第6話 衝突 ~オリヴィア視点~

 巨大なワニガメが正面に鎮座している。

 切り込みを阻止する絶対の壁。


「さて、どうしたものか…。」

 戦士マキシが弓を背中から取り出そうとすると、ワニガメから降り立つ黒騎士一人。


「貴方達のお相手を仰せつかった、マイケルと申します。」

 紳士的に頭を下げる黒騎士マイケル


 マキシを含め、全員が武器エモノに手をかけ、色めき立つと、マイケルはゆっくりと面を上げる。


「では、失礼して…。

 よこしまなる者を白日のもとに晒せ!

 聖なる光サンシャイン!!」

 左手を高々と掲げ、神聖術を唱えるマイケル。


「なっ!

 神聖術?

 こいつ…!」

 マキシの言葉を遮り、マイケルの左手の上に、太陽と見間違えるほどの光が辺りを照らす。

 私は咄嗟に顔を覆ってしまったが…。


「ぐぎゃぁぁぁ!!」

 マキシは悲鳴とも怒号ともつかない叫びを上げ…狂人化してしまった。


 光の影で視界が霞む中、赤く輝く瞳で私の顔を見るマキシ。

 次の瞬間、彼は私に襲いかかってくる。

 彼のバックラーが私の顔に当たる直前、私の周りに光の繭が出現する。


封入シールド。」

 マキシを殴り飛ばし、マイケルが私の前に背を向ける。

 見渡すと、狂人になった兵士達と光の繭に包まれた人々が居た。

 歩き出すマイケルに襲いかかる狂兵士達。

 諸々の武器エモノで襲われるマイケル。

 しかし、その黒衣よろいは、尽く武器エモノの牙を跳ね除けている。

 その光景は、花火のように賑やかである。


 狂人達を引き連れ、立ち去るマイケル。

 彼らが立ち去ると、巨大なワニガメが私達に迫ってくる。

 その眼光に射竦いすくめられ気を失っていく人々。


 ワニガメは舌なめずりをしながら、個々の繭を眺めている。


(喰い殺される…。)

 身体を転がし、ワニガメの前に立ちはだかる私。


「行かせません!」

 両手を広げて、私が行く手を阻むと、ワニガメは私の前に佇むが…。

 その尻尾で繭をかき集め始める。


「ちょ…ちょっとぉ…。」

 私の静止を押し切り、得意顔のワニガメが作業を続ける。


 一頻り作業を済ませた後、ワニガメは私の前で座り込んだ。

 喉を鳴らし、マイケルの帰りを待っているようだ。


 恐る恐る振り返ると、一人ずつ殴り倒されている狂人達と、冷静沈着なマイケル。

 最後に残ったマキシ。


 もはや人間とは思えない、獣のような連打、噛みつきに連蹴り…。

 私は絶望し、彼が倒される前に気を失ってしまった。

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