第42話 裏切り者
リッケルトが先陣を切って、冒険者グループに切りかかり、ジョーが弓で支援しているのだが…。
「ぐぎゃぁ~~~。」
リッケルトの手に持った黒剣が冒険者の体を撫でると、黒い霧を吐きながらミイラと化す。
(何が起こっているんだ?)
矢をつがえながら、不気味な光景に目を奪われているジョー。
不気味と言えば、彼が放った矢は、例え冒険者の頭を射抜いても、その闘争を抑えることは出来ていない。
放たれる矢に魔法、そして数人の剣士、闘士、僧兵が襲いかかる中、舞うように黒剣を靡かせるリッケルト。
その刀身の前では、矢は折れ、魔法は霧散する。
冒険者と言っても、年齢は勿論、性別も種族も多岐にわたっているはずなのだが、全員一様に精気のない虚ろな瞳、リッケルトの黒剣で切り裂かれると、同じような呻き声をあげ、黒い霧を吐きながらミイラ化するその身体だけが、酷く印象に残る。
冒険者パーティーもあらかた片付き、ジョーの感覚も麻痺してきた頃、突然バリトンの声が森にこだまする。
「メインディッシュじゃぁぁぁぁ~~~っ!」
歓喜ともとれる叫び声の方を見ると、リッケルトが最期の冒険者パーティーに斬りかかっている。
そして、ジョーにはその顔に見覚えがある。
「ま、まさか…。」
かつて自分も所属し、数多の魔物を倒し、勇者の称号を受けた冒険者パーティーのメンバー。
彼らは他の冒険者と違い、目はギラギラと輝き、冷静な戦闘運びをしているように見える。
しかし、リーダーの剣士が腰に巻いている
剣士をヘッドショットするジョー。
矢は見事リーダーの眉間に刺さるが、気にする風のない剣士は、リッケルトと切り合っている。
代わりに魔法使いがファイアボールの返礼を放ってくる。
ジョーは
地面に降り立ち、体格には不釣り合いな二本の曲刀を土から引きずり出す。
木々の間を疾駆し、一気に元の仲間のところへ駆け寄り、リッケルトと剣士の間に割って入るジョー。
剣士とリッケルトは後方へ飛び、対峙する。
「お前達、俺の村に何をしたっ!!」
「やぁ、ジョー。
久しいな。」
ジョーの質問に戯ける剣士。
「答えろっ!!
お前達、俺の村に何をしたっ!!」
「虫退治と宝石集めさ。領主の依頼でね。」
「!!!」
剣士の返事にジョーが一気に殺気立つ。
「まぁ、メスを確保するように依頼されていたが、傀儡どもが悪食過ぎてね…。
全部パーさ。」
肩をすくめ苦笑いをする剣士。ジョーはゆっくりと剣を構える。
「俺の村と知ってやったのか?」
「まさかぁ。
…まぁ、結界の張り方やゴーレムの姿を見たら思い出しちまったんだけどな…。」
そう言い終わるとジョーに斬りかかる剣士。
「裏切り者をよぉっ!!」
ジョーが剣を受け止める。
「お前が、お前の
さらに剣撃を繰り出す剣士
「だが、俺たちに安息は与えられなかった。
復活させられ、再び戦場へ放り込まれた。」
鈍い音を重ねながら続く剣撃
「いつしか、心も壊れ、人を
血の涙を流しながら咆哮する剣士
「これは、復讐だっ!
俺たちを見捨てたお前に対するなっ!!」
そう言って、剣を振り下ろした後、後方へ下がる剣士。
その間隙をついて、上空から複数のファイアボールが降り注ぐ。
そのファイアボールを力任せに薙ぎ払うジョー。
やがて、ファイアボールが途切れたタイミングで、剣の間合いの内側に飛び込んできた僧兵の掌底で、後方へ吹き飛ばされるジョー。
ジョーがゆっくりと起き上がると、勇者たちとジョーの間に立つリッケルト。
「感動の再会を邪魔するようで悪いんだけど…。」
「こいつらは、ワシラの獲物じゃ。」
リッケルトの言葉を保管するようにこだまするバリトン。
先程のジョーに対するような攻撃がリッケルトに襲いかかる。
が、剣士の剣撃を軽やかに受け流し、ファイアボールは刀身に吸い込まれ、僧兵は刀身の
僧兵が黒い霧を吐きながらミイラになる。
ジョーが息を呑む。
「ま、まさか…。」
「そうです、彼も傀儡ですよ。」
リッケルトが剣を振り払うと、ミイラは地上に落ち、崩れ去る。
「後二匹。」
バリトンがせせら笑う。
一気に駆け上がり、剣士と魔法使いに襲いかかるリッケルト。
剣士が相対すべく走り出し、魔法使いは詠唱を開始する、捨て身の
ジョーは立ち上がることが出来ない。
掌底で叩きつけられた際に、腰を激しく打ちつけたらしい。
剣士がリッケルトに渾身の力で剣を振り下ろす。
その剣を薙ぎ払うように迎え撃つリッケルト。
黒剣は、黒い風になり振り下ろされる剣ごと剣士を両断する。
リッケルトの突進は止まらず、返す剣で詠唱が終わったばかりの魔法もろとも魔法使いも切り裂く。
魔法使いは悲鳴を上げ霧とミイラになった。
剣士は上半身のまま、起き上がるとジョーを見て不敵に笑う。
「俺は、傀儡使いだ…。
俺は死なない。」
やがてリッケルトが彼の背後に立ち、黒剣を彼の背中に突き立てると、高笑いとともに霧散した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます