第12話 監獄 ~シャーロット視点~
この牢に囚われてどのぐらい立ったのでしょうか?
あの忌まわしい戦場で、目がくらむ閃光で気を失ってしまい。
次に目を覚ますと、私の隣にはソープが座り、あの戦場で一緒に戦っていた女性達が私を囲むように座っていました。
「皆さん、大丈夫ですか?」
私が起き上がり声をかけると、全員が安堵した表情になる。
しばらくすると、牢に面した通路の左奥から木棚を押しているコボルドを従えた鎧姿のスケルトンが現れる。
「食事の時間ね…。」
ため息をつくソープ。
他の女性達の顔色も一様に良くない。
スケルトンの指示に従い、コボルト達がスープの入った皿と乾パンを牢の入り口に並べていく。
一連の作業を確認し、コボルト達を列に引かせると、こちらに会釈をして立ち去るスケルトン達。
彼らは去ったものの、誰一人食事に手を付けるものはいない。
「どうして、誰も食事に手を付けないのですか?」
私の問いかけに誰もが黙り込んでしまう。
「シャ…シャル?」
ソープの心配を気にする風もなく、乾パンも頬張ってみる。
スープは塩っぱいが、無味乾燥な乾パンを食べるのには丁度良かった。
「シャ…シャルぅ?」
「うん…大丈夫そうよ。」
一通り完食した私を不安そうに眺めるソープ。
他の女性達も怪訝そうな顔をしている。
「まずは食べましょう。
今は生き残る事が優先です。」
私は力説して見せる。
実際、彼女達のほとんどが食事をしていないようで、皆一様にヤツレている。
私に促され、一人、また一人と食事に手を付け、最期にソープも食事を口にしてくれた。
全員が一通り食事を済ませた頃、黒衣のローブを纏った巨躯のスケルトンが私達の牢にやって来た。
スケルトンは語りかける。
「貴女方の中に、シャーロット・フォン・ホーランド殿下は居られるか?」
全員が私の前に並び身構える。
「貴女が、シャーロット・フォン・ホーランド殿下ですな。」
全員の後ろに控える私に視線を送ってくるスケルトン。
見れば、黒衣のローブの下に見えるものは、高位の祭祀服。
私は彼女達の間をすり抜け、彼の前に立つ。
「私が、シャーロット・フォン・ホーランドです。」
私の隣では、ソープが剣を持たないままで栄誉礼を行っている。
すると、スケルトンが膝をかがめ、私に対して王侯への礼をする。
頭を下げたまま、スケルトンは話を続ける。
「私は、ハインケルと申します。
殿下におかれましては、ご足労頂きたく、よろしくお願い申し上げます。」
「殿下に何用か?」
ソープが私の身体を庇うように、格子と私の間に割って入る。
ハインケルはゆっくりと立ち上がり、ソープの方に目を向けた後、再び私の方へ視線を送る。
「こちらは、殿下の供回りですか?」
私は頷き、ソープは答える。
「ソフィア・ド・トリトン。」
ハインケルは一つ頷く。
「心得ました。
では、殿下の供回りもご同行願います。」
「今ひとつよろしいかしら?」
私はハインケルに声をかける。
「いかがされましたか、殿下?」
ハインケルの返答に答え、私は後ろを振り返り、牢内の女性たちに視線を送る。
「彼女達への配慮をお願い申します。」
ハインケルに視線を戻すと、彼は私に頭を下げて答えた。
「殿下のみ心のままに。」
私はハインケルの返答に頷く。
「では、案内をお願いします。」
「御意。」
ハインケルは、私とソープを牢から連れ出すと、私達の先頭に立って歩き始めた。
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