラと笑いながら去って行く。

 連れ去られる人々の表情は非常に暗い。


 彼らの姿が消えると、キャスは前のめりに膝をついてさめざめと泣き出す。

「私、保身のために…彼らを売っちゃった…。」

 牢内の女性達は誰もキャスに語りかけず、遠巻きに眺めている。


 やがて、女性の悲鳴と化け物のうめき声のようなものが聞こえてきた。

 キャスは泣き崩れた。

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