049:二人の初夜②
「ルキナは俺のこと‥好きか?」
「好き」
「父親とか兄弟とか‥そういう好き?って父親とかってわかる?」
「わかる。違う」
「じゃあ‥友達とか親友って感じで好き?」
「違う」
「えっと俺の‥メシが好き?」
「好き」
「あ、そこ正直だな。えっとじゃあ」
父でも兄でも親友でもない。ルキナの答えに朔弥はつつと視線をそらす。これはずるい質問だ。その自覚はあった。自覚しながらも口は勝手に問いかけていた。
「じゃあ、俺を男‥として好きか?」
言ってからやはりずるい質問だと後悔した。これは先に言わなくてはならないところだ。
ダメだダメだ!ヘタレてる場合か俺は!
「うわぁやっぱ今のなしな!俺はルキナのことがす」
「うん、好き。大好き。朔弥はルキナの王子様で旦那様」
大好き、王子様、旦那様。
パワーワード三連打固め打ちで朔弥はTKO、テクニカルノックアウト。おかげさまで朔弥の頭が真っ白になった。
「最初から、初めて会った時からルキナは朔弥が大好きだったよ?知らなかった?」
こてんと小首を傾げる笑顔のルキナ。その笑顔に朔弥の心臓がずどんと大砲で撃ち抜かれた。咄嗟に口元を覆って顔を背けるも脳内では頭を抱えて絶叫が止まらない。
うわぁぁ!可愛い!笑顔可愛い!破壊力が!これルキナ砲?なんで?どうして?大きくなってさらに可愛くなってる!大きくなっても可愛いとかズルくないか?ズルいよな?!死ぬ!これだと俺が悶え死んでしまう!!
だがこのままだと年上としてどうよ?と人生に汚点を残すところだ。心の臓の動悸をどうにか宥め呼吸を整え勇気を絞り出す。震える手でルキナを抱きしめた。甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「えっと‥すごく嬉しい。俺もルキナが好きだ。ルキナと一緒だと癒される」
「ルキナも。朔弥と一緒が好き。ずっと一緒」
そう言って目を閉じて背中に手を這わせるルキナの抱擁は今までと変わらない。馴染みのある抱擁。変わっていない、それは今までもずっと変わらず好きだったということ。そこまでようやく理解して朔弥がふぅと息を吐いた。
ああ、なんだ。ずっと俺を好きでいてくれたのか。
ずっと一緒だって、たくさん好きって言ってくれてたのに。なのに俺は逃げて否定しまくって。勿体無いことしたなぁ
感極まった勢いか、そこからふと謎の欲求がムラムラと高まってきた。もっとルキナに触れてみたいという衝動。初めて感じるその謎の衝動のままにルキナの頭に口づけを落とした。驚いたのかルキナがびくりと体を震わせる。嫌がられた!やっちまった!と朔弥は慌てて抱擁を解いた。
「あ、いやゴメン。ついムラムラっと」
「今‥きゅんって」
「え?」
頬を染めて俯くルキナの体から小さな光が溢れ出した。四つの光がルキナの周りを舞っている。まるで蛍火のようだ。目を潤ませたルキナがそっと囁いた。
「赤ちゃん」
「え?」
赤ちゃん?って?
蛍をよく見れば光の小精霊の子供版だ。小さな体に蝶の羽がついてぱたぱたと飛んでいる。飛び方がぎこちないのは赤ん坊だからか。
「ええええええ?!」
まさか‥まさか‥
ある仮説が頭をよぎるが信じられない。
「えっと?ルキナ?もう一度」
抱きしめてルキナの頭にキスを落とす。びくんとルキナが身動ぎして光の粒が弾け飛んだ。やはり光の蝶が飛んでいる。
「えっと?ひょっとしてこれが精霊界の子作り?」
「朔弥とルキナの赤ちゃん‥できたね」
恥ずかしげでいて嬉しそうなルキナの笑顔が弾けた。その様子に朔弥が愕然茫然とする。
肉体を失った精神体。常世のような子作りである必要もない。だとしてもこの展開は予想外だった。絶句した朔弥が頭を抱えた。
ええ?!イチャコラだけで子供ができるとかわかるかよ!俺の思考が穢れすぎてたせいか?俺が必死に拒絶してたのが馬鹿みたいじゃないか!いや?歴代王の記憶があればわかったはずだ!つまり記憶転送を失敗したニクスが悪い!いやいや、手を離せと命じたのは俺だからやっぱり俺が悪いのか?いやいやいや、俺が何も知らないとわかった上でにゃんにゃんとかラブラブ子作りとか言われれば誤解するだろ?絶対悪意がある!なんで誰も具体的に言ってくれなかったんだよ!まあ俺も具体的に聞けなかったけどな!!
ぐあぁぁと頭を抱えた後に力尽きた朔弥がベッドに突っ伏した。魂が幽体離脱している。そこをルキナが気遣う。
「朔弥?大丈夫?」
「ああ、ちょっと拍子抜けというか。あれ待てよ?」
今まではルキナに触れても子供はできなかった。子作りの引き金はなんだろうか?想いが通じ合ったから?ルキナが大人になったから?それとも自分?
子作りの仕組みがよくわからない。そうなれば試してみたくなるのが朔弥の性格だった。パチンと朔弥の脳内ヤル気スイッチが入った。
相手は想いが通じ合った大好きなルキナ。致すわけじゃないとわかればイチャイチャも照れくさくない。いっそハードルがだだ下がったせいでむしろ望むところだバッチコーイ!とヤル気である。謎のムラムラ欲求がそれを後押しする。
「おいでルキナ」
横になる朔弥が優しくルキナの手を引いて抱き寄せる。二人で抱き合って寝転がっている状況だ。抱きしめられ震えたルキナから蛍火が二つ弾けた。
「ふたつ。今どんな感じだった?」
「えっと‥胸のあたりがきゅんってなって嬉しくて‥そしたら」
「んー?ルキナがきゅんとするのが発生条件か?じゃあ」
ルキナの手を取り朔弥が手に口づけを落とした。ぽぽぽぽんと光が八つ弾けた。驚いたルキナは耳まで真っ赤にしている。目を潤ませて絶句していた。
「うそ‥い‥今‥手に‥ちゅって」
「いや‥じゃなかった?」
「いやじゃない‥けどここがきゅんって」
胸を押さえて頬を染めるルキナに朔弥が微笑んだ。笑顔の反面、脳内ではもうムラムラうずうずが止まらない。今まで恥じらうこともなかったルキナの様子が朔弥に火をつけた。
くぅぅッ真っ赤なルキナめっちゃくちゃ可愛いなぁ!これは攻めたくなるってもんだろ!
「そっか、きゅんとした?ルキナがきゅんと来たら子供ができるのは本当なんだ。じゃあルキナのきゅんポイントを探せばいいんだな?そうすれば子供がたくさんできる」
そのセリフにルキナが涙目でさらに絶句する。これから起こることにガクガクと震え出した。
「この光、最大幾つ出てくんだろな?色々と試して」
「え?朔弥!これ以上は!ひゃぁ!」
ぐるんと朔弥がルキナを組み敷いた。朔弥はにこりと微笑んだ。
「今日は俺たちの初夜だろ?たくさんイチャイチャしよう」
「ふぇ?!ダメ‥もうルキナの心臓がもたない‥無理‥」
「まだ大丈夫だよ、怖くしない。優しくする。たくさん子作りしような」
朔弥にちゅっと鼻にキスを落とされる。朔弥の輝く笑顔にルキナが涙目でボンと真っ赤になった。
朔弥の
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