第7話 勇者討伐

「神聖術士を後退させて下さい。」

 勇者ソロモンが大声で叫ぶが、混乱をきたした兵士達は右往左往するばかい。

 そこへ襲いくるモンスターの群れが重なれば、迎撃で手一杯になってしまう。


 何度も指示を出すが、ナシの飛礫にしびれを切らしたソロモン。

「この、能無しどもぉぉ!!」


「おやおや、勇者殿はそんな罵声を浴びせることが、仕事なのですか?」

 ソロモンが声のする方に目を向けると、漆黒のグレートソードを持った黒衣の少年が空に浮いている。


「おのれ、魔王めっ!」

 ソロモンがファイアボールを放つが、魔王と言われた青年の前で霧散する。

 さらにファイアボールを連射するソロモン。

 霧散する魔法を眺めながらゆっくりと地上に降り立つ青年。


「全員っ!!

 魔王が出現しました。

 迎撃の支援をお願いしますっ!!」

 ソロモンが何度も呼びかけるが、誰も振り向かない、振り向けるわけがない。


 本体の左翼はすでに中央近くまで切り込まれ、右翼と後衛は雷撃魔法の雨あられ。

 正面は不浄の化け物スケルトンやソンビで潰されている。


「くそっ!!」

 ソロモンが魔王に斬りかかる。


 乾いた金属の弾ける音が響き、一瞬戦場が沈黙する。

 激しい剣撃の応酬、知らず知らずのうちに闘技場が形成されていく。

 実際は、スケルトンたちの誘導で兵士達がソロモンから引き離されていくのだが…。


 徐々に押していくソロモン。

「どうですか?

 この聖剣にかかれば、いかに魔王でも、苦戦は必定でしょっ!!」

 淡い光を放ち振り下ろされるバスターソードの連撃、漆黒のグレートソードで受け止める魔王も、ついに片膝を着く。


とどめだぁっ!!クソ魔王っ!!」

 大きく振り下ろされるバスターソード。

 ソロモンの叫び声を待っていたかのようにニヤッと笑う青年。


 受け身から、刀身を寝かせ切り上げに入る青年。


 次の瞬間、漆黒の線が宙を駆け抜け、バスターソードとソロモンを真っ二つにする。


 地べたに転がるソロモンの上半身とバスターソードの刀身。

「ぐわぁぁ…。

 痛い、痛いぞぉ‥。」


 二つに別れたソロモンの身体がそれぞれに転げ回っている。

「神聖術士を…

 神聖術士を呼べぇっ!

 俺を助けろぉぉ!!」


 ソロモンが晒す狂気の姿に戦意を消失した兵士達。

 武器を手放すもの、膝から崩れ落ちるもの…絶望の世界が広がっていく。


 そして、ソロモンの胸元に漆黒のグレートソードを突き立てる魔王。

「ぐぅああぁぁぁぁ~~~。」

 断末魔の悲鳴を残し、みるみるミイラと化すソロモン。


「終わったようですね、あるじ。」

「ああ。」

 黒いフードをかぶったガイコツが魔王の横に歩み寄ってくる。


「他の状況は?」

左翼ミッキーは平定したようですが、右翼モックが勇者の連れに手こずっているようです…。」


「解った、刈り取るとしよう。」

 魔王は、右翼陣地へ移動を開始する。


「この者たちの処遇は?」

 ガイコツが魔王に伺いを立てる。


「いつも通りだ、幽閉後に個別尋問する。」

「仰せのままに。」

 ガイコツが膝を付きうやうやしく頭を下げると、魔王は姿を消す。

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