第8話 勇者討伐 ~ミーム視点~

「そう…あの子、討ち取られたのね。」

 ミームは冷笑した。


 目の前には、光の繭に守られた上半身裸の男がミーム達の足止めをしている。


「全く…不愉快だわ!」

 ミーム達が魔法や矢を叩き込むが、男の身体には毛ほどの傷もつかず、彼はヒョウヒョウと踊っては、ミーム達の精神統一を阻んでいる。

 従って、彼女達の繰り出す魔法は威力も半減し、矢も的外れが発生するのである。


「益々もって不愉快よっ!」

 短詠唱で威力のある火魔法を繰り出すミーム。

 他の術者も自分の得意とする短詠唱で威力のある魔法を放ち始める。


「あらら、こりゃ大変。」

 ヘラヘラ笑いながら魔法を全身に受けながら、動き回る男。

 相変わらずダメージが通る気配はない。


 上半身裸の男に焦らされ、イライラが募るミーム配下の弓士、魔法混成部隊。

 彼らのイライラが頂点に達する直前、漆黒の大剣グレートソードを肩にかけたリックが忽然こつぜんと顕われる。

 突然現れたリックに動揺するミーム達。


「モック。

 ご苦労さま。」

 リックは上半身裸の男モックの背中を軽く叩く。


「すまない、リック。

 引き止めるだけで、手一杯だったよ。」

 リックの方へ振り返り、苦笑いするモック。


「う~~ん。

 相性が悪かったみたいだねぇ。」

 ミーム達の存在を気にする風もなく、会話を続けるモックとリック。


「じゃぁ、城に戻って、捕虜の歓待を準備してもらおうか?」

「み心のままに。」

 リックがにこやかに頼むと、モックは執事の様にお辞儀をすると後退した。


 さて、リックがミーム達に対峙した刹那、幾つもの魔法と矢が嵐のように降り注いでくる。

 ミーム達は、憂さが晴れたように陰険な笑顔でリックを見ている。


「やれやれ。」

 嵐のように降り注ぐ、魔法と矢。

 その状況を嗜むように眺めったリックは、肩からおもむろに大剣グレートソードを振り落とす。

 大剣グレートソードの巻き起こす風圧に、魔法は飛散し、矢は地べたに叩き落とされた。


「なっ!!」

 ミームは驚き、弓士、魔法混成部隊員も呆気に取られている。


「さて、仕切り直しましょうか?」

 リックは再び、大剣グレートソードを肩にかけ、悠然とミーム達に近づいて来る。


 短詠唱で威力のある火魔法を繰り出すミーム。

 他の術者も自分の得意とする短詠唱で威力のある魔法を放つ。

 が、リックはすべての魔法を大剣グレートソードで薙ぎ払う。

 放たれ、雨のように降り注ぐ矢でさえ、リックの足元にも届かない。


聖なる光サンシャイン。」

 バリトンが轟くと、虚空に出現する太陽のような輝度。


「ぐぎゃぁぁぁ!!」

 弓士、魔法混成部隊員が見る間に狂人化する。


「何故、祭祀でもない人間が、神聖魔法を…。」

 ミームも見る見る醜悪な顔になる。


「おやおや、こんな所に御本尊が居ましたか?」

 リックはニコニコしだす。


「そう…。

 あなたが、あの子を、討ち取ったのね。」

 ミームが冷笑する。


「では。」

 リックがゆっくりと大剣グレートソードをかまえ。


「始めましょう。」

 高笑いを放ちミームと配下の者たちがリックに襲いかかる。

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