第2話 思わぬ伏兵
「勇者殿!
大変です!!」
朝も日が昇り始め、天幕の中も明るくなった頃、突然の報告が外から聞こえてくる。
一糸まとわぬ
「どうしました?」
服を羽織りながら質問する
「ゆ…輸送隊が…輸送隊が襲われました!」
「!!!」
天幕の前では、土下座状態の通信兵。
「どういうことですか?」
ソロモンは爪を噛みながら、苛立ちを隠そうとしない。
「実は…。」
通信兵が伝えた内容を掻い摘むと…。
王都から届く予定だった武器・防具、矢や衣類などの消耗品、食料などを載せた商隊が敵の襲撃を受け、全滅したということだった。
マズイ事に、輸送用に手配した商隊を始め、その輸送内容物、慰安や補充の目的で近隣の村々から
というのが、襲撃の空きを見て逃げ出してきた兵がもたらした情報である。
(どうする?
ここの食料は持って3日程度…。
武器は大丈夫だが、兵の士気が下がる前に決着を付ける必要がある…。)
ソロモンが爪を噛みながら思案していると、毛布をまとった
首に腕を回すミーム
「このまま、本陣を敵城の見える平原まで移動させましょう。
まだ、彼我兵力では、こちらが優位でしょ。
先陣は、
首に巻かれたミームの腕に優しく手を触れ、ソロモンが答える。
「ピンチの中にチャンスあり…だな。」
ミームは、ソロモンの首元にキスをする。
そして、キスをした隣には、小さな2つの穴が見てとれる。
「よしっ!
本陣を中央平原に移動させる!
全員に通達っ!」
「はっ!!」
ソロモンが檄を飛ばすと、土下座の通信兵は直ちに立ち上がり、颯爽と兵舎へ走って行った。
「あなたは、もう少しお休みなさい。」
ミームが、ソロモンの額にそっと手を当てると、彼女にもたれかかるように眠りについたソロモン。
ソロモンをベッドに寝かせ
「
そう言って、仲間の天幕へ移動するミーム。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、マキシ…。」
仲間の天幕に入ろうとした
彼女が天幕の中を覗くと、マキシとミームが抱き合い、唇を重ねている。
「!!!」
慌てて天幕から離れ、兵舎の中央まで走ってくるオリヴィア。
(ま…まさか、あんな事になってるなんて…。)
困惑しているオリヴィア。
「はぁ…どうしよう…。」
オリヴィアは、兵舎中央の井戸に座り込みため息をついている。
ソロモンの指示に基づき、移動の準備を済ませ、連絡をしようとした矢先に目撃した淫行の現場。
彼女の心は、毒々しい色に侵され、落ち着きを失っていた。
「アリィ…?」
オリヴィアの背後から、幼い女性の声が聞こえる。
声の主に振り返るオリヴィア。
「…シャ…シャル?
シャーロット…様?」
一瞬困惑するオリヴィアだが、そこに立つ白い神聖術士の少女に確かに見覚えがある。
「久しぶりね、アリィ!」
咄嗟のことで驚くオリヴィア。
「凛々しくなられましたね、シャーロット様。」
「もうっ!
シャルと呼んでちょうだい!」
オリヴィアの返事に
そして、再開を喜ぶように微笑みかえす、二人の少女。
◇ ◇ ◇
二人の少女が兵舎脇に置かれている木製の長椅子に座り談笑している。
「でも、シャルは何故ここに居るの?
貴女は、この国の第三王女でしょ?
どうして、こんな危険な場所に?」
「お父様の意志よ。
私が参戦することで、兵士たちの士気が上がるからってね。」
オリヴィアの質問にハキハキと答えるシャーロット。
しかし、尋常ではない敵の動きに不安を感じているオリヴィアは話を続ける。
「ねぇ、シャル。
私達は、これから敵陣へ突入を開始するわ。
それは、貴女が想像するよりも危険な事なの。
悪いことは言わない。
早々に立ち去りなさい。」
「それは出来ないことなの。」
オリヴィアの説得に口籠るシャーロット。
しばしの沈黙が流れていると、不意に若い剣士が歩み寄ってくる。
その剣士を呼び寄せるシャーロット。
「アリィ、紹介するわ。
私の友達、ソープよ。」
オリヴィアの前でお辞儀をする
「ホーランド王国 トリトン領主の娘、ソフィアと申します。」
「
ソープとお辞儀を交わすオリヴィア。
「ソープは、私達の国でも屈指の剣士なの。
彼女が私を守ってくれるわ。」
シャーロットは、ドヤ顔で胸を張り、ソープは後頭部を掻いていた。
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