最終話:精霊王の絶叫②




 致す?!やっぱりシないとダメなのか?別に今のままのイチャコラでも‥でもたまーにルキナを見てムラムラっときてたりするし?もう夫婦だし?ここは手を出してもいいのか?ん?だがちょっと待て?致すとすごいことが起こる?大精霊が生まれる?え?それはヤバくないか?それってつまり?


 脂汗ダラダラの朔弥の脳内を読んだニクスがニヤニヤと補足した。


「つまり王サマがルキナと致すとすぐにわかる」

「!!!!!」

「わかりますわね。無視できない量の赤ちゃんが生まれるでしょうし」

「是非!是非大精霊の御子のご誕生を!精霊界史上に残る快挙でございますよ!」


 いやいやいや!快挙とかいらないし?

 致したら筒抜けとか!恥ずかしすぎるだろ?!


 その心情さえ読んだ紫銀の大精霊がスイートポテトを皿にもった。ヒカルが大皿で出してきたものだ。


「お気になさるならできちゃった赤ちゃんを袋にでも詰めて後でこっそり放せばよろしいのではなくて?」

「小出しにするってか?量が尋常じゃねぇって。部屋に閉じ込めておくレベルだろ?」

「稚魚の放流かよ?!DV反対!!」

「別に今のままでもいいと言いたいところですが、それでは問題は解決しませんわよ」

「そうですね。このままでは光属性しか生まれません」


 ヴァルナの発言の意図を察したファウナがそう付け加え朔弥がぐっと押し黙った。朔弥もそこは理解していた。


 確かに昨日ルキナから生まれた赤ん坊は光属性のみ。精霊界には数多の属性がある。その属性を補う為に王は側女を多く置くのだが。


「絶対ダメ!一夫多妻とか断固拒否!俺はルキナ以外無理だからな!」

「精霊力が強力なサクヤなら致せば他属性が生まれるかもしれませんわ」

「だな。ま、ここは腹を括って致すってもんだろ」

「い、いたいたいた‥」


 だだ下がったと思っていたハードルが元通りの位置によっこらせと設置され朔弥は真っ赤になってガチガチに固まる。そこでヴァルナが何か思いついたように無邪気に手を合わせた。にっこり笑顔がいっそ毒々しい。


「あ、でももう一つ手がありましてよ?多属性の子を成す方法」

「え?何?何があるんだ?!」

「え?アレか?いやいやダメじゃね?サクヤが大変だろ」

「確かに王君に負担が大きいです。お勧めはできません」

「そうですわね、効果はありますが犠牲も大きいですわね。サクヤは畏れ多くも精霊王の御身。このような犠牲はそぐいませんわ。私ったら、失礼いたしました。忘れてくださいませ」


 はぁと息を吐いて言い淀む大精霊三人に朔弥が詰め寄った。そこで言い淀まれてもいっそ気になる。とにかく側女は勘弁!朔弥も必死だ。


「多少の犠牲は仕方ないだろ。言え、どうすればいい?」

「あら?よろしいんですの?」

「王サマがそうおっしゃるんなら?じゃあさっそく試してみっか?」


 にぃと笑みを深め立ち上がった大精霊二人が朔弥の両腕をはがい締めにした。怪力二人にがっちり押さえ込まれて動けない。ファウナはお茶を啜っている。二人を止めていない。確信犯である。


「え?何?」

「昨日はサクヤが攻めでルキナが受けでしたわね?」

「受けの属性で赤んぼが生まれんだよな」

「は?」


 罠にはまり茫然とする朔弥にニクスは焦ったそうだ。


「だから!全属性持ってる王サマが受けになれば多属性の赤んぼが生まれんじゃね?って話!」

「はぁぁ?!」

「確かに過去王君が受けでそのような実証があったと記録」

「え?あんの?そんなアホな記録が残ってんの?!精霊界バカなの?!」

「まあ試してみようぜ?ルキナちょっとこいこーい」

「げぇぇ?!待て!ちょっと待て!」


 俺男だし?男でも子供が産めんのか?!

 そもそも攻められるのはとんでもなくマズい!


「どうしたの?朔弥?」

「ルキナ、ちょっとサクヤに甘えてみ?存分に!安心しろ。サクヤは合意済みだ」

「甘えと言わず好きにしていいですわよ」

「待てルキナッこれには訳が!待ってくれ!」

「朔弥を好きにしていいの?」


 ルキナが凶暴とも見えるほどに笑顔になる。このあたりで朔弥はザッと血の気が引いてしまった。可憐な刑執行人により無慈悲な刑は執行されてしまった。


 うきうきのルキナが朔弥にぎゅっと抱きついた。朔弥の胸がきゅんと鳴ってぽぽぽんと粒が弾けた。その甘い刺激に朔弥が顔を顰めるも大精霊三人の反応は随分とシブい。


「ぐぅぅッ」

「お?火に水に風?三つだけか。出たは出たが数がイマイチだな」

「やはり雄体だと雌体とは感度が違うのかもしれませんわね」

「ですが記録とは一致いたします。後世のために今日の件も記録いたしましょう」


 記録?この醜態を?勘弁して!!


 ゼェゼェと息を荒げる朔弥が絶叫した。


「記録!ダメ!ゼッタイ!心臓に悪い!クランケが死ぬ!中止だ!王がどうなってもいいのか?!」

「どれだけへなちょこですの?死にませんわこの程度では。まだハグだけですもの」

「脅しならもっとマシなこと言えよ。ここで中止とか、この程度で挫折したヘタレ王って記録が残るぜ?その方が恥ずかしいだろが。ルキナ、もっと刺激の強いの頼むわ」

「刺激の強い?どんなこと?」

「そうですわね、じゃあ昨日サクヤがルキナにしたことをやってごらんなさいな」

「昨日?朔弥に?それなら‥」


 その会話に朔弥からさらにゾッと血の気が引いた。


 コイツら本気でやる気だ。笑顔だが目が笑ってない。


「うわぁぁッ待てッ公開処刑やめろ!流石にダメージがデカい!立ち直れない!せめて密室で二人きりで!」

「気にすんな。多少の犠牲は仕方がねぇんだろ?」

「それは検証が済んでからですわ。後で存分になさってくださいね」

「多少じゃない!これじゃ多大な犠牲だ!後で存分にって何?!もうシャレになんねぇんだって!」

「精霊界のためでございます」

「朔弥大好き!」

「うわぁッやめてくれぇぇッ」



 四人の大精霊に畳み掛けられ、精霊王の絶叫と共に多属性の赤ん坊が大量にぽんぽん弾け飛んだ。


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