022:大精霊食育プロジェクト③
「わかったわかった!みんなでやろうな?じょうろたくさん作るから水のはそこに水作って。みんなで水やりするぞ?」
小精霊たちが
「なんだこれ」
「水やりできればいいんだろ?楽しいじゃないか。参加意識高いの俺は嫌いじゃない」
「ま、いっか。水はじゃんじゃん撒いとけよ!次!ルキナとヒカル!太陽強め!」
ニクスの指示に二人がさっと挙手。雲が晴れて畑に太陽の光が差した。程なく土から双葉がぽこぽこ開き出す。
「芽が出るの早ッ」
「別にこんなもんだろ?次!サクヤ!祈れ!」
「はぁ?!」
「王サマが祈ると植物の発育が良くなるんだよ。精霊界の常識だ。ほれ祈れ!踊れ!大きくなぁれ大きくなぁれ」
「マジか?!これ農業と全然違わないか?!」
今まで割とガチな農業だったのにいきなり神頼みな展開。流石におかしい。
振り返れば冗談を言わない見学者ファウナが目元を覆っている。やっぱりふざけてるのか!
だがニクスにルキナ、ヒカルが神妙な顔で手を合わせて大きくなぁれとタケノコダンスを踊っている。思わず二度見してしまったが、参加意識の高い朔弥もつい畑に手を合わせてしまった。
ルキナとヒカルが可愛く踊るのはいいとして?
闇の大精霊がコレ踊っていいのか?
俺が踊るのは無理だ!でもまぁ祈るだけなら‥
「えと?大きくなぁれ?」
朔弥が祈った途端、植物がニョキニョキと成長を始める。ジャックと豆の木の勢いよろしく地面剥き出しだった畑は一気に緑色一色となった。トマトやきゅうりは黄色い花を咲かせている。
「うわッ なんだこれ?!」
「ほら見ろ。やっぱりサクヤの祈りは効くなぁ。踊ったら一気に収穫だったのに」
「お!踊るのは勘弁してくれ!てか!ミニトマト支柱這わしてないッなすときゅうりもッ みんな集まれ!」
「えー?要らねえよ」
小精霊を集め竿でトマト、きゅうり、なすの幹に支柱を這わして支えにしていく。花が咲いた野菜の花粉を風の小精霊が飛ばしていく。ミツバチ要らずだ。
ルキナとヒカルがさんさんと太陽の光を集めればトマトはあっという間に真っ赤な実をつけた。他の野菜も収穫の頃合いになっている。
「‥‥展開が早すぎる」
「え?早く食いたかったんじゃなかったのか?」
ニクスが手近のミニトマトをもいで口に放り込んだ。
「うっまッ さすが王サマ!いい出来だ」
「おいおい、一人だけつまみ食いするなよ」
といいつつ朔弥もミニトマトを口に放り込む。口の中に甘いトマトの味が広がる。フルーツトマトのようだ。
「ぐッ うッめぇ!!糖度10超えてるんじゃないか?」
「だろ?これでメシ作ろうぜ」
「作ろうぜといってお前は作ったことないな」
「あたしは食い専。食材を無駄にしない主義だ。このままでも旨いな」
「それもいいが湯むきして生姜と蜂蜜のドレッシングで漬け込むと恐ろしく旨くなるぞ」
味を想像したのがニクスの目がまん丸になる。目を血走らせて詰め寄るニクスに朔弥が身をひいてしまった。
「それ食いてぇ!さっさと撤収するぞ!収穫だ!!」
「おいおい!こんなにいっぺんに収穫しても冷蔵庫に入らないぞ?!」
「んなもん時空に放り込んどきゃいいんだよ!時間が止まってるから新鮮なままだ。ヤロウども!命をいただくんだ。一粒たりとも取りこぼすんじゃねぇぞ!根こそぎ刈り取りだッ かかれぇぇ!!」
突撃ぃ!とくわを高く掲げニクスが開戦の
「え?これでいいのか?」
長年の夢だったのに?
土地開墾から収穫までもう終わり?
家庭菜園がものの一時間で終了してしまった。
「サクヤ!みて!イモ!」
ジャガイモを手に笑顔で駆け寄るルキナに朔弥の笑顔も弾けた。
「まぁいっか。みんな楽しそうだ」
ルキナに手を引かれ朔弥も畑に入り収穫を楽しんだ。
その日の夕飯は収穫した野菜の料理が並んだ。採れたてバジルをふんだんに使ったパスタジェノベーゼとトマトのジンジャーハニー漬けが大好評だった。不参加だったヴァルナはお預けをくらいハンカチを噛み締めてその様子を見ていたのだった。
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