第19話 邂逅と彷徨
「グレゴール、無事でしたか。」
「シャーロット殿下!!」
丸い食台に向かい座る
「生きて…生きて居られたのですね。」
グレゴールは食台から離れ地に平伏して号泣しだす。
グレゴールの傍に立ち、席に着くように促す侍女のアリィ。
グレゴールがようやく席についたところで、シャルとグレゴールの間に座っていたリッケルト。
リッケルトの両脇、シャルの側にはライン、グレゴールの側にはミッキーがそれぞれ立っている。
「感動の再開も済ませたところで、話を進めたいがよろしいかな?」
リッケルトの問いかけに、シャルとグレゴールは頷く、アリィもシャルの隣に立って、リッケルトの顔を見ている。
「それでは…」
と言って、リッケルトが話し出す。
「ホーランド国王は、再戦を行うだろうか?」
リッケルトの質問を受け、シャルが淡い期待を込めた視線をグレゴールに送るが、彼は横に首を振る。
「姫、申し訳有りません。
リッケルト殿、我が国王は再戦を目指すと思われます。
今回の戦争、建前は『女王陛下の敵討ち』となっていますが、実態は領土拡大以外の何物でも有りません。
勇者殿も姉姫たちを娶り、次期国王に相応しい領土を確保しようと立ち回ったのが全てです。」
シャルはうつむき、大粒の涙を流す。
「それで、グレゴール殿は誰の味方をするのか?」
「私は姫様に従います。」
リッケルトの質問に即答するグレゴール。
涙を浮かべたままのシャルがグレゴールを見ると、グレゴールはシャルに視線を送り、力強く頷く。
「もとより、我々は姫様の護衛で参加したのですから。」
そしてグレゴールは
「姫様を最前線に投入し、あまつさえ、我々には勇者様の盾になれと言われるしまつ…。」
グレゴールは続ける。
「誰からも愛されるカリスマ、そして国民を慈しむ姿は、往年の王妃陛下を想起させます。
…その王妃陛下が崩御され、国王陛下は人が変わり、勇者に姫君を嫁がせると騒ぎ出す始末…。
シャル様は、その毒牙にかかることは有りませんでしたが…。
まさか、この戦いで命を落とさせるなど…。」
嗚咽を漏らすグレゴール。
「この後、お前たちはどうするのか?」
「父王を説得します。」
リッケルトに対し、毅然と答えるシャル。
「グレゴール以下、優秀な将兵も居ます。
また、ソープ…ソフィア嬢の力も借りて…。」
シャルは話を続けようとするが、そっとラインがリッケルトへ耳打ちをする。
「残念だが、少し遅すぎたようです。」
シャルの話を遮り、リッケルトはラインに合図を送る。
「
ラインが呪文を唱えると、食台の上に城を取り囲むホーランド王国軍の姿が映し出される。
「そ…そんな…。」
シャルの目に映る風景…それは、子供から老人まで兵士の前に立たされている姿。
兵士たちはニヤニヤしており、誰一人緊張感がない。
その後ろには騎士が控えるのだが、彼らにも威厳や風格はない。
そして、後方の陣地には天幕が置かれ、その前には国王と喪服に身を包んだ姉姫たちが鬼気迫る形相で立っている。
最前列の男たちは、手当り次第徴用したのだろう、生気の無い顔の下、手と足には奴隷のような枷まで付けられている。
「恐らく、王都は勿論、道すがらの街という街から兵をかき集めたのだろう。」
リッケルトがウンザリした顔で映像を眺め、シャルとグレゴールは言葉を失っていた。
「さて、最後の質問についての回答は保留としよう。
ゆっくりと話せる状況ではない。」
リッケルトは立ち上がる。
「すまないが、そこに映っている人々すべてを助けることは出来ない。
特に、国王一味については…な。」
リッケルトが壁に向かって歩み出す。
「
ラインの呪文によって魔法の扉が開かれ、リッケルトとラインは姿を消した。
「皆さまには、行く末を見て頂きます。」
ミッキーが静かに客人たちに寄り添い、穏やかな声で語りかける。
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