第23話 蹂躙 ~オリヴィア視点~
「な…何、あの非常識な戦闘力。」
初めて見る敵大将の
幸い、シャルとグレゴールはお互いの会話で忙しく、私の声は届かなかったようですが…。
彼に敵対するのは、味方であるはずの王国軍兵。
しかし、敵に捕縛され、彼ら目線で戦場を眺めるという視点を差し引いたとしても、私の目に映る
不思議な感覚です、この気持ちをどのように説明すべきなのか、私は選ぶべき言葉を思い巡らしています。
「お…お父さま。
な…なんて
シャル様の悲鳴にも似た声を聞いて、私は我に返りました。
画面を見れば、王様と王女様たちが自軍兵を追い立てる姿が見えています。
「そ…そんな…。」
私は口を押さえていました。
眼前に広がる光景は、まさに敵対してきたモンスターたち、そのままを見ているようなのです。
彼らの行末は、恐らく私の想像に難くない末路を迎えるでしょう。
ついに、漆黒の刀身に刻まれた黄金のクサビ文字が輝き出し、見る間に黒い影となった王様と王女様たちが漆黒の刀身に吸い込まれていきます。
三人の
一体、何が起こったのでしょうか?
後半の戦闘で見せた王様と王女様たちの一挙手一投足は、私の中で何かを彷彿とさせます。
(
ミッキーと戦い、倒れていったマキシの狂気じみた戦闘が一瞬頭をよぎります。
やがて画面は消滅し、入れ替わるようにリッケルトがラインを従えて、円卓に姿を表しました。
「終わりました。」
そう言うと、ラインがお辞儀をし、リッケルトのとなりに控えます。
シャルとグレゴールは黙って立ち尽くすばかりでしたが、私はお二方を席に座らせました。
二人のショックが如何ばかりのものかは、想像できませんが、こういう時こそ、王族や近衛兵の威厳は保って貰わねばなりません。
二人を座らせると、暫らくの沈黙が場を制してしまいます。
彼らは、私たちの反応を見て行動を決めるのでしょう。
当然の事です、今まさに交渉が始まったばかりのタイミングだったのですから…。
しかし、交渉どころでないことも、また事実です。
もうしばらく…
「リッケルト殿、先程の映像は?」
私は
「ええ、見て頂いたものが、全てですよ。
そして、現実です。」
リッケルトは席に座り、にこやかに答えます。
こちらとしては、あまり笑顔で居られる状況では有りません。
「それでは、王様や王女様の体から抜け出した霧は…
そして、あなたの剣は一体?」
私は畳み掛けるように、質問を続けました。
「答えましょう。
あなたにも知る権利が有る。
なぁ、元勇者パーティー回復役のオリヴィア殿。」
リッケルトは、私にウィンクを送ってきます。
突飛な反応に、多分私の顔は目が点になっていることでしょう。
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