第20話 邂逅と彷徨 ~グレゴール視点~

 牢の外から語りかける声が聞こえてくる。

「至急のお目通りである。

 グレゴール殿は居られるか?」


 声の主を見れば、黒衣の騎士が佇んでいる。

「ミッキー殿、私はここに!」

 私は彼のもとに歩み出た。

 私の部下たちも整然と並ぶ。


「では、ご同行願おう。」

 ミッキーは牢を開き、私は外に出た。

 牢の中の部下たちは不安げな顔をしている。


「案ずるな、いきなり殺されることもあるまい。

 最近は、料理も美味くなったしな。」

 部下たちは笑い出した。


「では、参るぞ。」

 ミッキーがゆっくりと歩き始める。

「行ってくる。」

 部下に見送られ、私はミッキーの後に従った。


 さて、収監牢の出口まで来たところで、スケルトンのメイド達が衣類と鎧を持って佇んでいる。

「グレゴール殿、ここで着替えてもらおう。

 その姿は、見るに堪えない。」

 ミッキーに促され、メイド達の衣類を受け取ろうとした。


「せめて、沐浴を済ませてくれ。」

 ミッキーが肩をすくめ笑顔になる。


「ああ、済まない。」

 メイド達に案内され、私は沐浴場に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 沐浴を済ませ、渡されて衣類と鎧に袖を通すと…

「これを、携えるように…。」

 模造とは言え、ミッキーから手渡されたのは、バスタードソードだった。


「いいのか?

 私が暴れないという補償は無いぞ。」

 脅すつもりはないが、あまりにも心配になり、ついついミッキーに質問してしまった。


「構わないよ。

 君を取り押さえるのは、造作もない事さ。」

 ミッキーは笑顔で答えてくれた…彼の帯剣柄に手を置いて。


 再びミッキーが先頭に立ち、彼の後に付き従う事になる。

 不思議なものだ、敵である彼の背中に親近感を持ってしまう。


「ふふふ…。」

「どうかしましたか?」

 不意に笑ってしまった私の声に、振り返る事無くミッキーは問いかけてきた。


「失礼、ちょっと思うところがあってね。」

 ミッキーに答えるが、彼は気にする風もなく歩き続け、ある扉の前で立ち止まった。


「さて、この部屋に入るが、くれぐれも失礼の無いように。」

 ミッキーに促され、緊張した面持ちで扉の開かれた部屋に入った。


 ミッキーが部屋の脇に移動し、目に入ってくる光景は円卓と、そこに居並ぶ人々…。


「!!!」

 私は一瞬目を疑い、目をこする。


 円卓の一角に座っている女性に見覚えがある。


「殿下っ!!」

 周りの人々を気にする事無く、私は彼女の前に駆け寄り膝をかがめ、頭を垂れた。


「グレゴールっ!

 無事だったのですね。」

「はいっ!

 殿下も息災で何よりです。」

 優しく私に語りかけるシャーロット殿下。


 そのまま平伏すると私は男泣きすることになった。

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